噛みつき評論 ブログ版

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説明不能?コロナ激減

2021-10-31 14:24:04 | マスメディア
 最近の新型コロナ感染者数の激減は予想を超えたものであった。週ごとに半数になるほどの急激な減少で、喜ぶべきことだが、数多(あまた)の学者先生方は誰も予想していなかったばかりか、もっともらしい「後講釈」すら聞こえてこない。大変お困りのようである。

 強力なデルタ株によって1日あたりの感染者数が40万人にもなったインドでは現在の感染者数はピーク時の4%となっている。アジア・中東の他の国々、トルコ、イラン、タイ、マレーシアでもピーク時の23%~44%となっていずれも減少傾向にある。反面、欧州では増加傾向が目立つ(REUTERS COVID-19 TRACKER)

 一方、7月20日の「ヒンドゥスタン・タイムズ」などの報道によると、「未接種者のうち、抗体を保有していた人は62.3%を占め、1次接種者は81%、2次接種者は89.8%が抗体を保有していた。全体では67.6%で、インド人の3人に2人が抗体を持っていた。これは1月の調査時の24.1%の3倍近い」とされている(7/23 hankyoreh)。

 また「インドの首都ニューデリーで、新型コロナウイルスの抗体保有率が97%にのぼったことが、地元政府の調査でわかった。今年4〜5月にはインド全土で1日に40万人以上の感染者を出したが、その後激減した。集団免疫に近い状態を獲得した可能性がある。
 調査は首都で9〜10月、2万8千人を対象に実施した。1月の前回の調査では約56%だったが、急激に増えた。ワクチン接種を終えていない人でも90%が抗体を保有していることがわかった」とされる(10/30朝日新聞デジタル)。

 インドの例から推測できるのは感染者の急激な減少は抗体保有者、つまり免疫保有者の急激な増加によるものであるということである。しかもその抗体はワクチンによるものよりも感染拡大により自然に獲得されたものが多いという事実に注目したい。

 欧州では増加傾向が続くなど、未解明な部分も多く、軽々には言えないが、少なくとも自然免疫が重要な役割を演じていると仮定すれば、日本でも抗体の保有率を大規模で調査する意味は大きい。現在第5波を心配してその対策が講じられようとしているが、すでに集団免疫が獲得されているならばその心配は杞憂となるかもしれないのである。

 過去、感染は第4波までピークと減少の谷間を繰り返してきた。減少の理由を政策的な感染機会の抑制という点と、第5波ではそれに加えてワクチンの普及だけに求めるのは何かしら無理があるように感じる。集団免疫がどの程度の役割を果たしているのか、今後の研究に待たなければならないが、場合によっては3回目のワクチンの必要性にも関わってくるだけに重要な問題であろう。現状の正確な認識が何より必要である。

朝三暮四、有権者は猿なみの扱い?

2021-10-18 20:49:36 | マスメディア
 昨年の11月、兵庫県丹波市の市長選挙で「全市民に5万円給付」を掲げた林時彦氏が当選した。しかし市の予算の半分ほども使うこの案は議会で否決され、結局支給対象を限定した上で2万円の商品券支給に決まった。

 バラマキ選挙の典型で、現市長は市の税金で票を買ったようなものである。かつては私財をバラまいて、票を買うようなことが行われてきたが、これは税金だけに余計に質が悪い。税金はいずれ納税という形で返さなくてはならない。まさに「朝三暮四」である。昔、宋の狙公が猿を飼っていたが、その猿たちにとちの実を朝三つ晩四つ与えると言ったら猿たちは怒ったが、朝四つ晩三つにすると言ったら喜んだという故事に由来する。先渡しの餌に釣られたのでる。

 つまり有権者は猿と同じレベルだと見られているのである。実際、この市長は当選したのだから、その見方は誤りだとは言えない。今回の衆院選でも各党のバラマキ戦略が盛んである。バラマキの原資は何かというとほぼ赤字国債である。赤字国債は将来税金によって返済されなければならない。どこにも「ただのメシはない」のである(no free lunch)。

 ここに怪しい学説が登場する。国債の購入者の多くは国内の投資家だから、破綻は起きないとか、国のバランスシートには負債とほぼ同額の資産があるから健全であるとか…。まあ、ひとつの側面だけみればそういう議論にもなるのだろうが、そういう主張をされる人でもさすがに赤字国債を無限に拡大してもよいとまでは言わない。つまりどこかに限界点がある筈であるが、それについては決して言及しない。予測できないからだろう。また国が破綻することはないにしても、いつかの時点で円の信用低下、金利の急上昇は起き得る。

 基本に立ち返れば、国民が経済的に豊かになるためにはモノの生産・サービスの拡大が必須条件になる(海外から購入できるが一時的である)。それには生産性を向上することが必要になる。お金をバラまいても生産・サービスが増えなければ貨幣価値が下落するだけである。つまりインフレである。

 緩やかなインフレによって、例えば現在2%の物価上昇を目標にしているように、消費意欲をかきたて経済成長を促すという考えがある。日本はこの30年ほど財政支出を身の程以上に増やして来た。その結果、何が起きたかというと先進国中最悪の財政赤字と、同じく先進国中最低の経済成長率である。つまり(先進国中)世界一の積極財政をした国が世界最低の成長率を達成したということである。明らかな失敗であるが、何故か反省の機運はない。

 リフレ派(積極財政派)も緊縮財政派も両極端の議論が中心で、どこが最適点かという議論が見られない。さらに経済学者は無数にいるにもかかわらず、日本の財政悪化と成長の低さを解明し、政策に反映されているようには見えない。そうして30年が過ぎた。無為の弁解に30年は長すぎる。この責任は政府にも、そしてモリカケや桜を見る会などに注目してきたメディア、野党にもある。現に与野党ともバラマキに熱心だが、これを批判するメディアは見られない。財務省の矢野康治事務次官の「日本の政策はバラマキ合戦になっている」との発言には、何故かメディアには批判が目立つ。世論調査によれば肯定意見の方が多いのに、である。メディアは国民多数よりアホなのかもしれない。

 なぜ日本だけが30年もの間、巨額の財政赤字を出しながら低い経済成長に甘んじてきたのか、それを考えるいい機会である。メディアや有権者が「バラマキ合戦」を認めるようなら日本はさらに沈むであろう。