来年度は国債を増発しないと鳩山政権は宣言しています。ところが産経の社説(主張9/24)に
『新政権が「増発」の比較基準を今年度当初予算時の33兆円ではなく、補正後の44兆円に置いていそうなのは気になる』
と書かれているように、その基準が明確ではないようです。差は11兆円、どっちでもいいという金額ではありません。
補正後に44兆円と膨れ上がったのは「未曾有」の危機に対応する一時的な緊急措置のためであり、これを継続的な予算の基準にするのは問題だと思いますが、それを曖昧なままに放置しているマスコミの仕事ぶりが気になります。
国債発行の上限を33兆円とするか、44兆円とするかは新政権の経済政策の根幹にかかわる重要な問題です。そして新政権が基準を33兆円か、44兆円かを決めずに発行枠を表明することは考えられないことで、それを明確にするのがマスコミの仕事でしょう。そのために記者会見の質問権があるわけです。
多くの新聞・テレビがありながら、未だに明確にされないことは腑に落ちません。主要なマスコミは国債発行額に、つまり財源問題や財政問題に関心がないのでしょうか。あるいは他に何らかの事情があるのでしょうか。
ところで、マスコミにはアジェンダ(検討課題)の設定という役割があるとされています。社会の問題に光を当て、解決を促すという役割です。当然のことながら重要な問題ほど大きく扱われる筈です。
昨年末、派遣切り問題はマスコミの重要課題となり、集中報道によって選挙にまで影響を与えたと思われます。吉兆事件も同じように大きく扱われましたが、料亭がひとつ消えただけの結果となりました。扱いの大きさは、問題の重要性よりも興味を引くかどうかで決まるようです。
バブルの成長過程で、バブルの存在が報じられることはまずありません。金融機関の破綻など危機が具体的な形になって初めて大きく報道され、そのことが危機を余計に拡大させます。多くの場合、少数の人は早い段階で気づいているのですが。
昨年度の国債発行額は25兆円程度ですから44兆円だとすれば大変な増加です。それが一時的ならともかく、継続するならばさらに大きな問題になります。GDP比で終戦直後の混乱期に匹敵すると言われる巨額の政府債務にもう少し光を当ててもよいと思います。せめて、連日一面トップを飾った吉兆事件の十分の一くらいでも。
マスコミは警察の事件発表のように、動きのあるものに対して敏感に反応します。カエルの目と同じです。しかし静かに進行する問題を調査・解析することには不向きのようです。財政投融資や特殊法人、年金などの問題が明らかになったのは猪瀬直樹氏や岩瀬達哉氏らの地道な努力の結果であって、多数の記者と強力な情報網をもつマスコミでなかったことはたいへん象徴的です。
(参考拙文 マスコミ主権と財政危機)
『新政権が「増発」の比較基準を今年度当初予算時の33兆円ではなく、補正後の44兆円に置いていそうなのは気になる』
と書かれているように、その基準が明確ではないようです。差は11兆円、どっちでもいいという金額ではありません。
補正後に44兆円と膨れ上がったのは「未曾有」の危機に対応する一時的な緊急措置のためであり、これを継続的な予算の基準にするのは問題だと思いますが、それを曖昧なままに放置しているマスコミの仕事ぶりが気になります。
国債発行の上限を33兆円とするか、44兆円とするかは新政権の経済政策の根幹にかかわる重要な問題です。そして新政権が基準を33兆円か、44兆円かを決めずに発行枠を表明することは考えられないことで、それを明確にするのがマスコミの仕事でしょう。そのために記者会見の質問権があるわけです。
多くの新聞・テレビがありながら、未だに明確にされないことは腑に落ちません。主要なマスコミは国債発行額に、つまり財源問題や財政問題に関心がないのでしょうか。あるいは他に何らかの事情があるのでしょうか。
ところで、マスコミにはアジェンダ(検討課題)の設定という役割があるとされています。社会の問題に光を当て、解決を促すという役割です。当然のことながら重要な問題ほど大きく扱われる筈です。
昨年末、派遣切り問題はマスコミの重要課題となり、集中報道によって選挙にまで影響を与えたと思われます。吉兆事件も同じように大きく扱われましたが、料亭がひとつ消えただけの結果となりました。扱いの大きさは、問題の重要性よりも興味を引くかどうかで決まるようです。
バブルの成長過程で、バブルの存在が報じられることはまずありません。金融機関の破綻など危機が具体的な形になって初めて大きく報道され、そのことが危機を余計に拡大させます。多くの場合、少数の人は早い段階で気づいているのですが。
昨年度の国債発行額は25兆円程度ですから44兆円だとすれば大変な増加です。それが一時的ならともかく、継続するならばさらに大きな問題になります。GDP比で終戦直後の混乱期に匹敵すると言われる巨額の政府債務にもう少し光を当ててもよいと思います。せめて、連日一面トップを飾った吉兆事件の十分の一くらいでも。
マスコミは警察の事件発表のように、動きのあるものに対して敏感に反応します。カエルの目と同じです。しかし静かに進行する問題を調査・解析することには不向きのようです。財政投融資や特殊法人、年金などの問題が明らかになったのは猪瀬直樹氏や岩瀬達哉氏らの地道な努力の結果であって、多数の記者と強力な情報網をもつマスコミでなかったことはたいへん象徴的です。
(参考拙文 マスコミ主権と財政危機)