めがね
「めがね」を観た。
面白かった。ゆる~く、チカラが抜けた傑作であり、肩凝り治ります。
ケータイ漬けのお子さまや、マジメ眼鏡をかけている方、黄昏れる才能の無い方々にはお勧めしません。
いや、腹立つかも知れません。
事件は無い。タエコほか謎の男女が島の民宿に集まり、たそがれている内に心が解け合う。
そして、一人ずつ島を去り、また同じ季節に集まってくる。
海はエメラルドグリーン。浜は白い砂。
潮風はいつも草木を揺らし、民宿の部屋を吹きぬける。
美味そうな家庭料理の数々が目を楽しませる。
朝は、ゆる~いメルシー体操で始まり、美味い朝食の後、することは編み物か釣りしかない。
カキ氷を食べ、マンドリンを奏で、たそがれる。
そして美味しい夕飯。この繰り返し。
会話はあまり無い。たまの話もちぐはぐに終わるのに、何故か心が通ってゆく。
何故「めがね」かといえば、5人全員が眼鏡をかけていること。
ど近眼のタエコが島を去る時、眼鏡を落としても、拾おうとしない。後日、民宿のコージが突堤でその眼鏡を釣り上げる。意味ありなデキゴトだが、深読み禁止。
ま、オトナの童話ですからね。
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そんないい加減な映画だけれど、観終わった後の幸福感と充足感は、「Shall Weダンス?」や「阿弥陀堂便り」以来のものだった。
南の島の美しさは「青幻記」や「ナビイの恋」に劣らない。だが「めがね」には悲しさや激しさが無い分、疲れない。
森男も民宿「ハマダ」でたそがれるなら、な~んも要らない。漢方薬のような映画だった。
たまに流れる音楽は静か。大貫妙子の主題歌も、ゆる~く澄んでいて心地良かった。
もう一度観たい映画である。
▼余計なことだけれど、登場人物。 (ここと、次の粗筋は、なるべく読み飛ばして下さい)
タエコ(小林聡美)。始め無愛想、ハマダに不快感。次第に打ち解ける。大学の講師らしい。
ヨモギ(加瀬亮)。研究員か? タエコを追ってハマダに来るが、な~んも起こさない。
コージ(三石研)。ハマダ主人。野離しの雌犬だけが家族。料理は達者。客数増は望まない。
サクラ(もたいまさこ)。ハマダに毎年ふらりと来て突然去る。従業員として滞在。巫女のよう。
ハルナ(市川実日子)。島の高校教師。「死にたい」が口癖。辛辣で親切。食事・休憩に来る。
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▼読まない方がいい粗筋。
空港に大荷物のタエコと軽装のサクラが降り立つ。
タエコ、ハマダに着くが、歓迎される風もなし。コージ、ここはたそがれる場所、と優しくマイペース。
朝、タエコはサクラの気配で目覚める。「朝ですよ。いいお天気ですよ」、と起こされる。
3人家族のような朝食。正しい姿勢で美味そうに!
島には観光地は無く、スーパーで毛糸を買い、浜辺で編み物に耽る。これを黄昏状態という。
サクラ、絶品と評判のカキ氷を勧めるが、タエコ、苦手と「拒否」。
たまにカキ氷の客はあるが、代金は物々交換か、子どもの場合は折り紙など。
夜、ハルナが加わり庭先でバーベキュー。美味そう!
朝、サクラの気配でタエコ目覚める。「朝ですよ.......」、と。
浜辺から音楽が。メルシー体操とやらをやっている。サクラ、誘われるが「拒否」。
ハルナが加わり4人家族のような朝食。美味そう!タエコ、何か違和感。
そこで、一旦は宿替え。しかし、直ぐ戻ってくる。
以後、たそがれる毎日。
ヨモギがやって来るが、別に何も無く、体操、食事、釣り、編み物、カキ氷、食事の繰り返し。
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....... どうです、つまらないでしょ。ところが、これが面白い。
いい環境で、ケータイもTVも無く、美味い物を食い、海を見て、夜は眠れば、心は解けてくる。肩の力は抜けてくる。
無愛想なタエコが次第に明るくなり、メルシー体操にも加わり、料理を手伝うようになる。カキ氷も欲しくなる。
去る時は笑顔になる。
タエコのモノトーンな衣装が、1年後ハマダに来て、カキ氷屋の開店準備を手伝う時にはピンクの花柄になっている。
サクラが帰って来たときには、昨年タエコが編んだ赤くて長いショールを纏っている。
これでお終い。
...... 後はきれいな主題歌が流れるだけ。
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画像「@」は「Cinema Cafe. net」HPの「大貫妙子」頁 からお借りしました。
「めがね」公式HPより、この頁の末尾の関連記事の方が面白く、見易いです。