ようやく大手メディアも医療崩壊を取り上げだしました。いつもながら何故かブームのように一斉にです。NHKも2月12日のニュースウォッチ9で、手術を止めた病院や、訴訟を起こされてそれまで築き上げたものを失った医師などを紹介し、訴訟リスクによって医療が防衛的・消極的になっている深刻な現状を訴えました。
珍しく医療側の立場を取り上げた点は評価できますが、スタジオに戻ってからの締めくくりがいけません。NHK社会部医療担当の山内昌彦デスク氏は医療崩壊の原因である訴訟の増加について次のように説明されました。
『患者が訴訟をするのは「原因を知りたい」と「再発防止につなげたい」という気持ちからです。医師の側はクレームを言う人が増えた、権利意識が高まったとか云いますが、医師側がしっかり説明してこなかったつけが訴訟の増加につながっているのです』
この説明では医師側が以前に比べ説明を十分しなくなったから、訴訟が増加したということになります。本当に医師側の説明が変ってきたのでしょうか。
逆に、医療側の説明はずいぶん丁寧になってきた印象があります。渡される薬にも説明書がついてくるのが普通になりました。このような流れの中で説明が不充分なために訴訟が増加したという医療担当デスク氏の解釈は理解不能です。事故の場合だけ説明が不充分になったということも考えられません。
医療事故に関する関する新聞記事の件数と医療不信の相談件数が強い相関関係にあったことはもうひとつの報道被害・・・医療崩壊を推進するマスコミ報道で述べましたが、報道が専門的な知識を欠いたまま、常に患者側に立ち、医療側を批判することに終始する結果、医療に対する不信が積み重なってきたと考えられます。その当然の結果としての訴訟の増加です。
医療側と患者側との関係が、信頼から敵対へと変化して来たことが訴訟増加の背景と見ることができます。また、患者は医療サービスを買う客であり、客だから強い立場で完全な仕事を要求できるという意識も影響しているでしょう。そこには医療は不完全なもの、やってみなければわからないリスクあるものという考えが希薄です。これらは常に患者や消費者の側に立つ報道と無縁ではありません。
もし医療担当デスク氏の解釈が正しいのなら、対策は医師側が患者に充分説明するだけでよい筈です。そんな簡単なことではないでしょう。現状把握が見当違いでは、まともな対策が出てくるわけがありません。
また患者側の訴訟動機を原因究明と再発防止に限定し、損害賠償や慰謝料の請求を除外していることも気になります。権利意識が高まったなどという医師側の説明を否定し、患者側の説明を鵜呑みにする偏りが感じられます。永年、患者側についたクセが抜けないのでしょうか。
訴訟増加の原因のひとつが医療事故報道であるとは認め難いでしょうが、だからといって医療側に責任を転嫁するのは見苦しいだけではなく、対策を誤るという結果につながります。これは医療崩壊という切迫した問題に対する認識に関することであり、重大です。
他に比して信頼できるメディアとされているNHKの、それもゴールデンタイムの看板番組での発言ですから影響は少なくありません。数千人の優秀な(筈の?)人間を擁するNHKの医療担当デスクというと最も医療問題に精通している方の筈です。勉強不足か能力不足かは知りませんが、それでこの程度の理解とは驚きます。
放送内容に関しては事前のチェックがあるのでしょうから、このデスク氏の見識レベルはNHKのレベルとも言えます。マスメディアは国民をリードする立場ですから、見当違いの理解をすると重大な不利益をもたらす可能性があります。
よい番組も多いNHKですが、番組を十分にチェックする仕組みを期待したいと思います。これに比べると、NHKの一部職員の不祥事など、ニュースとしての「華々しさ」はあるものの、些事に過ぎません。ごく一部の人間が手を染める不祥事はどの組織でもよくあることで、ゼロにするのは無理というものです。下手にゼロを目指せば、ジョージ・オーウェルが描いた「1984年」の超管理社会になるのがオチでしょう。
珍しく医療側の立場を取り上げた点は評価できますが、スタジオに戻ってからの締めくくりがいけません。NHK社会部医療担当の山内昌彦デスク氏は医療崩壊の原因である訴訟の増加について次のように説明されました。
『患者が訴訟をするのは「原因を知りたい」と「再発防止につなげたい」という気持ちからです。医師の側はクレームを言う人が増えた、権利意識が高まったとか云いますが、医師側がしっかり説明してこなかったつけが訴訟の増加につながっているのです』
この説明では医師側が以前に比べ説明を十分しなくなったから、訴訟が増加したということになります。本当に医師側の説明が変ってきたのでしょうか。
逆に、医療側の説明はずいぶん丁寧になってきた印象があります。渡される薬にも説明書がついてくるのが普通になりました。このような流れの中で説明が不充分なために訴訟が増加したという医療担当デスク氏の解釈は理解不能です。事故の場合だけ説明が不充分になったということも考えられません。
医療事故に関する関する新聞記事の件数と医療不信の相談件数が強い相関関係にあったことはもうひとつの報道被害・・・医療崩壊を推進するマスコミ報道で述べましたが、報道が専門的な知識を欠いたまま、常に患者側に立ち、医療側を批判することに終始する結果、医療に対する不信が積み重なってきたと考えられます。その当然の結果としての訴訟の増加です。
医療側と患者側との関係が、信頼から敵対へと変化して来たことが訴訟増加の背景と見ることができます。また、患者は医療サービスを買う客であり、客だから強い立場で完全な仕事を要求できるという意識も影響しているでしょう。そこには医療は不完全なもの、やってみなければわからないリスクあるものという考えが希薄です。これらは常に患者や消費者の側に立つ報道と無縁ではありません。
もし医療担当デスク氏の解釈が正しいのなら、対策は医師側が患者に充分説明するだけでよい筈です。そんな簡単なことではないでしょう。現状把握が見当違いでは、まともな対策が出てくるわけがありません。
また患者側の訴訟動機を原因究明と再発防止に限定し、損害賠償や慰謝料の請求を除外していることも気になります。権利意識が高まったなどという医師側の説明を否定し、患者側の説明を鵜呑みにする偏りが感じられます。永年、患者側についたクセが抜けないのでしょうか。
訴訟増加の原因のひとつが医療事故報道であるとは認め難いでしょうが、だからといって医療側に責任を転嫁するのは見苦しいだけではなく、対策を誤るという結果につながります。これは医療崩壊という切迫した問題に対する認識に関することであり、重大です。
他に比して信頼できるメディアとされているNHKの、それもゴールデンタイムの看板番組での発言ですから影響は少なくありません。数千人の優秀な(筈の?)人間を擁するNHKの医療担当デスクというと最も医療問題に精通している方の筈です。勉強不足か能力不足かは知りませんが、それでこの程度の理解とは驚きます。
放送内容に関しては事前のチェックがあるのでしょうから、このデスク氏の見識レベルはNHKのレベルとも言えます。マスメディアは国民をリードする立場ですから、見当違いの理解をすると重大な不利益をもたらす可能性があります。
よい番組も多いNHKですが、番組を十分にチェックする仕組みを期待したいと思います。これに比べると、NHKの一部職員の不祥事など、ニュースとしての「華々しさ」はあるものの、些事に過ぎません。ごく一部の人間が手を染める不祥事はどの組織でもよくあることで、ゼロにするのは無理というものです。下手にゼロを目指せば、ジョージ・オーウェルが描いた「1984年」の超管理社会になるのがオチでしょう。
このNHKの報道には、強い疑問を私も感じました。この4月から、後期高齢者医療制度、診療報酬の引き下げ、それに医療事故調査委員会の法案上程という、医療界にとっては激震ともなるべき変動が待ち受けています。そこで起きるであろう混乱、さらには医療の崩壊を、医師に負わせようという、官僚・政治家の意図を、医療現場にいると、ひしひしと感じます。
NHKのこの報道、さらに飯野奈津子さん(論説員でしたか)の論説番組の内容など、一連の医療関連番組は、その線に沿ったものなのではないかと想像しています。NHKとしての限界もあるのでしょうが、事実を曲げて報道することだけは止めて欲しいものだと思います。
今後とも、鋭い切り口での評論を期待しています。
NHKの誤認は認識・解析能力に起因するものと思っておりました。それに恣意的な要素が絡んでいるというご見解ですが、たしかに、誤認はあまりにも初歩的なものですから、その可能性があるかもしれません。
今後はそのような観点からも見ていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。