若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

須磨海岸を守り育てる条例(勝手に)解説 ~ タトゥーという外見か、利用妨害か ~

2011年08月12日 | 政治
○須磨海岸を守り育てる条例の一部を改正する条例


この↑一部改正条例をメインの条例に溶け込ませると、
次のよう↓になる。


========
   須磨海岸を守り育てる条例

(行為の禁止)
第7条 何人も、法令に別に定めがあるもののほか、海岸において、正当な理由なく、次に掲げる行為をしてはならない。
 (1) 竹木を伐採し、又は植物を採取すること。
 (2) たき火をし、又は火気を使用する調理器具を使用すること。
 (3) もり、やすその他これらに類する漁具を携行すること。
 (4) 次に掲げる行為を行うことによって、他の者に不安を覚えさせ、他の者を畏怖させ、他の者を困惑させ、又は他の者に嫌悪を覚えさせることにより、当該他の者の海岸の利用を妨げること。
  ア 入れ墨その他これに類する外観を有するものを公然と公衆の目に触れさせること。
  イ 粗野又は乱暴な言動をし、又は威勢を示すこと。
 (5) 喫煙すること。ただし、次に掲げる場所については、この限りでない。
  ア 海岸を管理する権限を有する者が設置し、又は設置を許可した灰皿その他これに類する設備が設けられた場所
  イ 海岸法(昭和31年法律第101号)第7条第1項の許可を受けて設置した施設又は工作物の室内
 (6) 第5条第1項、第6条第1項又は前各号の規定に違反する行為を助長する行為を行うこと。
 (7) 前各号に掲げるもののほか、市長が海岸の管理上支障があると認める行為
2 市長は、前項の規定に違反した者に対して、当該違反に係る行為の中止その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

========



(4)(5)(6)号と2項が今回新たに追加され、
平成23年4月1日から施行されている。
この条例に基づき、今年の夏から市役所職員が
浜辺を指導して回っている。



○揺れる須磨海水浴場 タトゥー露出や喫煙規制強化、「健全化」か「自由」か MSN産経ニュース
======【引用ここから】======
関西有数のビーチとして知られる神戸市須磨区の須磨海水浴場。昨夏に違法薬物事件が相次ぎ、今夏から入れ墨(タトゥー)露出や喫煙が市条例で禁止され、市は違反者に注意を重ねる一方、海水浴客から「厳しすぎる」との反発も。さらに「ファッションの小さなタトゥーまで規制するのは人権侵害」と海の家の組合が提訴を辞さない構えをみせる。健全化か自由か-。その答えを求めて浜辺を歩いた。(有年由貴子)
 ―――(中略)―――
 浜辺では、肩や腕にワンポイントの花柄などのタトゥーを入れた若い男女の姿が目立つ。市職員や委託された兵庫県警OBらが巡回し、違反者に指導を繰り返していた。
 「兄ちゃん、入れ墨は見せたらあかんことになってるねん」
 指導を受けるとタトゥーをタオルなどで隠して従う客もいるが、「分かった、分かった」とその場しのぎであしらう客もいる。
 胸や足に入れた小さなタトゥーで注意された同市長田区の女性会社員(33)は「ごみの分別などのマナーは守っている。外見で判断しないで」と反発。巡回中の警備員(42)は「いたちごっこだが、何度も声をかけると聞いてくれる人もいる。根気強くやるしかない」と話した。

======【引用ここまで】======


入れ墨やタトゥーといった「人の外見」を理由に、
公共施設の利用を制限することは許されるのだろうか。
市管理の海水浴場で「人の外見」を理由に利用を制限することが
許されるのであれば、市道の通行なども、「人の外見」を理由に
利用制限することが許されてしまうことになる。

なので、規制が許されるためには、
「人の外見」だけを理由とするのではなく、
他人に害を加えることを条件に盛り込む必要がある。

この条例では、

「入れ墨その他これに類する外観を有するものを公然と公衆の目に触れさせること」によって、
「他の者に不安を覚えさせ、他の者を畏怖させ、他の者を困惑させ、又は他の者に嫌悪を覚えさせ」て、
「他の者の海岸の利用を妨げること」を禁止している。

単に入れ墨やタトゥーを表に晒すだけでは、禁止対象とはならない。
他人の海岸の利用を妨げる程度にまで、
他人を不安、畏怖、困惑、嫌悪させることが必要である。

さて、
「胸や足に入れた小さなタトゥーで注意された同市長田区の女性会社員(33)」
は、他人にどの程度の不安、畏怖、困惑、嫌悪を与え、
他人の利用を妨げたのだろうか。
もし、他人への不安、畏怖、困惑、嫌悪を考慮することなく、
市職員が
「タトゥーを出して歩いたらダメだぞ」
と指導していたとしたら、条例の範囲を逸脱したことになる。

現在は、この規定に罰則はなく、
市職員や警察OBの指導・注意だけしか行われていないようだ。
しかし、これに過料や退去命令、そして逮捕や罰則といった
ペナルティを追加して運用する可能性を考えたとき、
条例の適用範囲は明確にし、限定しておかなければならない。



もし、
「入れ墨をしていること自体が『アウトローの印』なのですからしょーがないですわね。」
といった意見に基づき、「人の外見」のみを理由として
利用制限をかけたいと考えた場合、どうすれば良いだろうか。

答えは簡単。

浜辺を買って私有地にすれば良いのだ。
銭湯で「入れ墨の入浴お断り」がOKなのは、
銭湯が私人による運営だからだ。


ちなみに、私個人のことを申し上げると、
私は茶髪、ピアス、タトゥーといった若者ファッションが嫌い。
自分の子供がタトゥーでも入れようものなら、
ぶん殴ってでも止めさせることだろう。
ただ、こうしたパターナリズムは、親子間だからこそ正当化できるのであって、
他人の子供、さらには他の大人にまでパターナリズムを及ぼすのは出すぎたこと。


健全化か自由か?

この問いに対して、私は
「もちろん自由が優先だ!」
と答える。
社会は私の子供ではない。
規制をするのであれば、
どのような場合に他者への加害となるか、を
厳格に線引きしなければならない。



つうか。

こんな違憲になりそうな条例作ってる暇があるなら、
大阪維新の会の「公務員基本条例」を検討しろや、神戸市。