プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

渡辺泰輔

2016-12-23 09:45:27 | 日記
1966年

大リーグの名監督だったステンゲル(ヤンキース、メッツ)は、優勝のための三種の神器にあたるものをこういっている。「ストッパーと、リリーフ・エースと、代打の切り札だ」この試合には負けられないというときに、先発させて勝てる目やすのつく投手がストッパー。西鉄最終戦の完封をはじめ、渡辺は後半戦の決定的な一番にはみんな登板している。ペナント・レースのストッパーは、日本シリーズのストッパーにもなった。「第一戦は名刺がわりみたいなピッチング(28球)だったでしょう。きょうは投げたいと思っていました」汗の顔を西日に照らされてお立ち台にあがった渡辺はいった。だが、その彼も前夜はさすがに荒れ模様だった。「・・・心はやみさ。外は雨」いつも行くおにぎり屋さんは宿舎の近くの小路にある。その細い通路に妙な節のついた渡辺の声が聞こえた。それから約十二時間後。試合前、宿舎の鶴岡監督の部屋で「どや、タイスケ、もう一回いくか」といわれたとき「ありがとうございます。お願いします」と笑ったムードとはだいぶ違う。杉浦はそこに大物の片りんがあるといった。「またやられるかと不安をもつ選手はダメだ。こんどこそはと押し込んでいくのがエースだ」気分的には第一戦とはまったく違ったそうだ。「直球がのびたし、コントロールもあったから。パームボールは何球投げたか覚えていない。一回の王の三振?あれはカーブです」野村はパームボールがきまらないから、直球、シュートで押した、と補足した。「柴田にツー・ナッシングと追いこみながら三度も打たれるなんて、バカですね。ホームランは、はずそうかどうかと中途はんぱにほうった直球ですから・・・」悪びれずにスラスラといった。鶴岡監督は一度は林、皆川の先発も考えたらしい。だが「渡辺は連投の方がいいピッチングをする」といった松井コーチの意見も取り入れ、本人にただした。「そのときはね返ってきたタイスケの声でワシの腹はきまったわ」と鶴岡監督はいっている。「巨人の打線がいいか悪いかなど観察する余裕はありませんよ。自分のピッチングが満足にできるかどうか、それでいっぱいでした」(渡辺)公式戦と比較して河村英文氏は「カーブもよかったし、調子はかわらなかった。リラックスすればこれだけ投げられるということだ」といっている。日本ではストッパーとリリーフ・エースを兼務できることがエースの資格になっている。稲尾(西鉄)杉浦(南海)らもみんなそうだった。逃げ込みでもいいピッチングができるようになることが、渡辺の来シーズンの課題だ。その条件はバックスの信頼度。その点「第一戦でやられてもすぐにまたいいピッチングをして盛り返した。ナインの目がタイスケに集中してきている。このような大試合でそれをやったことは飛躍するために大きなプラスだ」と私はみている。
コメント
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