噛みつき評論 ブログ版

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主義主張が目を曇らせる

2016-08-29 08:58:18 | マスメディア
 北朝鮮は潜水艦発射ミサイル(SLBM)の発射に成功しました。安倍首相は我が国の安全保障に対する重大な脅威であると述べ、国連安保理も非難声明を出しました。安全保障上の重大な脅威であることは間違いないでしょう。ただ、これらの声明は通例のごとく、ほとんど効果がないようで、話が通じる相手ではないようです。

 しかしこの事実を深刻に受け止めている人がどれだけいるのでしょうか。メディアの報道もあまり大きくありません。芸能人の強姦事件や中学生の殺人事件に比べると扱いはいかにも小さく、この報道からはミサイルの重要性を理解するのは無理でありましょう。恐らくメディア自身にも危機感が希薄なのだ思われます。

 潜水艦発射ミサイルは防御が難しく、核弾頭と共に実戦配備されれば重大な脅威となります。米国も攻撃可能対象となります。もし韓国が北朝鮮から攻撃を受けた場合、米国は北朝鮮に対して反撃してくれるでしょうか。米国は北朝鮮の核攻撃を覚悟しなければならない事態もあるわけです。SLBMの発射を受け、韓国紙の社説にはこのような深刻な懸念が表明されています。

 脅威の大きさは韓国ほどではないにしても北朝鮮は何をするかわからない国であるからには日本も安全とは言い切れません。情報が少ない上、合理的には理解できない行動が多いからです。国家が他国民を大量に誘拐する国です。こんな隣国が核ミサイルを実用化すれば我が国にも大きい脅威となります。

 1981年、イスラエルはイラクの原子力施設を空爆し、無力化しました。同様に北朝鮮が核攻撃能力を持つ前に核施設などを先制攻撃してその能力を破壊すべきだという議論は以前から米国にありました。今回のSLBM発射によってその議論は力を得るかもしれません。大変荒っぽい方法ですが、他に手段がないときには将来の脅威を未然に取り除く方法として有力な選択肢です。

 北朝鮮が核攻撃能力を保有するようになれば、以前より強気になって攻撃の可能性が高くなるでしょう。日本も戦争に巻き込まれて甚大な被害を被る可能性が大きくなります。左派が懸念するように日本が自ら戦争を始める可能性よりははるかに高いと思われます。左派メディアは安保法案で長期間大騒ぎしましたが、SLBMではもっと騒いでもいい筈です。

 今の時代になっても、「この道はいつか来た道」と日本が戦争を始めないかと心配している人が少なくありません。朝日などの時代錯誤の左派メディアも同様ですが、戦争反対を言うなら北朝鮮や、実力で領土を増やそうとしている中国、ロシアに対して言うべきでしょう。奇妙なことにこれら三国はいづれも共産主義国家、あるいは過去に共産主義国であった国家です。戦争をしかけるのは常に資本主義国であり共産国は戦争しないと左翼は宣伝していましたが、今は逆になったようです。

 将来のあらゆる脅威の可能性に対して備えるのが安全保障であり、国の責務です。北朝鮮に対する予防的な空爆など、およそ日本では考えられませんが、それが将来の戦争の危機を防ぐこともあるわけで、議論さえもできない状態は好ましくありません。戦争を回避し、安全を願うなら、あらゆる方法を議論すべきでしょう。

 決して空爆を勧めているわけではありません。主義主張や、思想・信条などのために現実を正しく捉える目を失えば、重大な誤りを犯しかねないと言いたいのです。かつて生産力が10倍以上もあった米国に無謀な挑戦をしたのも政府の現実認識の不正確さがあったからだと思われます。猪瀬直樹氏の「昭和16年夏の敗戦」には総力戦研究所による正確な現状認識と敗戦予測があったにもかかわらず、それが無視されて戦争に進んでいった経緯が描かれています。

大金を払って動物を殺す人間

2016-08-22 09:17:29 | マスメディア
 昨年、アフリカのジンバブエで米国の歯科医が約600万円を払ってセシルという名のライオンを射殺したことが問題になりました。しかしこのようなことは特別なことではないようです。南アフリカではビジネスとして成り立っていることが報道されました(8/7朝日)。記事はハンティング用に220頭のライオンを飼育している施設を紹介しています。飼育されたライオンはやがて別の私有地に送られハンティングの対象となります。私有地でのハンティングは認められているそうです。ある業者では動物ごとの料金が設定されているそうです。シマウマ約13万円、キリン約40万円、メスライオン約80万円、オスライオン約200万~550万円と。

 南アのハンティング業界は数百億円規模の「産業」となり、その是非をめぐって論争が起きているようです。まあそれはともかく、私は大金を払ってまで動物を殺そうとする人間が少なからず存在することに驚きました。動物を殺すことがたまらないほどの快楽なのでしょうか。

 人間は長い間、狩猟生活をしてきました。また集団間では戦争が絶えませんでした。このような時代には、動物や敵の人間を殺すことに喜びを感じる性質はある程度の合理性があったと思います。殺すことを楽しむような性質は生存上有利に働いたかもしれません。

 しかし現代の先進国においては、このような性質は無用であるだけでなく、場合によっては社会にとって危険なものになりかねません。とはいっても長い時間をかけて獲得された性質なので簡単に解決できる問題ではないことも確かです。このような性質を強く備えた人間がどれほどの割合で存在するかは民族によって異なると思われます。

 ハンティングに訪れるのはほとんどが外国人で、6割が米国、3割が欧州各国、1割が中国だそうです。これで10割ですから、日本はないか、あったとしてもごく少数であると思われます。欧米人が多いのはやっぱりと思いますが、中国人が1割を占めるのは少し意外でした。富裕階級の人数とその国の文化も影響するので一概には言えませんが、性質の影響も多分あるのでしょう。

 かつて朝日の書評欄で京大卒の猟師が書いた本を紹介したことがありました。著者は猟を心から楽しんでいる様子で、またその本を取り上げた朝日の担当者も銃に強い関心を持った人物でした。日本にもそのような性格の持ち主が少数は存在するようです。

 オリンピックで日本は大分活躍しているようです。しかし日本が金メダルをたくさん取ることよりもハンティングの参加国ランキングに載らないことの方が、私には意味があることと考えます。日本の犯罪率の低さは世界に誇れるものですが、もしかしたらそうした日本人の性質と関係してるのかもしれません。もっとも根拠のある話ではありませんが、中らずと雖も遠からず(あたらずといどもとおからず)、ではないでしょうか。

メディアの付和雷同

2016-08-15 09:20:48 | マスメディア
オリンピックに高校野球が重なり、テレビと新聞はスポーツに占領された観があります。まるで全国民がスポーツ好きだと思っているようです。しかし当初東京オリンピックの開催には半数以上が反対したように、スポーツ嫌いは少数とは言えず、彼らにとってこれは甚だ迷惑です。単に日本人というだけで、見ず知らずの、何の関係もない選手に関心を持てない人も少なくないでしょう。

 NHKでは地上波とBSの4波の内、なんと3波の大部分をオリンピックと高校野球に充てています。民放もかなりの時間をスポーツに充てており、地方局を除く地上波のすべてがオリンピックか高校野球をやっていることも珍しくありません。その結果、スポーツ以外の多くの番組が削られたことでしょう。

 放送局にとってスポーツ中継は楽な仕事です。ドラマや調査報道は時間も金もかかる割に視聴率が稼げるかどうかわかりません。しかしオリンピックや高校野球の中継は確実に視聴率をとれるのでしょう。多くの社員が優雅に夏休みを取ることも可能です。

 しかし今回はやり過ぎのように思います。例えば中国の漁船200~300隻と公船十数隻が大挙して尖閣周辺に押し寄せてきた事件はオリンピックや高校野球より遥かに重要なニュースだと思いますが、膨大なスポーツ報道に隠れて、一般には弱い印象しかありません。日本国民の反応が小さければ中国はさらに積極的になるかもしれません。

 中国のやり方はフィリピンやベトナムから島を奪った場合と同様の方法であるとされています。日本は5日連続で中国に抗議していますが、彼らは聞く耳を持たないようです。中国がさらに強行すれば、日本は黙って明け渡すか、武力衝突かの選択を強いられる重大な事態もないとは言えません。

 中国の意図についてはいろんな説がありますが、どれも憶測の域を出ず、また偶発的な要素もあり、深刻な事態へ発展する可能性があります。現在のように小さな扱いで済ませる問題ではないと思われます。様々な事態に対処するには事前の認識や準備が必要であるからです。

 日本のメディアは昔から一斉に同じ方向に走る傾向があると指摘されています。集中力があると言えば聞こえがいいですが、要するに付和雷同するだけです。ダイオキシン、環境ホルモン、賞味期限などの問題でそろって過大な騒ぎしたことをみてもわかります。戦前、戦争を煽り、国を誤った方向に導いたのもそのような性格のせいでしょう。オリンピックに対し、うちはスポーツには関心がないと、軽視する局や新聞がひとつやふたつあるのが健全というものでしょう。

大学教育の意味

2016-08-08 09:05:59 | マスメディア
 返済の必要がない給付型の奨学金が政策課題として注目されています。経済的な理由で進学の機会を奪われることは本来あってはならないことであり、給付型の奨学金はその状況を緩和すると期待されます。子供を進学させるために経済的な苦労をする家庭は少なくないと思われるからです。

 一方、親たちの期待、願望に応えるように日本には大学が続々と作られました。1955年には228校であったものが2014年には781校と3倍以上になり、このうち私立大学は5倍近くになり2014年では全体の77%が私立です。家計に重くのしかかる塾・予備校・大学などの教育費はこれらの巨大な教育産業に吸い込まれていく仕組みです。

 一方「分数のできない大学生」がかつて話題になったことがありました。ゆとり教育を批判したものでしたが、大学生の質の問題をも含んでいたと思います。私自身の経験でも、恥ずかしながら大学教育で得たものはほとんどありません。むろん一部の者はまじめに学ぶことでしょうが、大半は私と同様ではないでしょうか。大半の学生にとっては、大学教育は意味の少ないものになっていると思われます。

 勉強する意欲のない学生を4年間遊ばせてやるために膨大な費用が使われているわけです。背景に本来の学力より学歴を重視する風習にあるのは明らかですが、その結果、膨大な無駄が生じていることにもっと注意を向けるべきではないでしょうか。

 韓国では学歴信仰が日本以上とされ、進学率は8割にも達しているそうです。その点では先進国なのです。しかし教育費の負担は重く、それは1960年には約6であった合計特殊出生率が1.15(2009)のに低下した主な原因とされています。しかし学士様を大量生産しているにもかかわらず、残念ながら国民が教養に溢れ、世界の手本となるような社会になっているとは聞き及びません。

 個々の人がよい大学を目指すのは合理的な行動ですが、社会全体としては膨大な無駄を生じ、全体の利益にならないわけで、「合成の誤謬」と呼んでもよいでしょう。現在、私大の約半分が定員割れだそうで、無試験入学など様々な方法で学生をかき集めています。これは大学教育に向かない大学生が増えることにつながります。

 学歴はお手軽な評価基準として便利であり、ある程度の有効性があるので一部で生き残っているわけです。長年の慣習でもあってすぐに消えそうにありません。学力の評価なら、より強力な評価基準を作るという手もあります。統一された卒業試験を実施し、一定以下の成績者には卒業資格を与えない、あるいは卒業試験のランクを証明するものを発行するとか、いろいろ考えられます。簡単ではないですが、解決すれば高い学費や少子化問題を解決する一助になると思います。

 マスメディアが私立大学のあり方を批判することはほとんどありません。私大は記者の定年後の有力な再就職先であることを考えると、つい筆先が鈍るのかもしれません。もしそうであれば、この不合理な構造を改めようとする動きが大きな潮流になることは期待できません。

嘘つき新聞は健在?

2016-08-01 09:06:44 | マスメディア
 一昨年、朝日新聞は慰安婦や福島第一原発における虚偽報道が明確になり、世界に向かって謝罪をしました。それは「もう嘘はつきません」という意味であったと思います。また少数の幹部が辞任しただけで、大きな組織が変われるのかという問題にも興味がありました。三菱自動車のように何年かかってもビクともしない「不動」の組織もありましたから。

 ここに挙げる記事は経済に関心のない方にとっては、どうでもよい問題と思われるかもしれません。しかし朝日が従来通り、自分に都合のいいように事実を曲げて報道していないか、という観点からは大変興味深い記事です。

 7月26日、経済面に「貿易黒字でも輸出大幅減」という見出しの記事が載りました。財務省発表の1~6月の貿易統計を受けたものです。「東日本大震災の2011年1~6月以降、半期で初めて黒字に転じた。歴史的な原油安が主因で輸出は前年同期比で8.7%減と大きく落ち込んでおり、手放しでは喜べない内容だ」と見出しと同様、輸出大幅減を強調した悲観的な内容です。

 歴史的な原油安が主因で輸出が大きく落ち込むという説明も理解困難ですが、他紙の記事に含まれる重要な部分が抜けています。日経などによると、8.7%減というのは円建ての話であって、前年同期に比べて5.7%円高なので、輸出減の大部分は円高によって手取り額が減少した結果です。数量ベースでは6月は前月比で4.3%上昇し、4~6月期でみても2四半期ぶりにプラスに転じています。

 朝日の記事に誤った記述はないのですが、1~6月の後半、輸出数量が上昇しているという事実をすっかり伏せています。今後の見通しを得るうえで直近の動向は大変重要です。財務省の発表にも「足元の数量は回復してきている」という記述があり、これを伏せるのは意図的であるとの疑念を持たざるを得ません。

 朝日はアベノミクスや安倍政権がお嫌いのようで、恐らく経済がよくなることを望まないのでしょう。悪化すれば安倍内閣が不安定になり、その分、野党が有利になると期待しているのではないでしょうか。貿易統計まで歪曲して伝えるとはずいぶんセコイ新聞です。しかし、驚くことはありません。それは従来通りであり、「不動の姿勢」であっただけのことであります。

 朝日の経済面は従来から弱いというのが定評ですが、「弱い」に加えて、このような恣意的な加工・歪曲があるとすれば、信頼できるわけがありません。朝日の記事を読んで投資などをする方は失敗の可能性が高くなるのは間違いないでしょう。