フリオ・イグレシアスのCD「TANGO」は残念作である。
チャッ、チャッ、チャッと心地のいい調子でタンゴを歌うのかと思いきや、伴奏がシンセサイザーなのでガッカリだ。
シンセでも富田や宗次郎ならそれなりに素晴らしいが、このCDの場合、音がモヤモヤとして誠に歯切れが悪く、本場アルゼンチンタンゴのギラギラした情趣が無い。
バンドネオンだけは本物を使っているようだが、あとは全てシンセの音で、フリオともあろうものが、伴奏楽団の人件費をケチったな。
「LA CUMPRSITA」 マトス・ロドリゲス作曲
エンリケ・マローニ/バスクアル・コントゥルシ作詞
高場将美対訳
おまえに知って欲しい
私の魂には まだおまえのために抱いていたあの愛情が
生き続けていることを......
きっとおまえは知りはしないだろう
ただの一度もわたしがおまえを忘れたことがなかったことを
過去を振り返れば おまえもわたしのことを思い出してくれるだろうに.......
友達はもう ただの挨拶にも訪ねてこない
つらいわたしの悩みを だれも慰めてくれようとはしない......
おまえが去っていった日から わたしの胸は痛むばかり
おんなよ 言っておくれ わたしの哀れな心におまえは何をしたのだ
(以下始めの「おまえに知ってほしい.......」と繰り返す)
「ラ・クンパルシータ」とは「小さな仮装パレード」の意味の由。
曲が先にあり、詞を後から付けて編曲し、舞台劇で使って人気沸騰したそうだ。
上は直訳らしく、こなれた訳詩じゃありませんね。だいいちシンセの伴奏に乗らないや。
だから意味も発音も分からないけれど、原詩のままフリオと合唱すると、森男もイイ男になった気がして陶然とします。うふふ。
なお、フリオの「TANGO」の全12曲のサワリが試聴が出来る。
他に「CAMINITO(小道だったかな)」がいいけれど、お暇だったらお試しあれ。
ところで、
①CD箱の裏側の写真で、お姉さんの左足が無い。
どこにあるのかダンスがお仕事の「勿忘草」さん教えて。
②フリオの顔写真はキザ。冒頭の写真は海外旅行パンフから転用しました。
♪しつこいアンコール♪
フリオに以上の歌唱力を持つ菅原洋一さんの場合は、加茂六郎訳詩で。
去りにし面影よ
今宵もまた胸にせまりて
悩ましくくるえる
わが骸はてなく
さまよい歩みゆく
たのみなき心に我は泣きぬ
君よ今いずこ
町の酒場の灯に
涙してたたずむ
あヽひと時
今はうつろなる
恋し君しのび
せめて今宵 踊り明かし
悩み忘れん
涙を隠して
ほほえみ踊れば
いとしの面影
わが胸にかえる
赤きバラの酒
飲みほし歌えば
甘き恋の日ぞ
しのばる
アウフレッド・ハウゼ管弦楽団の伴奏で歌う菅原のタンゴ特集は、
贅沢で優雅なコンチネンタルタンゴに変身して、悪くはないが、訳詩が古過ぎ。