============
〇国家公務員法
(定年による退職)
第八十一条の二 職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。
2 前項の定年は、年齢六十年とする。ただし、次の各号に掲げる職員の定年は、当該各号に定める年齢とする。
一 病院、療養所、診療所等で人事院規則で定めるものに勤務する医師及び歯科医師 年齢六十五年
二 庁舎の監視その他の庁務及びこれに準ずる業務に従事する職員で人事院規則で定めるもの 年齢六十三年
三 前二号に掲げる職員のほか、その職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であることにより定年を年齢六十年とすることが著しく不適当と認められる官職を占める職員で人事院規則で定めるもの 六十年を超え、六十五年を超えない範囲内で人事院規則で定める年齢
3 前二項の規定は、臨時的職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び常時勤務を要しない官職を占める職員には適用しない。
============
国家公務員法で、国家公務員の定年は60歳とされています。退職の日付は、60歳になった後の最初の3月31日となります。
他方、検察官はと言うと、
============
〇検察庁法
第二十二条 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。
============
と、65歳(検事総長)か63歳(その他の検察官)に達した時に退官とされています。誕生日が1957年2月8日の検察官なら、2020年2月7日に退官となります。国家公務員一般と検察官とでは、定年の考え方や仕組みがだいぶ異なっているのがわかります。
この点について、
============
〇検察庁法
第三十二条の二 この法律第十五条、第十八条乃至第二十条及び第二十二条乃至第二十五条の規定は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)附則第十三条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法の特例を定めたものとする。
============
「検察官の職務と責任の特殊性があるから、国家公務員法の特例を検察庁法の中にわざわざ作ったんだ!」
と法律の中で明記されています。
さて、国家公務員法の中には、最初に書いた国家公務員の定年を延長させる規定があります。
============
〇国家公務員法
(定年による退職の特例)
第八十一条の三 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。
============
この条文は、前条(国家公務員法第八十一条の二)第一項の規定により退職すべき場合において、任命権者が特別事情を認めたら1年以内の定年延長を可能としています。あくまでも、国家公務員法第八十一条の二第一項によって退職する場合に、定年延長を認めているものです。
検察官については、国家公務員法第八十一条の二第一項の適用を否定する形で検察庁法第二十二条が設けられています。検察官が退官する根拠は検察庁法第二十二条であって国家公務員法第八十一条の二第一項の適用はありません。検察官は国家公務員法第八十一条の二第一項により退職するのではなく検察庁法第二十二条により退職するのであり、したがって、国家公務員法第八十一条の二第一項を前提とする国家公務員法第八十一条の三、すなわち定年延長は検察官に適用されないとするのが文理上素直な読み方だろうと思います。
国家公務員法第八十一条の三の定年延長は全ての国家公務員に適用されるのではなく、条文上は、あくまで国家公務員法第八十一条の二第一項に基づいて退職する国家公務員が対象です。国家公務員法第八十一条の三の定年延長を適用するためには、その前段として国家公務員法第八十一条の二第一項が適用されることが必要になります。
だからこそ、
https://news.yahoo.co.jp/byline/watanabeteruhito/20200214-00163053/
=====【引用ここから】=======
2020年2月12日 衆議院予算委員会 後藤祐一(5:00:20~)
問:過去の国会答弁の「定年制」に法81条の3の定年延長の規定が含まれるか
3:02:30 人事院給与局長 お答え申し上げます。人事院といたしましては、国家公務員法に定年制を導入した際は、委員ご指摘の昭和56年4月28日の答弁の通り、検察官については、国家公務員法の勤務延長を含む定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと認識をしています。
=====【引用ここまで】=======
という従来の運用が正解だと思うんですけどね。
特別法に書いていないことは一般法を適用する、という考え方は法律の基本です。ただ、国家公務員法第八十一条の三(定年延長)はその規定上、国家公務員法第八十一条の二第一項を前提としています。検察庁法第二十二条によって国家公務員法第八十一条の二第一項の適用が否定されているので、国家公務員法第八十一条の三(定年延長)を適用する余地があるのだろうか、この問題は「一般法と特別法」の関係とは別であろうというのが、私の考えです。
法務省は「検察官には国家公務員法の定年延長は適用されない」という従来解釈について、口頭の決裁を経て「国家公務員法は一般法、検察庁法は特別法、特別法に書いていない部分は一般法を適用する」という解釈に切り替えました。
仮にこの路線で押し通すとしても、今話題となっている黒川検事長は、検事総長になれるのでしょうか。検察官にも国家公務員法第八十一条の三の定年延長が適用されるようになったとしても、
「職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみて~その職員を当該職務に従事させるため」
に定年延長が認められることとなります。東京高検の黒川検事長は、東京高検検事長という職務に伴う特殊性・特別の事情から、黒川氏を東京高検検事長に従事させるために定年延長が認められることになります。
定年延長して、昇進させるなんてことがあるんですかね。
〇国家公務員法
(定年による退職)
第八十一条の二 職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。
2 前項の定年は、年齢六十年とする。ただし、次の各号に掲げる職員の定年は、当該各号に定める年齢とする。
一 病院、療養所、診療所等で人事院規則で定めるものに勤務する医師及び歯科医師 年齢六十五年
二 庁舎の監視その他の庁務及びこれに準ずる業務に従事する職員で人事院規則で定めるもの 年齢六十三年
三 前二号に掲げる職員のほか、その職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であることにより定年を年齢六十年とすることが著しく不適当と認められる官職を占める職員で人事院規則で定めるもの 六十年を超え、六十五年を超えない範囲内で人事院規則で定める年齢
3 前二項の規定は、臨時的職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び常時勤務を要しない官職を占める職員には適用しない。
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国家公務員法で、国家公務員の定年は60歳とされています。退職の日付は、60歳になった後の最初の3月31日となります。
他方、検察官はと言うと、
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〇検察庁法
第二十二条 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。
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と、65歳(検事総長)か63歳(その他の検察官)に達した時に退官とされています。誕生日が1957年2月8日の検察官なら、2020年2月7日に退官となります。国家公務員一般と検察官とでは、定年の考え方や仕組みがだいぶ異なっているのがわかります。
この点について、
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〇検察庁法
第三十二条の二 この法律第十五条、第十八条乃至第二十条及び第二十二条乃至第二十五条の規定は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)附則第十三条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法の特例を定めたものとする。
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「検察官の職務と責任の特殊性があるから、国家公務員法の特例を検察庁法の中にわざわざ作ったんだ!」
と法律の中で明記されています。
さて、国家公務員法の中には、最初に書いた国家公務員の定年を延長させる規定があります。
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〇国家公務員法
(定年による退職の特例)
第八十一条の三 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。
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この条文は、前条(国家公務員法第八十一条の二)第一項の規定により退職すべき場合において、任命権者が特別事情を認めたら1年以内の定年延長を可能としています。あくまでも、国家公務員法第八十一条の二第一項によって退職する場合に、定年延長を認めているものです。
検察官については、国家公務員法第八十一条の二第一項の適用を否定する形で検察庁法第二十二条が設けられています。検察官が退官する根拠は検察庁法第二十二条であって国家公務員法第八十一条の二第一項の適用はありません。検察官は国家公務員法第八十一条の二第一項により退職するのではなく検察庁法第二十二条により退職するのであり、したがって、国家公務員法第八十一条の二第一項を前提とする国家公務員法第八十一条の三、すなわち定年延長は検察官に適用されないとするのが文理上素直な読み方だろうと思います。
国家公務員法第八十一条の三の定年延長は全ての国家公務員に適用されるのではなく、条文上は、あくまで国家公務員法第八十一条の二第一項に基づいて退職する国家公務員が対象です。国家公務員法第八十一条の三の定年延長を適用するためには、その前段として国家公務員法第八十一条の二第一項が適用されることが必要になります。
だからこそ、
https://news.yahoo.co.jp/byline/watanabeteruhito/20200214-00163053/
=====【引用ここから】=======
2020年2月12日 衆議院予算委員会 後藤祐一(5:00:20~)
問:過去の国会答弁の「定年制」に法81条の3の定年延長の規定が含まれるか
3:02:30 人事院給与局長 お答え申し上げます。人事院といたしましては、国家公務員法に定年制を導入した際は、委員ご指摘の昭和56年4月28日の答弁の通り、検察官については、国家公務員法の勤務延長を含む定年制は検察庁法により適用除外されていると理解していたものと認識をしています。
=====【引用ここまで】=======
という従来の運用が正解だと思うんですけどね。
特別法に書いていないことは一般法を適用する、という考え方は法律の基本です。ただ、国家公務員法第八十一条の三(定年延長)はその規定上、国家公務員法第八十一条の二第一項を前提としています。検察庁法第二十二条によって国家公務員法第八十一条の二第一項の適用が否定されているので、国家公務員法第八十一条の三(定年延長)を適用する余地があるのだろうか、この問題は「一般法と特別法」の関係とは別であろうというのが、私の考えです。
【おまけ 定年延長できても検事総長になれるのか】
さて。法務省は「検察官には国家公務員法の定年延長は適用されない」という従来解釈について、口頭の決裁を経て「国家公務員法は一般法、検察庁法は特別法、特別法に書いていない部分は一般法を適用する」という解釈に切り替えました。
仮にこの路線で押し通すとしても、今話題となっている黒川検事長は、検事総長になれるのでしょうか。検察官にも国家公務員法第八十一条の三の定年延長が適用されるようになったとしても、
「職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみて~その職員を当該職務に従事させるため」
に定年延長が認められることとなります。東京高検の黒川検事長は、東京高検検事長という職務に伴う特殊性・特別の事情から、黒川氏を東京高検検事長に従事させるために定年延長が認められることになります。
定年延長して、昇進させるなんてことがあるんですかね。