シリア渡航計画を立て公安警察から事情聴取を受けた
学生の言い分に、さもありなんとも思いつつ残念すぎて
悲しい。
戦場で死ぬことについてどう思うか? との質問に
「どうせ1、2年のうちに自殺するかと思っているので
どこで死のうと同じことじゃないかと思った」と答えて
いる部分である。
甘ちゃんだともバカモノだとも言えない。
おそらく、思いつきではなくて本音であろうかと思う。
かわいそうなことだと思う。
発覚して止めてもらって、よかったね、と思うのである。
彼のそばに「生きよ」とひっぱってくれる神さまの
お使いがいて、ひらひらしているらしい。
ひらひらの波が彼の中の暗がりまで届くには、他に何が
あればいいのか。
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まだ子どもだったころ、あまり言葉を知らなかったころ、
ひらひらはもっとたくさん彼の周りを飛んでいたことを
思い出してくれないだろうか。
人は歳を重ねて利口になる一方で、忘れものをしていく。
自分が誰かを忘れて他の何者かにあこがれたりもする。
そして、帰る場所などはじめからないのだなどと
ふてくされ、迷子を志願する。おろかないきものだ。
現実逃避と漢字四文字でひと括りにされたりする。
後付の話は次々に出てくるだろう。
ゲーム好きで殺戮や暴力など歪んだ嗜好等々。
人の内面はもっと複雑で奥深いのに。
それでも、ただ一つ、ひらひらから伸びた紐をつかんで
離さなければチャンスはある。
誰に教わるわけでもなく持っている。
頭で考えても決してわからない明日への縁を繋ぐ紐。
目には見えないけれど、魂はそっと、今日もひらひら
やわらかな波を送るはずだ、迷い子の彼らに。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/0a/10460ef30f723796ee9261577efb9198.jpg)
先日ひさかたぶりに会った三才上の姉がふいに言った。
「生きててよかったじゃない、こんな日がくるなんて、ね」
姉は覚えていた。ふいをつかれて口ごもってしまった。
姉の愛をとても感じたが、何も言えなかった。
そうね、くらい言えばよかったか?
アホな妹はデパ地下のスイーツのショーケースに目を向け
ねえ、お姉ちゃんはどれにする? と尋ねた。
わたしのひらひらは、とても多くの愛を運んでくれた。
愛と愛はつながっていき、わたしは生き延びてきた。
毎日そのことを思わない時はない。
いつからか、愛されるより愛する人になり、悲しみも
その分増えたけれど、ひらひらがまた運んでくれるから
だいじょうぶだ。
悲しい日には目を瞑り、ひらひらと遊ぶ