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原発の存廃は気分で決まる

2012-08-13 10:23:40 | マスメディア
 原発に反対、あるいは賛成かは、その人を知ればおおよその見当がつきます。実際に被害に遭われた方は別ですが、例えば社民党の福島みずほ氏や共産党の志位和夫氏が原発に賛成することはちょっと想像できません。社民党や共産党なら原発に反対であろうと容易に予想できます。それは両党が体制に批判的な人々の不満を養分にして生きてきた政党であるからです。そのため、掲げる主張がいかに非現実的であっても一定の支持が得られてきたわけです(少数ですけれど)。何でも反対はその意味では合理的な戦法なのでしょう。

 一方、原発を支持するのは経済界の人や、経済成長が何よりも大切と考えているような人が多いようです。多少の危険より豊かな生活、つまりより多くのカネを優先する人たちと言ってよいでしょう。

 大雑把に言うと、反対派に特徴的なものは現在の社会に対する批判的態度、環境ホルモン問題に見られるような危険性に対する過敏な反応、総じて悲観的な見方、非現実性などが挙げられます。支持派には経済重視、物質文明の肯定、楽観性などが挙げられるでしょう。つまり多くの人にとって、原発に対する反対や支持の気持ちは既定のものであって、原発の利点と危険性を十分検討した上での結論ではないということを言いたいわけです。

 反対派はすでに反対の態度を決めた上で、仲間の反対論に耳を傾け、より硬直的、非妥協的な方向に進む傾向があります。これは支持派も同様であり、両者の対立は深まることはあっても解消することはなかなか期待できません。このような状況では、冷静な議論は困難であり、決定は情緒的な理由や「時の勢い」に左右されます。これは原発だけでなく、他の二項対立の状況に於いても見られることであり、一般化してよいと思います。

 「昭和16年夏の敗戦」という猪瀬直樹氏の本があります。昭和16年夏、つまり日米開戦直前、各分野から集られた若手エリートたちによって構成された内閣直属の機関、総力戦研究所がシミュレーションを重ねて出した日米戦争の予測は日本の敗戦であり、その経過も実際とほぼ同じであったと、ここに書かれています。

 そして東条英機はこの総力戦研究所の結論を無視し、開戦へと踏み切ります。東条の頭は既に開戦に決まっていて、総力戦研究所の結論に従う気など初めからなかったと思われます。日米開戦というまことに重大なことが、綿密なシミュレーションによる予測も考慮されず、東条や陸軍の感覚的・情緒的判断によって決定されたと見ることができです。

 原発を将来どうするかという問題は開戦ほどには重要ではないにしても、好き嫌いや気分で判断してよいほど軽い問題ではありません。いま目立つのは反対派による主張ですが、危険性など反対側の挙げる根拠は誇張したものが多いという印象があり、どれが信頼できどれが信頼できないのか判然としません。

 電力コストやエネルギー安全保障の問題、CO2排出問題、原発の事故率、放射性廃棄物処理問題、これらを一つひとつ評価して全体を総合評価することは簡単ではなく、ある程度の誤差も避けられません。しかし少なくとも好き嫌いや気分で、あるいは事故後の「時の勢い」で決めるよりもずっとマシでしょう。


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