モデルナ社のワクチンが使われている職域接種がワクチン不足のために各地で中断されて、大きな混乱が起きている。さんざん接種を急がせておきながら恥ずかしい話である。6月末までに4000万回分が入ってくる予定であったのが1370万回分しか入ってこなかったためだという。加藤官房長官は『同社のワクチンが日本での薬事承認を受けたのが今年5月21日であることなどを踏まえ、6月末までに「1370万回の供給を受けることになったと聞いている」と述べた』つまりその理由はモデルナ製のワクチンの薬事承認が5月21日と遅れたためらしい。さらに河野太郎行政改革相は1370万回分と示されたのはいつかと訊かれて「かなり当初に4千万回分という数字を変更した。ちょっと正確には覚えていないが、ひょっとすると大型連休前ぐらいではないか」と答えている。
まとめると、モデルナの薬事承認はファイザーより3ヵ月以上も遅れ5月21日になったため、モデルナの6月末までに4000万回分という契約が1370万回分に減らされた。それを河野大臣は連休前に知りながら、黙っていたため、職域接種は4000万回分を前提に進められ、途中で足りなくなったというわけらしい。足りなくなった理由を政府は職域接種の要求量が過大であったと説明しているが、それは一部の理由に過ぎず、実に見苦しい説明に見える。政府が全力を入れた事業にしてはお粗末過ぎる。
一方、自治体に供給しているファイザー製ワクチンも不足が表面化してきて、医療機関が受け付けた予約をキャンセルせざるを得ないことになっている。ある医療機関では罵声を浴びながら数百人の予約者にキャンセルの電話をかけているとも聞く。ワクチン不足の理由を政府は自治体によってワクチン接種のスピードが異なって全体としては4000万回分が自治体の在庫となっていると説明している。この説明も納得できない。4000万回分は在庫量としては十分大きい数である。1日100万回しても40日間もある。たとえスピード差があるとしても融通しあえば不足は解消できると思う。
ファイザーのワクチンの薬事承認が欧米諸国に比べ大きく遅れたことは前に述べた。モデルナのワクチンにもほぼ通常の認可手続きをとったのではないだろうか。その遅れがワクチン不足を招いたようである。厚労省の見識・能力が疑われる。さらにワクチンの分配にも不手際が目立つ。必要量のワクチンを各自治体に配分する作業は簡単とは思わないが、困難とも思えない。人口のおよそ7割はワクチンを望んでいるという需要予測は立てられるから、人口比に応じて配分するだけである。流行を予想するなどの不確定要素はあまりない。足し算と掛け算ができれはいいわけで、中学生でもできる。
石弘之著「感染症の世界史」は博識の著者による面白い本である。そこには日本のワクチン行政についてつぎのように書かれている。『風疹に限らず「ワクチンで防げる感染症」の予防については、日本の国際的評価は先進地域のなかで最低レベルである。他の先進地域とワクチン行政の差は「ワクチンギャップ」と呼ばれてきた(P291)』
新型コロナワクチンについてもその早い実施が望まれているにもかかわらず、先進国中最大の遅れをとった。これを前に政府の統治能力の問題と述べたが、とりわけ厚労省がその主役であることが今回のコロナ禍で実証された形である。つまり厚労省の無能さは伝統なのであろう。また政府の統治能力の点でも、感染症だけでなく、防衛や食料、エネルギーに対する安全保障が大丈夫なのか。これらの危機に対しても先進国中最低の対応しかできないのではないかと、とても心配になる。
まとめると、モデルナの薬事承認はファイザーより3ヵ月以上も遅れ5月21日になったため、モデルナの6月末までに4000万回分という契約が1370万回分に減らされた。それを河野大臣は連休前に知りながら、黙っていたため、職域接種は4000万回分を前提に進められ、途中で足りなくなったというわけらしい。足りなくなった理由を政府は職域接種の要求量が過大であったと説明しているが、それは一部の理由に過ぎず、実に見苦しい説明に見える。政府が全力を入れた事業にしてはお粗末過ぎる。
一方、自治体に供給しているファイザー製ワクチンも不足が表面化してきて、医療機関が受け付けた予約をキャンセルせざるを得ないことになっている。ある医療機関では罵声を浴びながら数百人の予約者にキャンセルの電話をかけているとも聞く。ワクチン不足の理由を政府は自治体によってワクチン接種のスピードが異なって全体としては4000万回分が自治体の在庫となっていると説明している。この説明も納得できない。4000万回分は在庫量としては十分大きい数である。1日100万回しても40日間もある。たとえスピード差があるとしても融通しあえば不足は解消できると思う。
ファイザーのワクチンの薬事承認が欧米諸国に比べ大きく遅れたことは前に述べた。モデルナのワクチンにもほぼ通常の認可手続きをとったのではないだろうか。その遅れがワクチン不足を招いたようである。厚労省の見識・能力が疑われる。さらにワクチンの分配にも不手際が目立つ。必要量のワクチンを各自治体に配分する作業は簡単とは思わないが、困難とも思えない。人口のおよそ7割はワクチンを望んでいるという需要予測は立てられるから、人口比に応じて配分するだけである。流行を予想するなどの不確定要素はあまりない。足し算と掛け算ができれはいいわけで、中学生でもできる。
石弘之著「感染症の世界史」は博識の著者による面白い本である。そこには日本のワクチン行政についてつぎのように書かれている。『風疹に限らず「ワクチンで防げる感染症」の予防については、日本の国際的評価は先進地域のなかで最低レベルである。他の先進地域とワクチン行政の差は「ワクチンギャップ」と呼ばれてきた(P291)』
新型コロナワクチンについてもその早い実施が望まれているにもかかわらず、先進国中最大の遅れをとった。これを前に政府の統治能力の問題と述べたが、とりわけ厚労省がその主役であることが今回のコロナ禍で実証された形である。つまり厚労省の無能さは伝統なのであろう。また政府の統治能力の点でも、感染症だけでなく、防衛や食料、エネルギーに対する安全保障が大丈夫なのか。これらの危機に対しても先進国中最低の対応しかできないのではないかと、とても心配になる。