JR石勝線トンネル脱線火災事故では乗客らの自主的判断によって惨禍を免れました。緊急時の判断の是非が時には生死をも分けることもあり、改めてその大切さを思いました。
一方、避難誘導が適切に行われなかった理由のひとつに、運転士、車掌、指令がマニュアルにこだわり過ぎて、柔軟な行動をとらなかったという点が指摘されています。たしかにマニュアルは便利なもので、業務の内容を効率よく伝えることができます。また業務をする者にとっても自分の頭で考える必要がない、そしてマニュアルに従ったと言えば責任を問われない、という利点があります。
しかしマニュアルに従ってばかりいると、思考力が育たないため、マニュアルにない状況に直面したとき、適切な判断ができないという可能性が高くなります。
福島第一原発の1号炉では電源喪失直後、非常用の冷却システムが起動しましたが、圧力容器内の温度が急速に低下したためマニュアルに従って冷却システムを手動で停止したそうです。急に温度が低下すると圧力容器に応力が生じて損傷する恐れがあるためとされています。通常時では高価な圧力容器を保護するために必要な規定なのでしょうが、非常に危機的な状況と認識した上での措置であったのか、疑問が残ります。マニュアルに従ったということで不問にされたようですが、炉心冷却より圧力容器の損傷という僅かな可能性を優先すべきであったのでしょうか。
マニュアルですべての状況に対応することはまず不可能といってよく、想定外の事態が起こるのは避けられません。マニュアルに依存すればするほど、想定外の事態に対応する能力は低下すると思われます。
気象庁は緊急地震速報が発令されたときの心得(つまりマニュアル)を作成し、NHKではそれを頻繁に放送しています。その中に、家庭での対処法として、
「頭を保護し、丈夫な机の下など安全な場所に避難する」
「あわてて外に飛び出さない」
「無理に火を消そうとしない」
の3つが掲げられています。
建物が倒壊しない場合はまあこの対処でよいと思いますが、倒壊の場合は「速やかに外に飛び出す」がもっとも適切な行動でしょう。阪神大震災の死者の約8割は建物の倒壊による圧死・窒息死だからです。机などは上からの荷重には比較的強いのですが、建物が平行四辺形のように倒壊する場合は、斜めからの力が働くので簡単に破壊されます。
「無理に火を消そうとしない」と教えるのも疑問です。火を消さず、机の下に避難して建物の倒壊による圧死を免れても焼死することがあります。最適な方法は状況により様々であり、一律に教えるべきではないと思います。「建物の倒壊可能性に応じて、自分で判断して適切な行動をとれ」でもいいのではないでしょうか。
「無理に火を消そうとしない」という言葉が繰り返されれば消火の重要性が軽視され、周囲をも巻き込む火災の可能性を高めます。単純なフレーズで様々な状況に対処しようということが元々無理なわけです。
東日本大震災のとき、気象庁が津波の予想波高を当初3mと発表したことが被害拡大の大きな原因になったと指摘されています。おそらく限られたデータからマニュアル(計算方法)に従って導き出した結果であろうと思われますが、的確な判断力のある人がいれば違った結果になっていたかもしれません。マニュアルに想定されていない事態が起きたときの判断能力が十分であったか、私には疑問です。
3mという具体的な数値は信頼性のあるものという誤解を与えます。岩手県大船渡市では故意に3mという数値を抜いて津波の警報を放送し、被害の拡大を抑えたそうです。恐らくマニュアル(あったとしたら)から外れた、実に見事な判断です。そこには気象庁は信用できないという卓見があったのかもしれませんが。
一方、避難誘導が適切に行われなかった理由のひとつに、運転士、車掌、指令がマニュアルにこだわり過ぎて、柔軟な行動をとらなかったという点が指摘されています。たしかにマニュアルは便利なもので、業務の内容を効率よく伝えることができます。また業務をする者にとっても自分の頭で考える必要がない、そしてマニュアルに従ったと言えば責任を問われない、という利点があります。
しかしマニュアルに従ってばかりいると、思考力が育たないため、マニュアルにない状況に直面したとき、適切な判断ができないという可能性が高くなります。
福島第一原発の1号炉では電源喪失直後、非常用の冷却システムが起動しましたが、圧力容器内の温度が急速に低下したためマニュアルに従って冷却システムを手動で停止したそうです。急に温度が低下すると圧力容器に応力が生じて損傷する恐れがあるためとされています。通常時では高価な圧力容器を保護するために必要な規定なのでしょうが、非常に危機的な状況と認識した上での措置であったのか、疑問が残ります。マニュアルに従ったということで不問にされたようですが、炉心冷却より圧力容器の損傷という僅かな可能性を優先すべきであったのでしょうか。
マニュアルですべての状況に対応することはまず不可能といってよく、想定外の事態が起こるのは避けられません。マニュアルに依存すればするほど、想定外の事態に対応する能力は低下すると思われます。
気象庁は緊急地震速報が発令されたときの心得(つまりマニュアル)を作成し、NHKではそれを頻繁に放送しています。その中に、家庭での対処法として、
「頭を保護し、丈夫な机の下など安全な場所に避難する」
「あわてて外に飛び出さない」
「無理に火を消そうとしない」
の3つが掲げられています。
建物が倒壊しない場合はまあこの対処でよいと思いますが、倒壊の場合は「速やかに外に飛び出す」がもっとも適切な行動でしょう。阪神大震災の死者の約8割は建物の倒壊による圧死・窒息死だからです。机などは上からの荷重には比較的強いのですが、建物が平行四辺形のように倒壊する場合は、斜めからの力が働くので簡単に破壊されます。
「無理に火を消そうとしない」と教えるのも疑問です。火を消さず、机の下に避難して建物の倒壊による圧死を免れても焼死することがあります。最適な方法は状況により様々であり、一律に教えるべきではないと思います。「建物の倒壊可能性に応じて、自分で判断して適切な行動をとれ」でもいいのではないでしょうか。
「無理に火を消そうとしない」という言葉が繰り返されれば消火の重要性が軽視され、周囲をも巻き込む火災の可能性を高めます。単純なフレーズで様々な状況に対処しようということが元々無理なわけです。
東日本大震災のとき、気象庁が津波の予想波高を当初3mと発表したことが被害拡大の大きな原因になったと指摘されています。おそらく限られたデータからマニュアル(計算方法)に従って導き出した結果であろうと思われますが、的確な判断力のある人がいれば違った結果になっていたかもしれません。マニュアルに想定されていない事態が起きたときの判断能力が十分であったか、私には疑問です。
3mという具体的な数値は信頼性のあるものという誤解を与えます。岩手県大船渡市では故意に3mという数値を抜いて津波の警報を放送し、被害の拡大を抑えたそうです。恐らくマニュアル(あったとしたら)から外れた、実に見事な判断です。そこには気象庁は信用できないという卓見があったのかもしれませんが。