のち
「くじけないで」
柴田トヨ
飛鳥新社
詩とファンタジーで紹介された柴田トヨさんの処女詩集。
母
亡くなった母とおなじ
九十二歳をむかえた今
母のことを思う
老人ホームに
母を訪ねるたび
その帰りは辛かった
私をいつまでも見送る
母
どんよりとした空
風にゆれるコスモス
今もはっきりと覚えて
いる
母が調子悪くなり始めた頃に実家から帰るとき、木枯らし吹く中、見送りに出てきた母を思い出す。
「いいよ、中に入ってて」
「いいの、見送りたいんだから」
バックミラーにずっと映っていた…
あなたに Ⅰ
出来ないからって
いじけていてはダメ
私だって 九十六年間
出来なかった事は
山ほどある
父母への孝行
子供の教育
数々の習いごと
でも 努力はしたのよ
精いっぱい
ねえ それが
大事じゃないかしら
さあ 立ちあがって
何かをつかむのよ
悔いを
残さないために
あなたに Ⅱ
追いかけて
愛した人を
苦しめるより
忘れる勇気を
持つことが 大切よ
後になると
それがよくわかるの
あなたのこと
心配してくれる
人がいる
あなた気づかないだけ
全部90歳を過ぎてからの作品です。
身体の衰えとは裏腹にみずみずしい感性は変わらない…
そして余計なものは忘れることで削ぎ落とされ…
だけど、本当の寂しみも知る…
「九十八歳でも恋はするのよ」
という詩もありました。
未知の世界~老いていくことに勇気が湧いてくる、一つのお手本です。
「くじけないで」
柴田トヨ
飛鳥新社
詩とファンタジーで紹介された柴田トヨさんの処女詩集。
母
亡くなった母とおなじ
九十二歳をむかえた今
母のことを思う
老人ホームに
母を訪ねるたび
その帰りは辛かった
私をいつまでも見送る
母
どんよりとした空
風にゆれるコスモス
今もはっきりと覚えて
いる
母が調子悪くなり始めた頃に実家から帰るとき、木枯らし吹く中、見送りに出てきた母を思い出す。
「いいよ、中に入ってて」
「いいの、見送りたいんだから」
バックミラーにずっと映っていた…
あなたに Ⅰ
出来ないからって
いじけていてはダメ
私だって 九十六年間
出来なかった事は
山ほどある
父母への孝行
子供の教育
数々の習いごと
でも 努力はしたのよ
精いっぱい
ねえ それが
大事じゃないかしら
さあ 立ちあがって
何かをつかむのよ
悔いを
残さないために
あなたに Ⅱ
追いかけて
愛した人を
苦しめるより
忘れる勇気を
持つことが 大切よ
後になると
それがよくわかるの
あなたのこと
心配してくれる
人がいる
あなた気づかないだけ
全部90歳を過ぎてからの作品です。
身体の衰えとは裏腹にみずみずしい感性は変わらない…
そして余計なものは忘れることで削ぎ落とされ…
だけど、本当の寂しみも知る…
「九十八歳でも恋はするのよ」
という詩もありました。
未知の世界~老いていくことに勇気が湧いてくる、一つのお手本です。