先日書いた記事の、
タダより高いものはない ~ 他人の金でパトロン気取り ~ - 若年寄の遺言
======【引用ここから】======
時の総務部長が交渉担当者となり、市は土地・建物(ミラモーレという元・宴会場)を公益財団法人から無償で借りることとなった。ところが、市が調査したところ建物には違法建築部分が含まれるということで、一時的に物置として使っただけで終わった。最終的には、建物は取り壊わされ、市がわざわざ補正予算を組んで土地を1億2千万円で買い取るようになった、というものである。
(現在、この土地に25億円かけてハコモノを作ろうとしているが、これについては今回触れません。)
======【引用ここまで】======
このハコモノというのが・・・
「行橋市図書館等複合施設整備事業」
~~~~~(ここまでの経緯)~~~~~
・平成25年3月:土地購入費用として1億2千万円の予算を計上。
(教育文化施設整備という理由で、防衛省から7000万円の補助金あり)
・平成27年2月:建物の建設費用25億円という見込みを示す。(パブリックコメント)
・平成28年3月:駐車場用地購入費用として5億円の予算を計上。
・平成28年9月:建物の整備費用として25億円。建物完成後15年間の運営費用として24億4500万円の債務負担を計上。
(建物の整備費用に対し、11億円の国庫補助金あり。9億9000万円は地方債として30年で返済。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
○疑問その1
事業の中身を何も決めていない段階で、川と一方通行の隘路に囲まれた不便な土地を先に買ってしまったのはどういうことか。なぜ買ったのか。しかも、「教育文化施設整備」を目的とした国の補助金がついている為、建てられるのが図書館や博物館といったものに限定されている。
○疑問その2
図書館、小規模交流空間、スタジオ、カフェ、赤レンガ館、託児機能、有料駐車場を併せた複合施設とすることを決める前に、建設費用25億円という規模を決めていたのはどういうことか。
○疑問その3
一般会計250億円~270億円、自主財源99億円~102億円という規模の地方公共団体が、年間約1億6千万円×15年=24億4500万円の維持費、30年返済の9億9000万円の地方債を背負うこととなるが、今後の財政運営は大丈夫なのか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
平成28年6月の時点では、この図書館等複合施設の具体的な中身は未定だった(議会での副市長答弁より)。庁内で関係部署の幹部職員が検討部会をして、図書館、小規模交流空間、スタジオ、カフェ、赤レンガ館、託児機能、有料駐車場を併せた施設とする実施方針、要求水準書(案)を固めたのは、平成28年7月。
ところが、である。
建設用地の購入を決めたのは、平成25年3月。
建設費25億円という事業規模を公表したのは、平成27年2月。
駐車場用地の購入を決めたのは、平成28年3月。
この市役所は、何を建ててそこで何をするか決めていないのに、建設用地を買い、建設費25億円という事業規模を決め、駐車場用地を買っている。しかも、「教育文化施設建設」という名目で国から補助金を貰っているため、これ以外の用途で土地を使うことができない。
仮に、
「あの場所だったら、アパートを建てて定住人口を増やした方が、商店街を歩く人、買い物をする人が増えるのではないか」
「今の商店街にはトレーニングジムといったものが無いから、こういったものが商店街利用者の増加に最も効果的だ」
といった分析結果が出たとしても、これを採用することはできない。教育文化施設という手枷足枷が事業の大前提として存在するのだ。「行橋市図書館等複合施設整備事業実施方針」という資料の中の
「一年を通して恒久的な集客力があると同時に、対象として子どもから大人までの幅広い年齢層が利用できる教育文化複合施設であること。」
という条件は、まちの活性化を考えに考え抜いた上での結論ではなく、補助金を国から貰う時の縛りなのだ。これが補助金行政の悪弊である。
さてさて。
人口減少社会が始まっており、今後、インフラや箱物を維持管理する税収も人手も不足することが予想される。インフラやハコモノを整理縮小し、将来発生する維持費を抑制していくことが求められている。こうした文脈から、全域に満遍なくインフラやハコモノを整備していくのではなく、整備するエリアを絞っていこうとするコンパクトシティ化が盛んに言われている。
ところが、この市では、市役所の真横という市の中心部に既に図書館があるにもかかわらず、駅周辺に図書館を新設しようとしている。市役所横から駅周辺に図書館を移転させて、どのあたりがコンパクトシティになるのだろうか?市中心部への人口誘導が進むだろうか?現図書館を別の施設に変え、新たな図書館を建て、維持費、地方債を増やしていけば、人口減少と重なって将来の市民一人当たり負担は大幅に増えるだろう。コンパクトシティの理念に逆行するものだ。
長期的な生活水準の向上は、効率性・生産性を高めることのみによって実現する。非効率な処理を効率化し、不便なところを便利にし、規制を緩和し、新しい技術を取り入れ・・・この小さな積み重ねでしか達成することはできない。公共工事で業者を潤わせたとしても、効果は一時的でしかない。この新図書館建設は、長期的な生活水準の向上には何ら寄与しない。
○なぜ「箱モノ行政」は批判されるのか?その理由と失敗の本質を見てみよう - オワコン
======【引用ここから】======
以上を踏まえて、今後行政が箱モノ開発を考えるにあたって必要なのは、主に以下。
・きちんと収支計画を立て、せめて赤字運営にならない施設を作る
・と言っても、開発のプロじゃなきゃまず無理なので、実力のある民間事業者に頼るべき(PPP―PFI等を検討する)
・役所や出張所など、利益を生まない施設への投資は極力しない(そもそもの必要性と、必要最小限を考える)
決して「絶対に箱モノは作るな」という訳では無いのですが、必要最小限に留めるべきです。
ムダな施設開発が進むほど、建築費や維持費に税金が飛んで行って、公共サービスが低下しますから。
公共サービスが低下したら住民の満足度が下がって、みんな外へ出て行っちゃいますよ。
施設利用(商圏)人口の少ない田舎では、行政は新たな投資はせず、無駄な出費を極力抑える。
そして、商業やら観光やらは、民間の自由な競争のもとに任せて行けば良いと思いますよ。
======【引用ここまで】======
ということで、ハコモノ行政でムダな支出を重ね地域を衰退させるよりも、新図書館建設計画を全て白紙にし、議決した債務負担を廃止し、防衛省に頭を下げて補助金を返還し、建設用地を民間に売ってしまうのが、現時点での最善の策だ。
行橋市:複合文化施設計画 「建設まった」の会結成 9市議と市民有志ら 来月3日 /福岡 - 毎日新聞2016年11月16日 地方版
======【引用ここから】======
行橋市の新図書館を核とする複合文化施設の建設計画に異議を唱える市議9人が、問題点を話す報告会を市内六つの中学校区で重ねている。14日夜に今元公民館(同市今井)で開かれた会合では、市民有志と連携し「『図書館建設まった!』の会」を12月3日に結成し、計画の白紙撤回を求める請願の署名運動を始めることが報告された。【荒木俊雄】
======【引用ここまで】======
ところで。
憲法の議論の中で、二重の基準論というものがある。
二重の基準論とは -意味/解説/説明 | 弁護士ドットコムで法律用語をわかりやすく
======【引用ここから】======
第二の根拠として、経済的自由の規制については、社会経済政策の問題と関係することが多く、その合憲性を判定するには政策的な判断を必要とするが、裁判所はそのような判断能力に乏しいため、立法府の判断を尊重すべきであるということである。
======【引用ここまで】======
これについて、前々から不当な議論だと思っていた。なぜなら、裁判所同様、立法府も行政府も社会経済政策の問題に関する判断能力に乏しいから。今回のハコモノ事業は、地方行政の判断能力の無さを示す好例となるだろう。
【地方創生】公共事業を「墓標」から「稼ぐインフラ」へ転換する方法 木下斉さんに聞く地方の未来
======【引用ここから】======
■公共事業の失敗「墓標」シリーズの衝撃
−−失敗事例といえば、木下さんが指摘する「墓標」ですね。木下さんは過去の中心市街地活性化の失敗事例をまとめた『あのまち、このまち失敗事例集「墓標シリーズ」』で、「スカイプラザ三沢」(青森県三沢市)や、「ココリ」(山梨県甲府市)などの実例7つを解説したところ、大きな反響を呼んでいます。なぜ、この墓標シリーズを調べようと思われたのでしょうか?
やはり、このようなことを言えるのは、柵のない民間だからこそできることだと思っています。しかも、別に個別都市を攻撃しようという趣旨ではなく、どこの地域も「自分の地域をよくしよう」みたいな話から結局、失敗します。国からも多額の予算をとり、自治体も、地元経済団体も投資したりしています。けど、失敗する。
======【引用ここまで】======
このままいけば、新たな墓標が追加されるだろう。
タダより高いものはない ~ 他人の金でパトロン気取り ~ - 若年寄の遺言
======【引用ここから】======
時の総務部長が交渉担当者となり、市は土地・建物(ミラモーレという元・宴会場)を公益財団法人から無償で借りることとなった。ところが、市が調査したところ建物には違法建築部分が含まれるということで、一時的に物置として使っただけで終わった。最終的には、建物は取り壊わされ、市がわざわざ補正予算を組んで土地を1億2千万円で買い取るようになった、というものである。
(現在、この土地に25億円かけてハコモノを作ろうとしているが、これについては今回触れません。)
======【引用ここまで】======
このハコモノというのが・・・
「行橋市図書館等複合施設整備事業」
~~~~~(ここまでの経緯)~~~~~
・平成25年3月:土地購入費用として1億2千万円の予算を計上。
(教育文化施設整備という理由で、防衛省から7000万円の補助金あり)
・平成27年2月:建物の建設費用25億円という見込みを示す。(パブリックコメント)
・平成28年3月:駐車場用地購入費用として5億円の予算を計上。
・平成28年9月:建物の整備費用として25億円。建物完成後15年間の運営費用として24億4500万円の債務負担を計上。
(建物の整備費用に対し、11億円の国庫補助金あり。9億9000万円は地方債として30年で返済。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
○疑問その1
事業の中身を何も決めていない段階で、川と一方通行の隘路に囲まれた不便な土地を先に買ってしまったのはどういうことか。なぜ買ったのか。しかも、「教育文化施設整備」を目的とした国の補助金がついている為、建てられるのが図書館や博物館といったものに限定されている。
○疑問その2
図書館、小規模交流空間、スタジオ、カフェ、赤レンガ館、託児機能、有料駐車場を併せた複合施設とすることを決める前に、建設費用25億円という規模を決めていたのはどういうことか。
○疑問その3
一般会計250億円~270億円、自主財源99億円~102億円という規模の地方公共団体が、年間約1億6千万円×15年=24億4500万円の維持費、30年返済の9億9000万円の地方債を背負うこととなるが、今後の財政運営は大丈夫なのか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
平成28年6月の時点では、この図書館等複合施設の具体的な中身は未定だった(議会での副市長答弁より)。庁内で関係部署の幹部職員が検討部会をして、図書館、小規模交流空間、スタジオ、カフェ、赤レンガ館、託児機能、有料駐車場を併せた施設とする実施方針、要求水準書(案)を固めたのは、平成28年7月。
ところが、である。
建設用地の購入を決めたのは、平成25年3月。
建設費25億円という事業規模を公表したのは、平成27年2月。
駐車場用地の購入を決めたのは、平成28年3月。
この市役所は、何を建ててそこで何をするか決めていないのに、建設用地を買い、建設費25億円という事業規模を決め、駐車場用地を買っている。しかも、「教育文化施設建設」という名目で国から補助金を貰っているため、これ以外の用途で土地を使うことができない。
仮に、
「あの場所だったら、アパートを建てて定住人口を増やした方が、商店街を歩く人、買い物をする人が増えるのではないか」
「今の商店街にはトレーニングジムといったものが無いから、こういったものが商店街利用者の増加に最も効果的だ」
といった分析結果が出たとしても、これを採用することはできない。教育文化施設という手枷足枷が事業の大前提として存在するのだ。「行橋市図書館等複合施設整備事業実施方針」という資料の中の
「一年を通して恒久的な集客力があると同時に、対象として子どもから大人までの幅広い年齢層が利用できる教育文化複合施設であること。」
という条件は、まちの活性化を考えに考え抜いた上での結論ではなく、補助金を国から貰う時の縛りなのだ。これが補助金行政の悪弊である。
さてさて。
人口減少社会が始まっており、今後、インフラや箱物を維持管理する税収も人手も不足することが予想される。インフラやハコモノを整理縮小し、将来発生する維持費を抑制していくことが求められている。こうした文脈から、全域に満遍なくインフラやハコモノを整備していくのではなく、整備するエリアを絞っていこうとするコンパクトシティ化が盛んに言われている。
ところが、この市では、市役所の真横という市の中心部に既に図書館があるにもかかわらず、駅周辺に図書館を新設しようとしている。市役所横から駅周辺に図書館を移転させて、どのあたりがコンパクトシティになるのだろうか?市中心部への人口誘導が進むだろうか?現図書館を別の施設に変え、新たな図書館を建て、維持費、地方債を増やしていけば、人口減少と重なって将来の市民一人当たり負担は大幅に増えるだろう。コンパクトシティの理念に逆行するものだ。
長期的な生活水準の向上は、効率性・生産性を高めることのみによって実現する。非効率な処理を効率化し、不便なところを便利にし、規制を緩和し、新しい技術を取り入れ・・・この小さな積み重ねでしか達成することはできない。公共工事で業者を潤わせたとしても、効果は一時的でしかない。この新図書館建設は、長期的な生活水準の向上には何ら寄与しない。
○なぜ「箱モノ行政」は批判されるのか?その理由と失敗の本質を見てみよう - オワコン
======【引用ここから】======
以上を踏まえて、今後行政が箱モノ開発を考えるにあたって必要なのは、主に以下。
・きちんと収支計画を立て、せめて赤字運営にならない施設を作る
・と言っても、開発のプロじゃなきゃまず無理なので、実力のある民間事業者に頼るべき(PPP―PFI等を検討する)
・役所や出張所など、利益を生まない施設への投資は極力しない(そもそもの必要性と、必要最小限を考える)
決して「絶対に箱モノは作るな」という訳では無いのですが、必要最小限に留めるべきです。
ムダな施設開発が進むほど、建築費や維持費に税金が飛んで行って、公共サービスが低下しますから。
公共サービスが低下したら住民の満足度が下がって、みんな外へ出て行っちゃいますよ。
施設利用(商圏)人口の少ない田舎では、行政は新たな投資はせず、無駄な出費を極力抑える。
そして、商業やら観光やらは、民間の自由な競争のもとに任せて行けば良いと思いますよ。
======【引用ここまで】======
ということで、ハコモノ行政でムダな支出を重ね地域を衰退させるよりも、新図書館建設計画を全て白紙にし、議決した債務負担を廃止し、防衛省に頭を下げて補助金を返還し、建設用地を民間に売ってしまうのが、現時点での最善の策だ。
行橋市:複合文化施設計画 「建設まった」の会結成 9市議と市民有志ら 来月3日 /福岡 - 毎日新聞2016年11月16日 地方版
======【引用ここから】======
行橋市の新図書館を核とする複合文化施設の建設計画に異議を唱える市議9人が、問題点を話す報告会を市内六つの中学校区で重ねている。14日夜に今元公民館(同市今井)で開かれた会合では、市民有志と連携し「『図書館建設まった!』の会」を12月3日に結成し、計画の白紙撤回を求める請願の署名運動を始めることが報告された。【荒木俊雄】
======【引用ここまで】======
ところで。
憲法の議論の中で、二重の基準論というものがある。
二重の基準論とは -意味/解説/説明 | 弁護士ドットコムで法律用語をわかりやすく
======【引用ここから】======
第二の根拠として、経済的自由の規制については、社会経済政策の問題と関係することが多く、その合憲性を判定するには政策的な判断を必要とするが、裁判所はそのような判断能力に乏しいため、立法府の判断を尊重すべきであるということである。
======【引用ここまで】======
これについて、前々から不当な議論だと思っていた。なぜなら、裁判所同様、立法府も行政府も社会経済政策の問題に関する判断能力に乏しいから。今回のハコモノ事業は、地方行政の判断能力の無さを示す好例となるだろう。
【地方創生】公共事業を「墓標」から「稼ぐインフラ」へ転換する方法 木下斉さんに聞く地方の未来
======【引用ここから】======
■公共事業の失敗「墓標」シリーズの衝撃
−−失敗事例といえば、木下さんが指摘する「墓標」ですね。木下さんは過去の中心市街地活性化の失敗事例をまとめた『あのまち、このまち失敗事例集「墓標シリーズ」』で、「スカイプラザ三沢」(青森県三沢市)や、「ココリ」(山梨県甲府市)などの実例7つを解説したところ、大きな反響を呼んでいます。なぜ、この墓標シリーズを調べようと思われたのでしょうか?
やはり、このようなことを言えるのは、柵のない民間だからこそできることだと思っています。しかも、別に個別都市を攻撃しようという趣旨ではなく、どこの地域も「自分の地域をよくしよう」みたいな話から結局、失敗します。国からも多額の予算をとり、自治体も、地元経済団体も投資したりしています。けど、失敗する。
======【引用ここまで】======
このままいけば、新たな墓標が追加されるだろう。