メディアを見ている限り、食の不安が社会に大きく広がっているという印象を受けます。メディアによる大量報道、故意に不安を煽るような報道がその原因のひとつであることは間違いないと思います(参照)。
一方、情報を受けとる読者・視聴者は、農薬など毒性のあるものを僅かでも摂取すると、量に応じた影響があると考えていないでしょうか。少量なら小さい影響が、多量なら大きい影響があるという理解です。その理解が不安を高めているのかもしれませんが、実は少し違います。
一般の化学物質(*1)は一定量以下では影響を与えません。この量以下では一生涯毎日摂取しても、影響が出ないという量があり、無毒性量と呼ばれます。そして影響の出る境界を閾値(いきち)と呼びます。詳しくは製品評価技術基盤機構の解説をご覧ください。我々はダイオキシンなど、微量の毒物を日常的に摂取していますが、この仕組みのおかげで健康を維持できるわけです。
動物実験などで求められた無毒性量(mg/kg/日)を安全係数(100程度)で除して、つまり100分の1などにしてADI(許容一日摂取量、TDIと同じ)を求めます。食品に含まれる許容量はこのADIをもとにして決められるわけです。したがってかなりの量を摂取しない限り無毒性量の範囲に収まります。短期間の摂取ではさらに影響はありません。ギョーザ事件では大きく超えましたが、これは悪意のある犯罪で、他と同列に考えるべきものではないと思います。
前にも触れましたが、英国やドイツでは基準値を超過した場合、内容を評価して健康上問題がないとされれば回収は行わないそうですが、恐らく無毒性量の範囲に十分収まる場合なのでしょう。メディアが無毒性量の存在を読者にきちんと知らせていれば、不安はずいぶん小さいものになっていたと思います。もっともメディア自身がそれを正しく理解する必要があります・・・実はそれが大問題なのですが。
前に不安を煽る報道だと指摘したように(参照)、9月21日の朝日朝刊は今回のメラミンの日本での混入事件について『この種の化学物質は、多量に摂取した場合の症状以外に、慢性的な症状が現れる危険性がある』という、里見宏・健康情報研究センター代表の話を掲載しています。
それに対し、27日の朝刊には『専門家「健康影響なし」』と題して唐木英明東大名誉教授(毒性学)の、最大濃度のクリームパンダを50kgの人が1日約17個、一生食べ続けても問題のない計算になるというコメントを載せています。内容も、信頼性も前回とは違い、これなら十分納得がいきます。
ただ、一方で冷静な対応を呼びかけながら、同じ紙面に「また汚染 何食べれば」と大書し、不安に脅える市民の声をいくつも載せています。これでは不安を一層煽るだけで、冷静になれるわけがありません。必要以上の恐怖心を与えたのはメディア自身であり、ここには報道の結果に責任を持つという姿勢がまったく感じられません。この市民らは報道を信じ、素直に反応しているだけであり、そうした人々に誤解を与える行為は罪が深いと言わざるを得ません。
第三者のコメントと言っても新聞社の判断に基づいて掲載するものですから、選択は重要です。下心がないのであれば、公正さと信頼性を基準に選定すべきです。もっとも新聞にそれを判断できるだけの見識が必要です・・・これもまた難しいことのようですが。
(*1)発癌物質は閾値がないと考えられてきました。製品評価技術基盤機構の発ガン性の評価をご参照下さい。
一方、情報を受けとる読者・視聴者は、農薬など毒性のあるものを僅かでも摂取すると、量に応じた影響があると考えていないでしょうか。少量なら小さい影響が、多量なら大きい影響があるという理解です。その理解が不安を高めているのかもしれませんが、実は少し違います。
一般の化学物質(*1)は一定量以下では影響を与えません。この量以下では一生涯毎日摂取しても、影響が出ないという量があり、無毒性量と呼ばれます。そして影響の出る境界を閾値(いきち)と呼びます。詳しくは製品評価技術基盤機構の解説をご覧ください。我々はダイオキシンなど、微量の毒物を日常的に摂取していますが、この仕組みのおかげで健康を維持できるわけです。
動物実験などで求められた無毒性量(mg/kg/日)を安全係数(100程度)で除して、つまり100分の1などにしてADI(許容一日摂取量、TDIと同じ)を求めます。食品に含まれる許容量はこのADIをもとにして決められるわけです。したがってかなりの量を摂取しない限り無毒性量の範囲に収まります。短期間の摂取ではさらに影響はありません。ギョーザ事件では大きく超えましたが、これは悪意のある犯罪で、他と同列に考えるべきものではないと思います。
前にも触れましたが、英国やドイツでは基準値を超過した場合、内容を評価して健康上問題がないとされれば回収は行わないそうですが、恐らく無毒性量の範囲に十分収まる場合なのでしょう。メディアが無毒性量の存在を読者にきちんと知らせていれば、不安はずいぶん小さいものになっていたと思います。もっともメディア自身がそれを正しく理解する必要があります・・・実はそれが大問題なのですが。
前に不安を煽る報道だと指摘したように(参照)、9月21日の朝日朝刊は今回のメラミンの日本での混入事件について『この種の化学物質は、多量に摂取した場合の症状以外に、慢性的な症状が現れる危険性がある』という、里見宏・健康情報研究センター代表の話を掲載しています。
それに対し、27日の朝刊には『専門家「健康影響なし」』と題して唐木英明東大名誉教授(毒性学)の、最大濃度のクリームパンダを50kgの人が1日約17個、一生食べ続けても問題のない計算になるというコメントを載せています。内容も、信頼性も前回とは違い、これなら十分納得がいきます。
ただ、一方で冷静な対応を呼びかけながら、同じ紙面に「また汚染 何食べれば」と大書し、不安に脅える市民の声をいくつも載せています。これでは不安を一層煽るだけで、冷静になれるわけがありません。必要以上の恐怖心を与えたのはメディア自身であり、ここには報道の結果に責任を持つという姿勢がまったく感じられません。この市民らは報道を信じ、素直に反応しているだけであり、そうした人々に誤解を与える行為は罪が深いと言わざるを得ません。
第三者のコメントと言っても新聞社の判断に基づいて掲載するものですから、選択は重要です。下心がないのであれば、公正さと信頼性を基準に選定すべきです。もっとも新聞にそれを判断できるだけの見識が必要です・・・これもまた難しいことのようですが。
(*1)発癌物質は閾値がないと考えられてきました。製品評価技術基盤機構の発ガン性の評価をご参照下さい。