総選挙は民主党の圧倒的な勝利に終わりました。それを国民の判断の結果であると、そのままに評価するのは適切ではありません。2大政党制を意識して作られた小選挙区制ですが、それには議席数の差を増幅する効果があるからです。
小選挙区での得票率は民主党が47.4%、自民党が38.7%に対し、当選者は民主221、自民64となっています。得票の比は1.22倍ですが、当選者の比は3.45倍です。3.45倍の方にだけ注目すると状況を見誤ります。
それにしても1.22倍→3.45倍という増幅率は大き過ぎるように思われます。有権者の行動は気分に左右されることが多く、情緒的判断によるブレの大きさが小選挙区制の増幅作用によってさらに大きい変化を生み、ポピュリズムを加速するのではないでしょうか。民主党が掲げる衆院比例定数80削減は小選挙区の比重を増し、この傾向をさらに強めるものです。
得票差が1.22倍という数値は、今回の選挙では小選挙区制でなくても恐らく民主党が勝っていたことを示しています。小選挙区制は2大政党制の実現に必ずしも必要とは言えず、むしろその弊害に目を向けるべきでしょう。
31日付朝日新聞の社説には「小選挙区で自民党の閣僚ら有力者が次々と敗北。麻生首相は総裁辞任の意向を示した。公明党は代表と幹事長が落選した。代わりに続々と勝ち名乗りを上げたのは、政治の舞台ではほとんど無名の民主党の若手や女性候補たちだ」と書いています。これは投票行動が人物よりも、政党を中心に行われたことを示しています。
地方の利益を代表する人物を選出するというのが地方区の役割のひとつですが、それより政党の選択が優先されました。つまり政治家としての資質や能力をあまり問われることなく、当選した議員が多く生まれました。経験の乏しい多数の議員が国政を担うことには不安が残ります。このような状況で、意欲と能力に優れた政治家が育つのか、ちょっと心配になります。
文芸春秋9月号には渡辺恒雄氏の話が載っています。
『与謝野馨さんが、「中選挙区制のときは、有権者の15%の心に訴えることを言えば当選できた」と言っていました。つまり自分の信念の本当のところを言えたわけです。それが、小選挙区制で過半数をとろうとすると、より多くの有権者にいい顔をしなければならなくなった。だから、信念をもって自分の政策を語れる人が出にくくなってしまいました』
結果として民主党には党の力によって当選した、政治的能力が未知数の議員が多数生まれたわけですが、彼らの党内の発言力は弱いものとならざるを得ません。また選挙において党の公認は決定的な意味を持つので、中央に逆らうことは困難です。これらは党に中央集権的な性質を与えることにならないでしょうか。党幹部の統率力が強い組織は効率的である一方、独裁の可能性が高くなります。
今回の選挙は、小選挙区制の問題点を浮かび上がらせたということができます。とりわけ、優れた政治家を育てることは重要であり、国家百年の計と言えるでしょう。
小選挙区での得票率は民主党が47.4%、自民党が38.7%に対し、当選者は民主221、自民64となっています。得票の比は1.22倍ですが、当選者の比は3.45倍です。3.45倍の方にだけ注目すると状況を見誤ります。
それにしても1.22倍→3.45倍という増幅率は大き過ぎるように思われます。有権者の行動は気分に左右されることが多く、情緒的判断によるブレの大きさが小選挙区制の増幅作用によってさらに大きい変化を生み、ポピュリズムを加速するのではないでしょうか。民主党が掲げる衆院比例定数80削減は小選挙区の比重を増し、この傾向をさらに強めるものです。
得票差が1.22倍という数値は、今回の選挙では小選挙区制でなくても恐らく民主党が勝っていたことを示しています。小選挙区制は2大政党制の実現に必ずしも必要とは言えず、むしろその弊害に目を向けるべきでしょう。
31日付朝日新聞の社説には「小選挙区で自民党の閣僚ら有力者が次々と敗北。麻生首相は総裁辞任の意向を示した。公明党は代表と幹事長が落選した。代わりに続々と勝ち名乗りを上げたのは、政治の舞台ではほとんど無名の民主党の若手や女性候補たちだ」と書いています。これは投票行動が人物よりも、政党を中心に行われたことを示しています。
地方の利益を代表する人物を選出するというのが地方区の役割のひとつですが、それより政党の選択が優先されました。つまり政治家としての資質や能力をあまり問われることなく、当選した議員が多く生まれました。経験の乏しい多数の議員が国政を担うことには不安が残ります。このような状況で、意欲と能力に優れた政治家が育つのか、ちょっと心配になります。
文芸春秋9月号には渡辺恒雄氏の話が載っています。
『与謝野馨さんが、「中選挙区制のときは、有権者の15%の心に訴えることを言えば当選できた」と言っていました。つまり自分の信念の本当のところを言えたわけです。それが、小選挙区制で過半数をとろうとすると、より多くの有権者にいい顔をしなければならなくなった。だから、信念をもって自分の政策を語れる人が出にくくなってしまいました』
結果として民主党には党の力によって当選した、政治的能力が未知数の議員が多数生まれたわけですが、彼らの党内の発言力は弱いものとならざるを得ません。また選挙において党の公認は決定的な意味を持つので、中央に逆らうことは困難です。これらは党に中央集権的な性質を与えることにならないでしょうか。党幹部の統率力が強い組織は効率的である一方、独裁の可能性が高くなります。
今回の選挙は、小選挙区制の問題点を浮かび上がらせたということができます。とりわけ、優れた政治家を育てることは重要であり、国家百年の計と言えるでしょう。