北京オリンピックでは金メダルを8個もひとり占めした選手がいました。のどから手が出るほど欲しい人間が大勢いるのですから、少しくらい譲ってやってもいいのにと思いますが、それをやれば八百長となります。スポーツの世界は格差を追求する世界でもあります。
スポーツ競技には運動や親睦という意味もありますが、勝負をして、勝者は「幸せな気分」を、敗者は「惨めな気分」を味わうという面があります。試合前に両者が「幸せな気分」を50単位ずつ持っていたとすれば、試合後は勝者が100単位、敗者が0単位となるような、一種のゼロサムゲーム(*1)と考えられます。つまりわざわざ金と時間をかけて「格差」を作るための仕組みです。これは公平や平等とまったく逆の方向であります。
それでもスポーツ競技が好まれるのは、参加する人間が負けることより勝つことに期待するという楽観的な性質を持っているためだと思われます。宝くじは発行元が54.3%も取ってしまうので、平均的には負けるのが確実であるのに大勢の人が買うこととよく似ています。悲観的な人は宝くじを買わず、パチンコ中毒にもならないでしょう。
勝負を楽しむ場はスポーツ競技だけでなく、将棋や囲碁など広範であり、さらには現実の社会でも競争が大きな要素になります。決闘や戦争はいただけませんが、どうやら競争や勝負を好む性質はわれわれの本性に根ざしたもののようです。フロイトが性衝動を重視したのに対し、その弟子アドラーは他に対して優越しようとする欲求を人を行動に駆り立てる基本的な動機とみなしました。他人より優れていないことには落ち着かないという人間は少なくありません。
過去を見ると、社会には格差を縮小しようとする力より、拡大しようとする力の方が強く働いてきたことが感じられます。現実社会における、生存を脅かすほどの深刻な格差は社会不安の原因になり、秩序がひっくり返る革命の要因になりました。
一方、格差縮小のための努力も続けられましたが、それは善意の故でもあり、また社会不安や革命に対する恐怖の故でもあったと言えるでしょう。第二次大戦後は日米で高率の累進課税が実施されたように、格差の縮小が図られた時代です。
しかしその後流行した新自由主義は逆の方向で、それは経済成長を促す一方、格差の拡大を生んだとされています。厄介なことに、どうやら人間の集団というものは自由に放っておけば自然に格差が拡大するようにできているようです。自由と格差は二律背反(トレードオフ)の関係にあると言えます。
チンパンジーやオオカミなどの群れは階級社会をつくりますが、それと同様、人間もきっとそのようにプログラムされているのでしょう。
(*1)ゼロサムゲーム:全体のパイが一定で、誰かが得をするとその分だけ別の誰かが損をするゲーム。時価総額が一定の株式投機、一般の賭博など。
スポーツ競技には運動や親睦という意味もありますが、勝負をして、勝者は「幸せな気分」を、敗者は「惨めな気分」を味わうという面があります。試合前に両者が「幸せな気分」を50単位ずつ持っていたとすれば、試合後は勝者が100単位、敗者が0単位となるような、一種のゼロサムゲーム(*1)と考えられます。つまりわざわざ金と時間をかけて「格差」を作るための仕組みです。これは公平や平等とまったく逆の方向であります。
それでもスポーツ競技が好まれるのは、参加する人間が負けることより勝つことに期待するという楽観的な性質を持っているためだと思われます。宝くじは発行元が54.3%も取ってしまうので、平均的には負けるのが確実であるのに大勢の人が買うこととよく似ています。悲観的な人は宝くじを買わず、パチンコ中毒にもならないでしょう。
勝負を楽しむ場はスポーツ競技だけでなく、将棋や囲碁など広範であり、さらには現実の社会でも競争が大きな要素になります。決闘や戦争はいただけませんが、どうやら競争や勝負を好む性質はわれわれの本性に根ざしたもののようです。フロイトが性衝動を重視したのに対し、その弟子アドラーは他に対して優越しようとする欲求を人を行動に駆り立てる基本的な動機とみなしました。他人より優れていないことには落ち着かないという人間は少なくありません。
過去を見ると、社会には格差を縮小しようとする力より、拡大しようとする力の方が強く働いてきたことが感じられます。現実社会における、生存を脅かすほどの深刻な格差は社会不安の原因になり、秩序がひっくり返る革命の要因になりました。
一方、格差縮小のための努力も続けられましたが、それは善意の故でもあり、また社会不安や革命に対する恐怖の故でもあったと言えるでしょう。第二次大戦後は日米で高率の累進課税が実施されたように、格差の縮小が図られた時代です。
しかしその後流行した新自由主義は逆の方向で、それは経済成長を促す一方、格差の拡大を生んだとされています。厄介なことに、どうやら人間の集団というものは自由に放っておけば自然に格差が拡大するようにできているようです。自由と格差は二律背反(トレードオフ)の関係にあると言えます。
チンパンジーやオオカミなどの群れは階級社会をつくりますが、それと同様、人間もきっとそのようにプログラムされているのでしょう。
(*1)ゼロサムゲーム:全体のパイが一定で、誰かが得をするとその分だけ別の誰かが損をするゲーム。時価総額が一定の株式投機、一般の賭博など。