中国製冷凍ギョーザ中毒事件の集中報道は社会に大きい不安を与え、中国製食品の販売も大きく落ち込みました。しかしその反応の大きさは合理的な範囲を超えたものでした。中国製食品によって中毒が発生する確率は極めて低く、もっと確率の高い危険、例えば交通事故や火災などに対するよりも多くの注意を払うのは合理的ではありません。電磁波の危険に脅えるなども不合理な行動の例として挙げることができます。
私達は常に様々な問題に対する判断を迫られますが、多くは簡略な方法で判断していると考えられています。上記の例のように事故の確率を計算することなく、報道による印象の強さなどから危険を判断したりします。問題に関する知識や経験を使って、素早く直感的に判断する方法は、ヒューリスティックスと呼ばれます。時間と労力をあまり使わないので、認知的節約になるわけです。
これに対して、数学の問題を解くように、論理的な手順を踏んで解を求める方法はアルゴリズムと呼ばれますが、より正しい解が期待できる半面、アタマの負担が大きくなります。もっとも複雑な要因で構成される現実の問題には有効なアルゴリズムがあるとは限らず、有効性には限界があることも確かです。
ヒューリスティックスには検索容易性に基づくもの、代表性に基づくものなどがあります。食品を選ぶときに、上記の中毒事件をすぐ頭に浮かべで判断するのは検索容易性に基づくものであり、薬物による中毒事件を食中毒事件の代表と思ってしまうのは代表性に基づくというわけです。過去の成功体験がしばしば判断を狂わせるのも、その鮮明な記憶が容易に呼び出されるために、前回との条件の違いを軽視させるためでしょう。
これらの判断には一定の偏り(バイアス)を含むことが多く、上記の例では印象の強さから中国製食品の危険率を過大に評価してしまったり、食中毒事件の多くが農薬などの薬物だと誤解したりします。中国製食品による死亡事故は聞いたことがなく、食中毒による死亡事故は年間10人ほどありますが、そのほとんどはキノコやフグなどの自然毒によるものです。
悲惨な事件は強く印象に残るため、起きる確率が実際以上に評価される傾向があることは以前から指摘されています。過大な報道もまた同様の傾向を強め、不合理な行動へと導きます。
読者・視聴者は常に合理的な判断をするものではないという認識をマスコミに求めたいのですが、「そんなことはわかっている。報道の結果に関知しないだけだ」と言われるような気がします。
もっとも困るのはマスコミ自身がアタマの負担を嫌って、ヒューリスティックスに基づく不適切な判断をすることです。それに誇張が加われば事態はさらに悪化すること必定です。
私達は常に様々な問題に対する判断を迫られますが、多くは簡略な方法で判断していると考えられています。上記の例のように事故の確率を計算することなく、報道による印象の強さなどから危険を判断したりします。問題に関する知識や経験を使って、素早く直感的に判断する方法は、ヒューリスティックスと呼ばれます。時間と労力をあまり使わないので、認知的節約になるわけです。
これに対して、数学の問題を解くように、論理的な手順を踏んで解を求める方法はアルゴリズムと呼ばれますが、より正しい解が期待できる半面、アタマの負担が大きくなります。もっとも複雑な要因で構成される現実の問題には有効なアルゴリズムがあるとは限らず、有効性には限界があることも確かです。
ヒューリスティックスには検索容易性に基づくもの、代表性に基づくものなどがあります。食品を選ぶときに、上記の中毒事件をすぐ頭に浮かべで判断するのは検索容易性に基づくものであり、薬物による中毒事件を食中毒事件の代表と思ってしまうのは代表性に基づくというわけです。過去の成功体験がしばしば判断を狂わせるのも、その鮮明な記憶が容易に呼び出されるために、前回との条件の違いを軽視させるためでしょう。
これらの判断には一定の偏り(バイアス)を含むことが多く、上記の例では印象の強さから中国製食品の危険率を過大に評価してしまったり、食中毒事件の多くが農薬などの薬物だと誤解したりします。中国製食品による死亡事故は聞いたことがなく、食中毒による死亡事故は年間10人ほどありますが、そのほとんどはキノコやフグなどの自然毒によるものです。
悲惨な事件は強く印象に残るため、起きる確率が実際以上に評価される傾向があることは以前から指摘されています。過大な報道もまた同様の傾向を強め、不合理な行動へと導きます。
読者・視聴者は常に合理的な判断をするものではないという認識をマスコミに求めたいのですが、「そんなことはわかっている。報道の結果に関知しないだけだ」と言われるような気がします。
もっとも困るのはマスコミ自身がアタマの負担を嫌って、ヒューリスティックスに基づく不適切な判断をすることです。それに誇張が加われば事態はさらに悪化すること必定です。