若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

農村を動かす原動力は、農業生産にあらず

2009年01月07日 | 政治
福岡県ホームページ 平成19年度福岡県食料・農業・農村の動向(県農業白書)
「県農業白書(県農業の概要)」より抜粋
農家戸数  74,976戸
 販売農家  54,515戸
  主業農家  12,921戸
  準主業農家 10,590戸
  副業的農家 31,004戸
 自給的農家 20,461戸

耕地面積   88,300ha
 水田面積   68,900ha
1戸当たり平均耕地面積 117.8a

農作物作付延べ面積 99,500ha
 水稲作付面積    40,000ha

農業産出額 2,116億円
 米     363億円



農林水産省/農業関連用語より
・主業農家とは、農業所得が主(農家所得の50%以上が農業所得)で、65歳未満の農業従事60日以上の者がいる農家をいう。
・準主業農家とは、農外所得が主で、65歳未満の農業従事60日以上の者がいる農家をいう。
・副業的農家とは、65歳未満の農業従事60日以上の者がいない農家をいう。



1町(10反)≒1ha(100a)

水稲作付面積1haあたり907,500円(=363億円 ÷ 40,000ha)
すなわち、1町の田を作った米農家の農業収入は90万円くらいということになる。
その内訳を予想するに、

 1反あたり米7俵の生産
 米1俵あたりの値段が1万3千円
 1町(10反)で米70俵
 70俵×1万3千円=91万円

・・・といった感じになるだろう。

ちょっと前に、『年収300万時代を生き抜く~』なんて本が出ていた。ここで、300万円を「自分と家族を養うに足る最低限の年収」と仮に設定する。1町そこらの田を持っていても、この300万円には到底届かない。4町あって、独立した農家としてのスタートラインに初めて立てることになる。(4町はあくまでもスタートライン。燃料や肥料等を考えると、これでも難しいか。)

一方、1戸当たり平均耕地面積は 117.8a 。農家一軒の耕地が、平均して1町2反弱ということだ。これでは生計は成り立たない。生計どころか、下手したら農業収支が赤字となり、生活の足を引っ張ることだってあり得る。

その昔、農業は日本人の生計を支える主要産業だった。ところが、今の農村の存立を支えているのは農業以外の収入だ。多くの農家にとって、農業は生活を支える産業ではなく、ノスタルジーの象徴となっている。俗っぽく言えば趣味でしかない。多くの農家は、サラリーマンの給料や年金で生計を立てるかたわら、たまたま農村に生まれ、相続した農地があるため、農地を耕しているにすぎない。

農業以外の収入が途絶えれば、その農村は息絶える。
限界集落?潔く滅びれば良い。


さて。

派遣解雇を初めとする雇用問題について「恒常的に人手不足な農村で、失業者を吸収すれば良い」と主張する人がいる。しかし、農村は外部からの収入で成り立っている。外部に養ってもらってきた農村が、その外部であぶれた失業者を養うことができるとは思えない。農村の生命線は外部にあり。そもそも、外部の失業者を吸収できるなら、もっと主業農家が多いはずだ。

それに、農村が人手不足といっても、それは農繁期に限られる。農繁期を過ぎれば、人手はそんなに要らない。農村に必要なのは身分保障の煩い常勤の正社員ではなく、必要な時期にだけ雇い入れ、そうでない時期は使い捨てることができる期間労働者だ。


儲からない農業。
まともな雇用を生み出せない農業。
産業として成り立たない農業。
農業以外の収入に依存している農家。

小規模で生産性の低い農家が多数存在する、日本の農業。
その出発点は、農地改革にある。

【近代、現代編-農業-農地改革】
不在地主の所有する全小作地及び在村地主の所有する1町歩(本県は7反歩)を越える小作地(小作地と自作地の計が1町9反を越える部分の小作地)を国が買収して小作農に売り渡して自作農を創設する。

私有財産制をないがしろにしたツケが、こうして時を超えてまわってきた。
社会権の具体化、結果の平等を図る政府の政策は、長期的に見ると弊害のみをもたらす。
コメント
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