1964年
5連勝と上り調子の南海を中西とソロムコでねじ伏せた。前半3点をとられながら、四回以後十一回まで一安打におさえた中西は興奮をおさえ切れぬよう。「前半打たれたのが気にいらなかった。後半はこのヤロウと思ってカッカしながら投げた。勝てたんでほんとうにスッとしたよ」カーブ、シュート、フォークボール、スライダー、もっている球を全部投げたという。「オレ、きょうだけは延長が何回になろうと最後まで投げるつもりだった。そして勝たなくてはオレの気がすまんかった」試合後もずいぶん時間がたっているのにまだマウンドと同じけわしい表情のままだ。三月二十八日以来勝ち星がなく、そのうえ手首を痛めたりしたため、加奈子夫人が縁起をかついで賀津子と名をかえたりしていた。「女房のおかげさ」中西はそういって初めて笑いくずれた。ソロムコは「シュートだった。ボールかもしれない。ちょっとつまったけど、力なら負けないよ」毛むくじゃらのふとい腕に力コブをつくってみせた。「ボクはみんなカーブで外角をついてくる。だから右に打つように心がけていた。そうしたら内角にシュートだ。夢中で打ったよ。決勝打は久しぶりだ」いままでヒーローになってもテレて逃げまわっていたがこの日は自分から話した。サヨナラの場面を見ていなかった小山が「どんな当たりだった?」ときくとソロムコは「痛烈なライナー、文句なしのサヨナラ安打だ」と大いばりだった。
5連勝と上り調子の南海を中西とソロムコでねじ伏せた。前半3点をとられながら、四回以後十一回まで一安打におさえた中西は興奮をおさえ切れぬよう。「前半打たれたのが気にいらなかった。後半はこのヤロウと思ってカッカしながら投げた。勝てたんでほんとうにスッとしたよ」カーブ、シュート、フォークボール、スライダー、もっている球を全部投げたという。「オレ、きょうだけは延長が何回になろうと最後まで投げるつもりだった。そして勝たなくてはオレの気がすまんかった」試合後もずいぶん時間がたっているのにまだマウンドと同じけわしい表情のままだ。三月二十八日以来勝ち星がなく、そのうえ手首を痛めたりしたため、加奈子夫人が縁起をかついで賀津子と名をかえたりしていた。「女房のおかげさ」中西はそういって初めて笑いくずれた。ソロムコは「シュートだった。ボールかもしれない。ちょっとつまったけど、力なら負けないよ」毛むくじゃらのふとい腕に力コブをつくってみせた。「ボクはみんなカーブで外角をついてくる。だから右に打つように心がけていた。そうしたら内角にシュートだ。夢中で打ったよ。決勝打は久しぶりだ」いままでヒーローになってもテレて逃げまわっていたがこの日は自分から話した。サヨナラの場面を見ていなかった小山が「どんな当たりだった?」ときくとソロムコは「痛烈なライナー、文句なしのサヨナラ安打だ」と大いばりだった。