プロ野球 OB投手資料ブログ

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リベラ(阪神)

2024-12-24 09:14:49 | 日記
1998年
やっぱり怪人だった。来日初投球ながらウォームアップは3球だけ。曇り空で風が舞うという、決していい条件ではなかったが、リベラは捕手を座らせ、自慢の剛球を次から次へと投げ込んだ。その姿は巨人のガルベスそっくり。今冬、ドミニカ・リーグは登録だけで一度も登板しなかった男のパフォーマンスに、ブルペンが揺れた。あるときは球が上ずり大暴投。ホームベース前でワンバウンドすることもあった。だが、スピードはピカ一。捕手役を務めた定詰が「ほかの投手のボールの縫い目が見えたくらいだよ」と、その速さに驚くほど。スピードガンこそ持ち込まれていなかったが、140㌔以上の剛球だったのは間違いない。直球だけでなく、変化球を惜しげもなく披露。本人が「スライダー」と言った球は、定詰によれば「シュート回転していた」というナゾの魔球。日本人の常識では計り知れない球を、この助っ人は連発したわけだ。しかしリベラは「ブルペンでいい球を投げても仕方ない。感触をつかむだけなんだよ」とそっけない。そんな快投劇のあと、今度は思いもよらない弱点をさらけ出した。「僕はこれだけの報道陣に囲まれることなかったから、大変気を使っているんだ…」女の子のような、か細い声で、超神経質な性格を暴露したのだ。身長2㍍の大男は、実は気が小さかった。大勢の報道陣に取り囲まれると、ただですら聞こえにくい声が時間とともに、さらに小さくなっていった。「たぶん明日も投げる。でも分からない…。」大柄な体格に似合わない声は生まれついてのものにしろ、ハッキリしない態度はどうも気に掛かる。前夜(二日)に行われた吉田監督との食事会でも、一枝ヘッドから「ビールでも飲めや」と声を掛けられたが、一番端に座ったリベラは「いや、コーラでいい…」と小声で答えたとか。オフを過ごしたマイアミでは、ほとんどキャッチボールもせず来日。五分にも満たない力で見せた力強い投球には期待が膨らむが、内気な性格がどう影響するか。他球団と対戦するオープン戦で、本当のリベラがみられる。それまでは怪人の正体はだれにも分からない。


身長2㍍の怪人が悠然とマウンドに上がった瞬間、スタンドのざわめきがひときわ大きくなって、甲子園全体を揺るがせた。オープン戦初登板。いや、キャンプを通じて実戦初登板だった。スタンドの虎投も、ネット裏の他球団スコアラー陣も「動く怪人」をナマで見るのは初めて。異様な緊張感が漂った六回表、リベラは遠慮がちに、実力のほんの一部を披露した。先頭・清水への初球。内角胸元を通過した速球が捕手・矢野輝のミットにドスンという音とともに収まると、三塁側ベンチのミスターが思わず口を開けた。145㌔底冷えの天候も関係ない。巨体から投げ下ろした速球は、まるで凶器のようなもの。清水は131㌔のスライダーで二ゴロに倒れ、リベラの怪人伝説の幕が鮮烈に上がった。「最初の登板とすれば良かったよ。巨人打線?日本に来たばかりだから、だれがいい打者か分からないんだ」こんな調子だから、長嶋監督自慢の強打線も関係ない。渡辺には右中間二塁打を許したが、四番清原をスライダーで三ゴロ、代打・広沢も空振り三振に仕留めた。猛者二人を簡単に料理し、お披露目式を無難に終えた。手がかじかむような寒さの中で、リベラの速球はMAX146㌔を計時した。」怪人を除けば、この試合のMAXは巨人・趙の144㌔。「コリアン・エクスプレス」と呼ばれる男を、初登板であっさり上回った。

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