若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

一番重い懲戒免職 vs かなり軽い文書訓告

2009年08月01日 | 政治
地方公務員法
(任命権者)
第六条  地方公共団体の長、議会の議長、選挙管理委員会、代表監査委員、教育委員
 会、人事委員会及び公平委員会並びに警視総監、道府県警察本部長、市町村の消防長
 (特別区が連合して維持する消防の消防長を含む。)その他法令又は条例に基づく任
 命権者は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律並びにこれに基づく条
 例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、それぞれ職員
 の任命、休職、免職及び懲戒等を行う権限を有するものとする。
(懲戒)
第二十九条  職員が次の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分と
 して戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
 一  この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、
  地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
 二  職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
 三  全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合



ここにあるように、市長は、職員に対し戒告、減給、停職、免職をすることができる。
また、地方公務員法上は存在しないが、自治体によっては内規で文書や口頭による
訓告・注意といった処分を設けているところもある。
(法律上の懲戒処分を受けた場合は昇任や昇給に影響するが、
内規上の訓告・注意だと昇給には影響しないという扱いらしい。)

職員が規則違反、命令違反、非行などをした場合、市長は相応しいと思われる処分を
選んで執行することになる。どれを選ぶかは、市長の裁量となる。

ただこの市長の裁量は、無制限というわけではない。

職員の違反・非行の程度と処分の程度を比べ、処分が社会通念上相当でないと
判断されれば、裁量権乱用として処分が違法なものと判断されることになる。
過去には、地方公務員が酒気帯び運転で懲戒免職とされた後、
「処分が重すぎる!裁量権乱用につき懲戒免職の処分は違法・無効」
と判断した地裁もあるようだ。



ここで、阿久根市の出来事へ。

市長命令で職場に掲示してある職員給与総額張り紙をはがすという行為に対し、
免職という懲戒処分は社会通念上相当か?それとも重すぎるので違法か?
はたまた、市の賞罰委員会が市長に報告したように、文書訓告が相当なのだろうか。

張り紙をはがすという行為自体は、大したことではない。

しかし、人件費削減という公約・至上命題に基づき、人件費総額を職員や住民の見える場所に掲示し、
人件費の高さを意識させるというこの市長の目的・主張を加味すると、
ことは単なる張り紙はがしの域を越え、
市長の政治的意図に対する明確な反意をもった命令違反という評価になろう。
「今後、同じような政治的意図で出された命令についても、従わないぞ」
という公の意思表示と受け取られても仕方がない。

どうも、文書訓告では軽すぎる。
「一応処分はしました」という記録が残るくらいで、処分された職員本人には
実害らしい実害がない。
賞罰委員会というのが、副市長以下職員で構成される内部・身内の委員会で、
市長に報告する際に、処分を軽くするよう手心を加えて報告したのではないか。
(あくまでも推察に過ぎないが。)

かといって、免職では重すぎるのではないかとも思う。
収賄、横領、飲酒運転の人身事故などは懲戒免職となるのが相場で、
行為者本人の直属の上司に対しては、監督不行届として停職や減給・・・
という私の印象からすると、張り紙はがしが収賄や横領に匹敵するのかと
疑問に思わざるをえない。相場から大きく外れている気がしてならない。

3か月・30%の減給という落とし所でどうよ?
甘いという人もいるかもしれないが、実際にこの処分を受けたら、
けっこうキツイと思う。



公務員は、利潤や損益という制約を受けていない。
その代わりに、首長をはじめとする上司の命令に従うという制約を受けている。
規則や命令に従わなくても、実害を伴う処分を受けないのであれば、
公務員ほど楽な仕事はない。
好き放題のやりっぱなしして、時々「今後は気をつけるように」なんて文書が来ても、
クルクルっと丸めてゴミ箱へポイ♪で済んでしまう。
これでは組織は成り立たない。

公務員の仕事は、規則や命令に従うことだ。
融通をきかせることなく、形式的に、杓子定規に。


『ヒューマン・アクション』L.v.ミーゼス著 村田稔雄訳 342頁
もし公務員たちの最高の長(それが主権者である国民であろうと、至上権をもつ独裁者であろうと問題でない)が、公務員たちに自由裁量を許すとすれば、彼らのために自己の至上権を放棄することになるであろう。これらの公務員は、無責任な役人となり、その権力は国民ないし独裁者の権力を上回り、彼らの長が要望していることではなく、自己の好きなことをするであろう。このような結果を防ぎ、公務員たちを長の意思に従わせるためには、あらゆる点について業務処理を定めた詳細な指示を与えておく必要がある。それによって、公務員は、これらの規則を厳守して、すべての業務を扱うことが義務となる。具体的問題のもっとも適切な解決と思われる方法へ、行為を適応させる自由は、これらの規則によって制限される。彼らは官僚、すなわち、あらゆる場面に所定の非弾力的な規則を守らなければならない人々である。

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