3日前、茨城で高校の教師をしている友人から、
「金曜日に池袋で飲む」とメールがあった。
2年ぶりだったので嬉しかった。
そのときに来るもう1人の友人と連絡をとってくれ、ということだった。
作業所で仕事が終わった5時10分、送迎に出る前に電話した。
「今から所沢駅まで送迎に行くのでケータイに出られない」
「5時過ぎ、飲む所を連絡する」と前日メールがあったのだ。
プラダーウィリー症候群の22歳の女の子、
37歳のダウン症の男性、
自閉症の…?、いくつだったかな、21、2歳の男の子、
32歳の知的障害者、42歳の小児麻痺で車いすの男性。
5人を乗せて8人乗りのワゴン車のギアをDにした。
ハナキンの浦所(ウラトコ)バイパスは混んでいる。
助手席のプラダーウィリーの子がいろいろ話しかけてくる。
「明日は、オギワラさん休み?」
「休みだよ」
「芋煮会来ないの?」
「休みだもん、行かないよ。歯医者はどこにあるの?」
彼女は、5時半に歯医者の予約をしているという。
「………」
「東所沢駅の前、先?」
「………」
「湯の森(スーパー銭湯)の前?、先?」
「そのむこう」
「イノマタくんの住むあたり?」
「そこまで行かない」
「湯の森あたりでいい?」
「さとれーぜ」
「シャトレーゼ? ケーキ屋さんの?」
「そう」
「じゃ、そのあたりで降ろすから自分で行って」
所沢駅に着く。
ハッチバックドアを開けて、車いすを降ろし、
小児麻痺のKさんが車から降りる補助をする。
いすの取っ手を軽く押し、
「お疲れ様、また月曜日にな」
彼は、アパートのほうではなく、駅の方角に向かった。
彼なりの“ハナキン”があるのだろう。
ダウン症のSさんに、「明日は休み?」と訊く。
「休みで~す」おどけて右手を上げる。
まるで小学生だ。かわいい。
彼を初めて見る人だったら気持ち悪いと思うだろう。
でも、私とすればとっても“チャーミング”だ。
作業所に戻り、連絡帳に明日の仕事のことを書いた。
自分の車に乗る。
市場の出口近くの自販機で缶コーヒーを買う。
温かいのがない。冬になったというのに全部冷たい。
自販機会社の担当者の気が知れない。
車の中で、私はうきうきしていた。
高校時代の友だちにこうして会える。とても幸せなことだ。
話したいことがいっぱいある。
信号の赤がかったるかった。
家に着き、昨日書いておいた九想話を更新して家を出る。
飲んで帰りが遅くなったら九想話を書く気もしない。
そう思って昨日書いておいたのだ。
新所沢駅のホームでメールを書いた。
「19:39 の電車に乗る。そちらに9時前に着くと思う。
遅くなって申し訳ないが待っていてくれ」
所沢駅に着く頃、池袋行きの特急があると車内放送があった。
それに乗れば10分は早く着くはずだ。
特急券売り場を探しているとき、ケータイが鳴った。
あわてて電話に出ると、友人だった。
「今日はやめよう。おれたち、6時から飲んでる。
もう出来上がっちゃってる」
昨日、九想庵のトップページに、
「今から、東京で友人たちと会うので、
今日は、早めに更新しました。」
と書いたが、会えなかった。
私の幸せなんてこんなものだ。
いつも水の泡となって消えていく。