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専守防衛の身勝手

2024-03-13 22:05:31 | マスメディア
 もしあなたの隣人が銃を持った暴漢に襲われ、あなたの持つ銃をこちらに渡してください、と頼まれた時、あなたは「これは自分の身を守るためだけの銃なので渡すことはできません」と拒否できるだろうか。拒否すればあなたは身勝手な奴、ズルい奴と非難されるのが普通である。専守防衛とは聞こえがいいが、身勝手の宣言でもある。
 
 ウクライナはロシアの侵攻に果敢に抵抗してきたが、このところ劣勢気味との報道が目立つ。その大きな理由は各国からの軍事援助の減少であるとされている。そんななか、次のようなニュースが報じられた。
 
 中欧チェコのパベル大統領は3月7日、各国から資金支援を得て、ロシアから侵攻されているウクライナに80万発の弾薬を供給すると明らかにした。複数の欧州メディアが報じた。米国の軍事支援が滞る中、ウクライナは弾薬不足に陥っており、ウクライナ支援に熱心なチェコが主導して弾薬の供給計画を進めていた。

 80万発は少ない量ではない。そしてチェコは経済的にも軍事的にも大国でない。そんな国がここまでウクライナの援助に熱心なのはロシアの将来の脅威があるのだろう。また「プラハの春」の屈辱の記憶がまだ消えないのであろう。それらを考慮したとしても侵略者を許さないというこの気概に敬意を表したい。
 
 日本はヘルメットと防弾チョッキをウクライナに供与してきたが殺傷能力のある武器は対象外である。平和主義などという国内向けの勝手な理由でウクライナを見殺しにしてよいものなのか。侵略国家によってウクライナが侵略されることを阻止することこそが優先されることではないのか。ロシアの侵略が成功すれば世界の秩序が危うくなる。警察が暴力団に負けて、暴力団の支配を許すようなものである。

 平和憲法、武器輸出三原則などはいずれも国内事情である。極論すれば好みの問題である。それに対してウクライナへの軍事援助は民主主義国家の構成員としてのモラル・義務に関することである。もし日本がウクライナを見殺しにするようなことがあれば、日本が侵略を受けた時、他国に軍事援助を頼めなくなる。日本の軍事力は単独で侵略を阻止できるほど強くない。やがて侵略、そして秩序の崩壊へつながるだろう。
 
 パレスチナとイスラエルの紛争が起きてから、メディアの関心はそちらに向き、ウクライナ問題はあまり報道されなくなった。ロシアが勝利すると、その影響は中国の侵略行為を促し、日本にも累が及ぶということは言われているが、あまり切迫感がない。それよりも民主主義国家の構成員としての義務や責任に関する議論がほとんど見られないのが残念である。日本のメディアにはそのようなモラルが欠如しているのではないか。警察と暴力団の勢力が拮抗しているとき、警察に見方をしなければ暴力団に支配されてしまう。
 
 せめてウクライナに対する軍事援助を議論のテーマとして取り上げてほしいと思う。このままだと身勝手な国家、いや卑怯な国家となりかねない。日本人として肩身が狭い。

 最近の前線の報道によると、ウクライナの軍事学科を出た同期の若者70名の内、現在生存しているのは24名であると。前線は過酷である。ヘルメットと防弾チョッキでお茶を濁すようなことはしたくない。殺傷能力のある兵器を彼らは望み、そうでなければ彼らを守れない。


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