若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

ふるさと雇用再生特別基金事業は「半分成功」? ~ 補助金で見えなくなったもの ~

2012年07月17日 | 政治
○ふるさと雇用再生特別基金事業 概要
=====【引用ここから】=====
事業のアウトライン
・地方公共団体は、地域内でニーズがあり今後の地域の発展に資すると見込まれる事業のうち、その後の事業継続が見込まれる事業を計画し、民間企業等に事業委託。(地域の当事者からなる地域基金事業協議会において事業選定等)
・民間企業等が求職者を新たに雇い入れることにより雇用創出。

事業の規模 2500億円(労働保険特別会計)
    ※平成20年度2次補正予算による措置

=====【引用ここまで】=====


国が都道府県に交付金を投げ、都道府県がその金で基金を作り、都道府県や市町村が「地域内でニーズがあり今後の地域の発展に資すると見込まれる事業のうち、その後の事業継続が見込まれる事業」を計画して民間委託し、その人件費を基金から支払おう、という、ふるさと雇用再生特別基金事業。

これが、平成23年度末をもって終了となった。
その結果が報じられた。


○“失業者対策の柱” 継続雇用は半数 NHKニュース
=====【引用ここから】=====
リーマンショックのあと失業者が急増したことを受けて、国は地域で継続的な雇用を生み出すため「ふるさと雇用再生特別基金事業」という雇用対策を打ち出しました。この対策は、企業などが新たな事業を立ち上げて失業者を雇った場合、交付金で人件費などの費用の全額を賄うもので、3年間の総事業費はおよそ2500億円に上りました。
高齢者への宅配サービスや農産物の直売所など全国でおよそ7000の事業が新たに生み出され、ことし2月の時点では2万6500人余りが雇用されていました。
ことし3月末でこの事業が終了したことから、厚生労働省が、4月に追跡調査したところ、継続して雇用されていた人はおよそ1万3000人と半数にとどまっていたことが分かりました。
このうち正社員は、およそ6800人と全体の4分の1でした。
これについて厚生労働省は、「雇用を生み出す一定の効果はあったが、十分だったかどうか検証したい」と話しています。

=====【引用ここまで】=====


んで、このNHKニュースの根拠となる、追跡調査の結果を探してみたが、ちょっと見つけられなかった。ちなみに、平成23年度末のデータは、


○ふるさと雇用再生特別基金事業 平成23年度実績
=====【引用ここから】=====
      事業数  雇用創出数(人)   事業額 (円)
1 北海道   103     386    1,648,503,619
2 青森     232    1,044    3,098,946,884
3 岩手     284     927    2,692,270,505
4 宮城     168     946    2,393,002,336
5 秋田     223     812    2,547,826,707
      ・
      ・
      ・
 合計    7,332    32,679    99,874,583,354

=====【引用ここまで】=====


となっている。

補助金が無くても継続できる事業なら、企業家が利益を求めて実施する。厚生労働省は「地域内でニーズがあり今後の地域の発展に資すると見込まれる事業のうち、その後の事業継続が見込まれる事業」の人件費に交付金を出すとしているが、そんな事業があれば、銀行が金を貸すであろうし、出資者を募ることもできるであろう。

実際には、地域内にニーズが無いか、事業継続が見込めないかのどちらかだから、銀行も出資者も無視する。役場の人間に「地域内でニーズがあり今後の地域の発展に資すると見込まれる事業のうち、その後の事業継続が見込まれる事業」を計画する能力はない。それが出来る奴なら、役場を辞めて企業家になっている。

役場の人間に出来るのは、「地域内でニーズがあり今後の地域の発展に資すると見込まれる」ように書面上は見えるような計画書を仕上げ、交付金からの補助を滞りなく受けるようにすることだけ。役場の人間が地域内のニーズを掘り起こして継続可能な事業を実施できるなら、そもそも地方はこんなに駄目になっていない。

この手の補助事業は、地域内でのニーズに応え、事業を継続し、収益を上げている企業から税金を徴収し、継続の見込みの無い非効率な事業にその金を渡すという、無駄そのもの。この無駄に2500億円も投じられた。

都会で働く皆様、大変申し訳ございません。
納税者の皆様が納めた税金2500億円は、こうして、地方の非効率な会社を一時的に潤すためだけに費やされました。


NHKの報道によると、補助対象となっていた26,500人のうち、半数の13,000人が継続雇用となり、残り半分は雇用が終了している。役場の人間の立てた計画のうち、半分は「事業継続が見込まれる」という点で失格だった。

では。

半分は継続雇用となっているのだから、役場の人間のうち半分は「事業継続が見込まれる」計画を立てたので合格点をあげて良いだろうか。また、仮に、継続した雇用が半数の13,000人に留まらず、26,500人全員が継続雇用となっていたら、このふるさと雇用再生特別基金事業は「大成功!!!」と胸を張って言って良いのだろうか。


私はそうは思わない。


厚生労働省は、この事業の対象となった元失業者の人数を何気なく「雇用創出数」とサラッと表現しているが、ここが落とし穴。

もし、民間企業が
「何か、新卒じゃなくて失業者を雇用したら国が金をくれるらしい。ちょうど新しく人を雇おうと考えていたから、失業者を雇って補助金を貰った方が得だ」
と考えて、この制度を利用していたとしたらどうか。これは雇用を「創出」していない。単に新卒者から失業者へ雇用を移転させただけだ。

補助金を投じた事業の成果を考える際に、補助対象者、補助利用者の数だけを積み上げて「成果があった!」というのは間違っている。補助が無かった場合とを比較しないと、本当の効果は見えてこない。
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