普天間の移設先を「最低でも県外」と高らかに宣言された鳩山元首相はそのために日米関係を大きく損ね、自らも墓穴を掘る結果となりました。玄葉外相は26日の衆院外務委員会で「最低でも県外という発言は誤りだった」と答弁したことは当然のことで、正しいと思っている人などどこにもいないでしょう。
ところが、野田首相は玄葉氏の発言について「間違っていた。申し訳ない」と鳩山氏に謝罪したそうであります。野田氏首相が玄葉氏の発言を「間違っていた」と否定したわけですから、野田氏は「最低でも県外」発言を肯定していることになります。
野田氏が「最低でも県外」は正しいと本心から思っておられるとは考えられません。もしそうなら「県内移設」を進めていることと矛盾します。したがって野田氏の鳩山氏に対する謝罪は「筋」を曲げてまでの「お追従」、つまり見え透いたゴマすりと映ります。
「最低でも黙っているべき」ことを、首相はわざわざ取り上げて謝罪しました。一議員に対する卑屈ともいえる態度を見ると、野田首相は道理や理念よりも目先の融和や迎合を優先する考えの持ち主であることが推定できます。政治家としての理念や具体的な方向性が見えにくいのはもともと理念がないためではないかと思われます。
具体的に言うと、どの流れがもっとも強いかを見て、強い方に従うという行動様式です。ドジョウより、骨がなく波間に漂うクラゲがふさわしいと思います。自ら決めた公務員宿舎の建設を流れによって中止した例はその現れでしょう。TPPの場合も参加を実質的に決めるのは野田首相の決断ではなく、流れの強さ(声の大きさ)だと思われます。
本題から外れますが、ご参考までにその流れを知る上で役立ちそうな毎日新聞のスクープ記事(10/28)を引用しておきます。政府の手の内がわかる、たいへん興味深いものです。
毎日の記事は政府の内部文書が漏れたとされるもので、野田政権がTPP参加を急ぐ事情がわかります。TPP参加の主な理由として米政府へ迎合、野田政権の人気に対する影響、来るべき選挙へ配慮などが挙げられています。また日本国益よりも党益と米国の利益に配慮しているという印象を受けます。(青字は引用部)
◇政府のTPPに関する内部文書(要旨)
▽11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で交渉参加表明すべき理由
・米国がAPECで政権浮揚につながる大きな成果を表明するのは難しい。日本が参加表明できれば、米国が最も評価するタイミング。これを逃すと米国が歓迎するタイミングがなくなる
・交渉参加時期を延ばせば、日本は原加盟国になれず、ルールづくりに参加できない。出来上がった協定に参加すると、原加盟国から徹底的な市場開放を要求される
・11月までに交渉参加を表明できなければ、交渉参加に関心なしとみなされ、重要情報の入手が困難になる
・韓国が近々TPP交渉に参加する可能性。先に交渉メンバーとなった韓国は日本の参加を認めない可能性すらある
▽11月に交渉参加を決断できない場合
・マスメディア、経済界はTPP交渉参加を提案。実現できなければ新聞の見出しは「新政権、やはり何も決断できず」という言葉が躍る可能性が極めて大きい。経済界の政権への失望感が高くなる
・政府の「食と農林漁業の再生実現会議」は事実上、TPP交渉参加を前提としている。見送れば外務、経済産業両省は農業再生に非協力になる
・EU(欧州連合)から足元を見られ、注文ばかり付けられる。中国にも高いレベルの自由化を要求できず、中韓FTA(自由貿易協定)だけ進む可能性もある
▽選挙との関係
・衆院解散がなければ13年夏まで国政選挙はない。大きな選挙がないタイミングで参加を表明できれば、交渉に参加しても劇的な影響は発生しない。交渉参加を延期すればするほど選挙が近づき、決断は下しにくくなる
▽落としどころ
・実際の交渉参加は12年3月以降。「交渉参加すべきでない」との結論に至れば、参加を取り消せば良い。(取り消しは民主)党が提言し、政府は「重く受け止める」とすべきだ
・参加表明の際には「TPP交渉の最大の受益者は農業」としっかり言うべきだ。交渉参加は農業強化策に政府が明確にコミットすることの表明。予算も付けていくことになる
あとで参加を取り消すという落としどころまで書いているのが面白いのですが、そんな米国への裏切りが可能なのでしょうか。米政府にもきっと漏れているでしょう。情報管理のお粗末さも一流です。
この政府の手の内を示した内部文書はスキャンダラスなもので、メディアが飛びついて騒いでもよさそうなものであるにもかかわらず、そんな気配はありません。それは内部文書に書かれている通り、主要メディアがTPPに賛成していることを示すものでしょう。メディアが複雑なTPPをよく理解した上で賛成しているのならよいのですが。
ところが、野田首相は玄葉氏の発言について「間違っていた。申し訳ない」と鳩山氏に謝罪したそうであります。野田氏首相が玄葉氏の発言を「間違っていた」と否定したわけですから、野田氏は「最低でも県外」発言を肯定していることになります。
野田氏が「最低でも県外」は正しいと本心から思っておられるとは考えられません。もしそうなら「県内移設」を進めていることと矛盾します。したがって野田氏の鳩山氏に対する謝罪は「筋」を曲げてまでの「お追従」、つまり見え透いたゴマすりと映ります。
「最低でも黙っているべき」ことを、首相はわざわざ取り上げて謝罪しました。一議員に対する卑屈ともいえる態度を見ると、野田首相は道理や理念よりも目先の融和や迎合を優先する考えの持ち主であることが推定できます。政治家としての理念や具体的な方向性が見えにくいのはもともと理念がないためではないかと思われます。
具体的に言うと、どの流れがもっとも強いかを見て、強い方に従うという行動様式です。ドジョウより、骨がなく波間に漂うクラゲがふさわしいと思います。自ら決めた公務員宿舎の建設を流れによって中止した例はその現れでしょう。TPPの場合も参加を実質的に決めるのは野田首相の決断ではなく、流れの強さ(声の大きさ)だと思われます。
本題から外れますが、ご参考までにその流れを知る上で役立ちそうな毎日新聞のスクープ記事(10/28)を引用しておきます。政府の手の内がわかる、たいへん興味深いものです。
毎日の記事は政府の内部文書が漏れたとされるもので、野田政権がTPP参加を急ぐ事情がわかります。TPP参加の主な理由として米政府へ迎合、野田政権の人気に対する影響、来るべき選挙へ配慮などが挙げられています。また日本国益よりも党益と米国の利益に配慮しているという印象を受けます。(青字は引用部)
◇政府のTPPに関する内部文書(要旨)
▽11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で交渉参加表明すべき理由
・米国がAPECで政権浮揚につながる大きな成果を表明するのは難しい。日本が参加表明できれば、米国が最も評価するタイミング。これを逃すと米国が歓迎するタイミングがなくなる
・交渉参加時期を延ばせば、日本は原加盟国になれず、ルールづくりに参加できない。出来上がった協定に参加すると、原加盟国から徹底的な市場開放を要求される
・11月までに交渉参加を表明できなければ、交渉参加に関心なしとみなされ、重要情報の入手が困難になる
・韓国が近々TPP交渉に参加する可能性。先に交渉メンバーとなった韓国は日本の参加を認めない可能性すらある
▽11月に交渉参加を決断できない場合
・マスメディア、経済界はTPP交渉参加を提案。実現できなければ新聞の見出しは「新政権、やはり何も決断できず」という言葉が躍る可能性が極めて大きい。経済界の政権への失望感が高くなる
・政府の「食と農林漁業の再生実現会議」は事実上、TPP交渉参加を前提としている。見送れば外務、経済産業両省は農業再生に非協力になる
・EU(欧州連合)から足元を見られ、注文ばかり付けられる。中国にも高いレベルの自由化を要求できず、中韓FTA(自由貿易協定)だけ進む可能性もある
▽選挙との関係
・衆院解散がなければ13年夏まで国政選挙はない。大きな選挙がないタイミングで参加を表明できれば、交渉に参加しても劇的な影響は発生しない。交渉参加を延期すればするほど選挙が近づき、決断は下しにくくなる
▽落としどころ
・実際の交渉参加は12年3月以降。「交渉参加すべきでない」との結論に至れば、参加を取り消せば良い。(取り消しは民主)党が提言し、政府は「重く受け止める」とすべきだ
・参加表明の際には「TPP交渉の最大の受益者は農業」としっかり言うべきだ。交渉参加は農業強化策に政府が明確にコミットすることの表明。予算も付けていくことになる
あとで参加を取り消すという落としどころまで書いているのが面白いのですが、そんな米国への裏切りが可能なのでしょうか。米政府にもきっと漏れているでしょう。情報管理のお粗末さも一流です。
この政府の手の内を示した内部文書はスキャンダラスなもので、メディアが飛びついて騒いでもよさそうなものであるにもかかわらず、そんな気配はありません。それは内部文書に書かれている通り、主要メディアがTPPに賛成していることを示すものでしょう。メディアが複雑なTPPをよく理解した上で賛成しているのならよいのですが。
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