久し振りに笹山尾根を歩いた。
尾根道の北側の藪がばらばらに切り払われて、下にある東急こま武蔵台団地の屋根の波が見えるようになった。
藪を刈ったのは、最近急に増えた団塊じいさんたちのようだ。
団地の住民は山の木が大嫌い。
落葉が迷惑だ、日陰になる、と目の仇にして、所有者の東急不動産に掛け合っても、業者は物件を売りつくして、系列のスーパーは撤退し、後は野となれ山となれ。下刈りや間伐なぞするはずがない。
開発する時に緑地として残した団地周辺の急傾斜地は、以前は開発業者から市に引き渡されたものである。
しかし昨今は、市に管理責任が発生するし、僅かであっても税収が減る。緑地は宙ぶらりんとなった。
そこで時間を持て余した団塊じじぃたちが実力行使を始めたわけだ。
実力行使は大いに結構なのだが、県が雇った伐採業者同様、後始末が全然できてません。
伐採の仕方も落第。木は胸の高さで切り倒し、倒した木が他の木に倒れかかったまま。
大枝小枝や刈り払った潅木類は滅茶苦茶に投げ出したまま。
山津波に襲われた跡みたいだ。
醜いものが見えない、また見ようとしないのはわれわれ日本人の悪い癖である。
この種の自発的な作業に報酬があるわけではない。
急がずに一作業一片付けの原則を守り、切り払った雑木や潅木を適所にきちんと積み上げれば、御舟や玉堂が描いたような見事な雑木林になるのだ。国営武蔵丘陵森林公園に、よく手入れした雑木林があるので見て欲しい。
手を入れず放っておけば里山が生まれる、と勘違いしている団地住民が多い。
行政も、団地の自治会も、いま何とかしなければ、団地の不動産価値は下がる一方である。
団地が美しい里山に囲まれていれば、この団地で生まれ育ち、街へ出て行った若い人が、
子どもを連れて帰って来るだろう。
130303