社民党の福島瑞穂氏には次のような興味深いお言葉があります。「他国からの攻撃にはどう対応するか」という質問に対して、
「9条で『世界を侵略しない』と表明している国を攻撃する国があるとは思えない。攻撃する国があれば世界中から非難される」
「中国政府に尖閣諸島を侵略される可能性はないか」という質問に対しては、
「尖閣は民間人の所有だ。侵略は所有権侵害にあたり、領土侵犯に当たる」(2012/8/31 MSN)
こんなおめでたい人が公党の党首とは本当に驚きます。「侵略は所有権侵害にあたる」とは法律家らしいお考えなのでしょうが、中国政府を国内法で裁くおつもりなのでしょうか。なかなか面白い冗談ですね。
またこれはあの鳩山元首相の友愛外交とも通じます。失礼ながら、このような夢想は歴史を多少なりとも知っていればまずあり得ない発想と思われます。しかし彼らにそう思わせた土壌があったのも確かです。この土壌について考えてみたいと思います。
尖閣諸島問題における中国の対応に驚かれた方も多いことと思います。それは従来の中国に対する認識と今回の対応に大きなギャップがあったからでしょう。しかしひとまず落ち着きを取り戻しました。メディアが取り上げることも少なくなり、代わりにこの数日はオスプレイの試験飛行が大きく報道されました。こんな危険なものをといった迷惑顔で。
漁船1000隻の尖閣への派遣、中国軍の5将軍が断固とした軍事行動を主張するなど、中国が当初示した強硬姿勢はなぜか途中で腰砕けとなりました。その理由についていろいろな「識者」がもっともらしいことを言っています。中国共産党大会が近づいているため、あるいは経済的な損失への配慮、中国の対外イメージの低下などです。どれも憶測に過ぎませんが。
しかしパネッタ米国防長官が訪中し、習近平国家副主席、梁光烈国防相らに「アメリカは安全保障条約の責任がある」として、仮に軍事的な衝突に発展すれば、アメリカも関与せざるをえないという認識を伝えたこと(9/21 NHK)は大きく報道されず、それが腰砕けの主な理由として説明されることもなかったようです。私はこれが中国に方針の変更を促した大きな理由であり、安保条約の存在意義を明確に示したものであると思っています。パネッタ長官はわざわざ挨拶をするために訪中したわけではないでしょう。
中国は南ベトナムから西沙諸島の西半分を奪い(1974)、さらにスプラトリー諸島海戦(1988)でベトナムから南沙諸島の多く奪い、フィリピンから南沙諸島の美済礁を奪って(1995)直ちに軍事要塞を造ったという「実績」を誇る国であり、その後も軍事的圧力を使った膨張政策を続けています。これは今回の尖閣問題に関連して報道されましたが、以前から知っていた方は多くないと思われます。この軍事力を使った、あるいはそれを背景にした強奪の事実が当時大きく報道されなかったためでしょう。これらの事件は隣国の行動様式を認識する上で重要な意味を持つにもかかわらずです。つまり我々は強盗実績のある人が隣家に住んでいることを知らず、鍵をかけずに暮らしていたようなものです。
この二つの例からは隣国の軍事的脅威をなるべく伏せていこうという報道姿勢が読み取れます。この背景には、隣国の軍事的脅威が認知されれば日本の軍国主義化を招きかねないとの恐怖があるのでしょう。とくに左翼メディアにはいまだに軍国主義の亡霊に過敏な体質であるようです。またかつて自分達が軍国主義に協力し、軍と共に国を滅ぼしたという自省の気持ちも働いているのかも知れません。しかしこうした認識は大きい広がりをもち、防衛予算が10年以上にわたって漸減していることや自衛隊に対する嫌悪感などに影響を及ぼしたと考えられます。
戦後の長い期間、平和を享受してきた日本はいわばイソップのキリギリスであり、今まで冬が来なかったという幸運に恵まれたわけです。隣国の軍事力が強大となればやがて冬がやってくるかもしれません。尖閣問題の直後でも、オスプレイの事故率が従来の機種より僅かに高いというだけで大騒ぎするのは安全保障に対するメディアの関心の低さを示しているように思います。
今回の中国の対応の背景には根強い反日感情があり、中国はその反日感情を国の統治の手段として利用してきたとされます(元の原因を作ったのは数十年前の日本ですが)。将来の戦争の種にもなりかねない、ずいぶん危険なやり方ですが、朝日に代表される左派系の新聞はその反日に協力してきたのも事実です。1966年、産経、毎日、読売などは次々と北京から追放され、残留が許されたのは朝日だけでした。これは朝日だけが中国の意向に沿う報道をしていたことを示しています。朝日は中国の期待に応え、文革礼賛や南京事件の掘り起こしなどをやり、中国の反日感情強化と引換えに独自の地位を獲得しました。このようなメディアが中国の軍事的脅威を正しく伝えるとは思わない方がよいでしょう。
とにかく、朝日に追従する左派系のメディアや大江健三郎氏などの進歩的文化人の活躍もあって隣国の軍事的脅威はひたすら隠されてきたように思います。そして日本が仕掛けない限り戦争は決して起きないという夢のような土壌が形成されました。福島瑞穂氏や鳩山氏はこの土壌から感染を受けたわけです(彼らの単純な素直さは認めなければなりませんが)。しかし隣国の軍事力が優位になればこの夢想の土台は崩れます。
朝日などがその育成に加担した中国の反日感情はモンスターとも呼ばれます。それは偶発的な事件などによりナショナリズムと一体化して燃え上がり、制御不能になる事態も懸念されています。さらに中国が「小日本」に対して経済的・軍事的な優位を得て自信を持ったとき、モンスターはさらに力を持つかもしれません。
朝日などが果たした役割は結果的に日本の安全を脅かすことにつながった可能性があります。意図的ではないとしても、モンスターの育成に手を貸した罪は免れません。民意が政策に反映されるのが民主主義ですが、モンスターの民意ではちょっと困るわけであります。
「9条で『世界を侵略しない』と表明している国を攻撃する国があるとは思えない。攻撃する国があれば世界中から非難される」
「中国政府に尖閣諸島を侵略される可能性はないか」という質問に対しては、
「尖閣は民間人の所有だ。侵略は所有権侵害にあたり、領土侵犯に当たる」(2012/8/31 MSN)
こんなおめでたい人が公党の党首とは本当に驚きます。「侵略は所有権侵害にあたる」とは法律家らしいお考えなのでしょうが、中国政府を国内法で裁くおつもりなのでしょうか。なかなか面白い冗談ですね。
またこれはあの鳩山元首相の友愛外交とも通じます。失礼ながら、このような夢想は歴史を多少なりとも知っていればまずあり得ない発想と思われます。しかし彼らにそう思わせた土壌があったのも確かです。この土壌について考えてみたいと思います。
尖閣諸島問題における中国の対応に驚かれた方も多いことと思います。それは従来の中国に対する認識と今回の対応に大きなギャップがあったからでしょう。しかしひとまず落ち着きを取り戻しました。メディアが取り上げることも少なくなり、代わりにこの数日はオスプレイの試験飛行が大きく報道されました。こんな危険なものをといった迷惑顔で。
漁船1000隻の尖閣への派遣、中国軍の5将軍が断固とした軍事行動を主張するなど、中国が当初示した強硬姿勢はなぜか途中で腰砕けとなりました。その理由についていろいろな「識者」がもっともらしいことを言っています。中国共産党大会が近づいているため、あるいは経済的な損失への配慮、中国の対外イメージの低下などです。どれも憶測に過ぎませんが。
しかしパネッタ米国防長官が訪中し、習近平国家副主席、梁光烈国防相らに「アメリカは安全保障条約の責任がある」として、仮に軍事的な衝突に発展すれば、アメリカも関与せざるをえないという認識を伝えたこと(9/21 NHK)は大きく報道されず、それが腰砕けの主な理由として説明されることもなかったようです。私はこれが中国に方針の変更を促した大きな理由であり、安保条約の存在意義を明確に示したものであると思っています。パネッタ長官はわざわざ挨拶をするために訪中したわけではないでしょう。
中国は南ベトナムから西沙諸島の西半分を奪い(1974)、さらにスプラトリー諸島海戦(1988)でベトナムから南沙諸島の多く奪い、フィリピンから南沙諸島の美済礁を奪って(1995)直ちに軍事要塞を造ったという「実績」を誇る国であり、その後も軍事的圧力を使った膨張政策を続けています。これは今回の尖閣問題に関連して報道されましたが、以前から知っていた方は多くないと思われます。この軍事力を使った、あるいはそれを背景にした強奪の事実が当時大きく報道されなかったためでしょう。これらの事件は隣国の行動様式を認識する上で重要な意味を持つにもかかわらずです。つまり我々は強盗実績のある人が隣家に住んでいることを知らず、鍵をかけずに暮らしていたようなものです。
この二つの例からは隣国の軍事的脅威をなるべく伏せていこうという報道姿勢が読み取れます。この背景には、隣国の軍事的脅威が認知されれば日本の軍国主義化を招きかねないとの恐怖があるのでしょう。とくに左翼メディアにはいまだに軍国主義の亡霊に過敏な体質であるようです。またかつて自分達が軍国主義に協力し、軍と共に国を滅ぼしたという自省の気持ちも働いているのかも知れません。しかしこうした認識は大きい広がりをもち、防衛予算が10年以上にわたって漸減していることや自衛隊に対する嫌悪感などに影響を及ぼしたと考えられます。
戦後の長い期間、平和を享受してきた日本はいわばイソップのキリギリスであり、今まで冬が来なかったという幸運に恵まれたわけです。隣国の軍事力が強大となればやがて冬がやってくるかもしれません。尖閣問題の直後でも、オスプレイの事故率が従来の機種より僅かに高いというだけで大騒ぎするのは安全保障に対するメディアの関心の低さを示しているように思います。
今回の中国の対応の背景には根強い反日感情があり、中国はその反日感情を国の統治の手段として利用してきたとされます(元の原因を作ったのは数十年前の日本ですが)。将来の戦争の種にもなりかねない、ずいぶん危険なやり方ですが、朝日に代表される左派系の新聞はその反日に協力してきたのも事実です。1966年、産経、毎日、読売などは次々と北京から追放され、残留が許されたのは朝日だけでした。これは朝日だけが中国の意向に沿う報道をしていたことを示しています。朝日は中国の期待に応え、文革礼賛や南京事件の掘り起こしなどをやり、中国の反日感情強化と引換えに独自の地位を獲得しました。このようなメディアが中国の軍事的脅威を正しく伝えるとは思わない方がよいでしょう。
とにかく、朝日に追従する左派系のメディアや大江健三郎氏などの進歩的文化人の活躍もあって隣国の軍事的脅威はひたすら隠されてきたように思います。そして日本が仕掛けない限り戦争は決して起きないという夢のような土壌が形成されました。福島瑞穂氏や鳩山氏はこの土壌から感染を受けたわけです(彼らの単純な素直さは認めなければなりませんが)。しかし隣国の軍事力が優位になればこの夢想の土台は崩れます。
朝日などがその育成に加担した中国の反日感情はモンスターとも呼ばれます。それは偶発的な事件などによりナショナリズムと一体化して燃え上がり、制御不能になる事態も懸念されています。さらに中国が「小日本」に対して経済的・軍事的な優位を得て自信を持ったとき、モンスターはさらに力を持つかもしれません。
朝日などが果たした役割は結果的に日本の安全を脅かすことにつながった可能性があります。意図的ではないとしても、モンスターの育成に手を貸した罪は免れません。民意が政策に反映されるのが民主主義ですが、モンスターの民意ではちょっと困るわけであります。