若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

昨日の地方議会議員年金は、明日の公的年金

2011年01月04日 | 地方議会・地方政治
議員年金の廃止が決まったのは確か36万・・・いや、去年のことだったか・・・。
私にとってはつい昨日の出来事だが君たちにとっては多分・・・明日の出来事だ。

(元ネタが分からない人を放っておいて大丈夫か?)
(大丈夫だ、問題ない。)



・・さて。

地方議会議員年金については、今まで、議員がその報酬の16.0%を共済掛金として支払い、自治体が議員報酬の16.5%を給付費負担金として支払っていた。支払先は、地方議会議員年金を運営する市議会議員共済会だ。従業員が給料から厚生年金の保険料を払い、会社がもう半分払っているのと同じ構図だ。

たとえば、標準報酬月額が620,000円、議員定数が60人の市議会だと、議員が負担する共済掛金の年間総額は71,424,000円。市が負担する給付費負担金の年間総額は73,656,000円となる。

標準報酬月額が300,000円、議員定数が16人の町議会の場合、共済掛金の年間総額は9,216,000円。町が負担する給付費負担金の年間総額は9,504,000円となる。


ここまでが、従来の計算。
これについて、平成22年12月24日付けで市議会議員共済会から次のような通知がきた。


○地方議会議員年金制度の廃止に伴う予算措置等について
さて、本日、総務省福利課より別添事務連絡がありました。
この事務連絡によりますと、地方議会議員年金制度については、平成23年6月1日をもって廃止することとし、それに伴い制度廃止後の給付に要する費用は、各地方公共団体が全額公費で負担することになります。このため、平成23年度の各市の給付費負担金については、平成22年度と比較して約5倍以上の額となりますことから、各市におかれては、財政当局との予算計上の準備を早急に行っていただきますようお願い申し上げます。



そして、総務省自治行政局公務員部福利課からの通知を見てみると・・・


○地方議会議員年金制度の廃止に伴う留意事項等について
1 都道府県の議会の議員
(1)給付費負担金
 平成23年4月1日における当該地方公共団体の議会の議員の標準報酬月額の総額に12を乗じて得た金額に48.4/100を乗じて得た金額
(2)事務費負担金
 20,900円に当該地方公共団体の議会の議員の数(条例定数)を乗じて得た金額
2 市(特別区を含む。)の議会の議員
(1)給付費負担金
 平成23年4月1日における当該地方公共団体の議会の議員の標準報酬月額の総額に12を乗じて得た金額に88.5/100を乗じて得た金額
(2)事務費負担金
 13,000円に当該地方公共団体の議会の議員の数(条例定数)を乗じて得た金額
3 町村の議会の議員
(1)給付費負担金
 平成23年4月1日における当該地方公共団体の議会の議員の標準報酬月額の総額に12を乗じて得た金額に88.5/100を乗じて得た金額
(2)事務費負担金
 15,000円に当該地方公共団体の議会の議員の数(条例定数)を乗じて得た金額



標準報酬月額が620,000円、議員定数が60人の市議会の場合、議員の共済掛金はなくなるが、市が負担する給付費負担金は年間で395,064,000円となる。

標準報酬月額が300,000円、議員定数が16人の町議会だと、同様に、市が負担する給付費負担金は年間で50,976,000円となる。

ある市では給付費負担金の年額が73,656,000円から395,064,000円になり、別の町では9,504,000円から50,976,000円になる。自治体の負担が従来の5倍以上になる。自治体の負担ということは、即ち、住民負担だ。

議員年金の廃止→清算のために、1つの自治体あたり年間で数千万~数億円が必要となる。しかし、廃止を先延ばしにしていたら、支払い債務はさらに大きくなり、住民の負担はもっと膨らんでいたに違いない。

さてさて。

公的年金制度は破綻しない、と一部の論者は言う。少子化と高齢化に歯止めがかからなければ、保険料を引き上げ、年金額を引き下げることになる。保険料の引き上げと年金額の引き下げを永遠に続けることができるのであれば、確かに破綻はしない。

しかし、保険料の引き上げと年金額の引き下げには限界がある。保険料の引き上げと年金額の引き下げに難航し、無理が来たからこそ、地方議会議員年金は廃止になった。国民年金や厚生年金、公務員の共済にも、いずれその時が来る。少子化で現役世代が減少し、高齢化で受給者が増える。保険料を上げることはできないし、年金額を減らすこともできない。そうしているうちに積立金の底が見えてくる。そうなる前に、余力のあるうちに、年金制度を廃止・清算すべきだ。

時が経てば経つほど、年金債務が増加し、国民負担は重くなるのだから。
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景気対策の「かいちゃダメ、かいちゃダメ~」

2011年01月04日 | 政治
あれも欲しい。
これも欲しい。
欲しいものはみんな欲しい。
けど金が足りない。全部を買うわけにはいかない。

そんな制約された中で、個人は急ぎ必要なもの・どうしても必要なものから順に並べ、優先度の高いものから購入する。優先度・緊急性の低いものは翌年に回したり、使えるものをできるだけ長く使い、既存のもの・似たようなもので我慢するといった形で折り合いを付ける。

例えば、ふと新車が欲しくなったAさん。しかし、そんな余裕はない。そこで次のような予定を立てた。
「車は確かに欲しいけど、今乗っている車で当分我慢するしかない。まだまだ走れるんだし。まずは日々の生活費、次いで長年の目標だったステップアップのための資格取得。資格試験の後で余裕が出てきたら、ローンを組んで車を買おう」
と、こんな形で優先順位をつけていた。

ここに、政府のエコカー補助金が出てきた。するとAさんは、
「今の車はまだ乗れるけど、この機会に買い替えよう。試験は来年も再来年もあるけど、エコカー補助金は今年でおしまいだ。資格取得のために少し貯めてた分があるから、この貯金とエコカー補助金で新車だ!」
と、ちょっと無理をして車を買い替えた。

こうした状況を見て、政治家や官僚は「みんながこうやって車を買い替えれば、景気が良くなる!」と、自分達が立案した景気対策の効果を称賛することだろう。しかし、これは手放しで喜べるものかどうか。

当初、Aさんの考える優先順位は

生活費>資格取得>車購入

だった。
これが補助金に乗っかった結果、

生活費>車購入>資格取得

と順番が変わってしまった。政府の経済対策によって車購入の優先順位が繰り上がり、この過程でまだ乗ることができた車は処分され、資格試験の学費が後回しにされた。エコカー補助金がなかった時点を基準に考えると、Aさんは優先度が低く不要不急のものへ出費をしてしまったことになる。

Aさんの財布、Aさんの損得だけを見てみると、新車を安く買えたことが、まだ乗れたはずの車の処分や資格取得の遅れを上回る。しかし、無料の景気政策は存在しない。負担は、増税や国債発行といった形で必ず生じる。補助金は単なる所得移転であり、エコカー補助金の利用者が新車を買って得をした分だけ、補助金の財源捻出で誰かが損をしており、±0。まだ乗れた車を処分してしまったのと、資格取得を遅らせてしまった分を合わせると、マイナスとなる。

「自動車メーカーにとってはプラスでは」と思えるが、将来の需要を先食いしているだけなので、後で消費が冷え込む。一時的な過熱を生じさせることで、生産・流通・小売の各現場における混乱を招く。個人や企業の時間・労力・資源を浪費させてしまう。

見てごらんなさい、補助制度による混乱ぶりを↓。


○中古車業界も苦境続く エコカー補助金終了後の県内 - 徳島新聞社 2010/12/13
 徳島県内で自動車販売の落ち込みが止まらない。政府のエコカー補助金が9月上旬に打ち切られた反動で、新車販売が過去最大の下落率を記録。補助金のあおりを受けた中古車業界は、制度終了を機に、反転攻勢をもくろんでいたが「車の需要そのものが冷え込んで客が来ない」と、明るさは依然見えない状況だ。
 「猛暑から一転、真冬になったようなもの。落差があまりにも大き過ぎる」。徳島市内のある新車ディーラーの担当者は嘆く。



○断熱材:エコポイント人気で足りない 省エネ住宅建築遅れ - 毎日新聞 2010年12月4日 大阪夕刊
 住宅エコポイントの人気の高まりを受け、代表的な住宅断熱材のグラスウールが不足し、省エネ住宅の建築が大幅に遅れている。従来のほぼ2倍の国産断熱材の使用が義務付けられており、生産が追いつかないためだ。今年10月までの消費量は昨年1年分の生産量に相当し、約2万戸分のグラスウールが来春まで不足するとみられる。【新宮達】
 このまま建築の遅れが続けば、建築代金の支払いが延び、資金繰りに行き詰る工務店が増える恐れがあるとして、経済産業省と国土交通省も実態調査を始めた。




もう、
「みんなで金を使えば経済が回って景気が良くなる。みんなが金を使わないなら政府が金を使って景気を支えよう。」
という考えから卒業すべきだ。
政府の景気対策をあてにしてはならない。政府の無策を非難してはならない。
むしろ、政府は個々の景気局面について無策である方が良い。
政府が介入すればするほど、みんなが少しずつ不幸になっていく。


さて。

平成22年度補正予算として「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」が決定され、この一環として「地域活性化交付金」なるものが創設された。内閣府HPによると、その内容は・・・


http://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2010/1203/101203_shiryou6.pdf
○地域活性化交付金
①きめ細かな交付金
 観光地における電線地中化等、地域の活性化ニーズに応じて、きめ細かな事業を実施できるよう支援を行う交付金である。
②住民生活に光をそそぐ交付金
 これまで住民生活にとって、大事な分野でありながら、光が十分に当てられてこなかった分野として地方消費者行政、DV対策・自殺予防等の弱者対策・自立支援、知の地域づくりに対する地方の取組を支援する交付金である。

きめ細かな交付金 2,500億円
住民生活に光をそそぐ交付金 1,000億円




・・・だそうな。
これもエコポイントと同じで、個々の自治体の財布を見ただけなら得をすることもあるだろうが、一国全体で考えると間違いなくマイナスだ。
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