鏡台と、和服を保管する総桐製の重ね箱が要らなくなっていた。
鏡におのれの醜い姿が映るのも癪。見事な総桐製でも棺桶にはならない。
かといって壊すのは、古いながらもまだガッチリしていてもったいない。誰か使ってはくれまいか。
不用品回収業者に見積ってもらったら、およよ、合計ななななんと2万円支払わなければならないとはね。
矢鱈に快活で愛想がいいお父さんは身分証明書を示し、公定金額表を見せ、2万円の根拠を詳しく説明してくれた。
そして二つの行く末は、木屑にして燃やすしかない、とか。
ふむふむ、なるほど、森生が世間知らずで、ケチンボだったのであるな。
結局、頑丈で重く扱いにくい鏡台だけを9600円も支払ってお父さんに引渡した。
川越市からやって来たお父さんはわが買物難民団地で引っ張り蛸だと自慢。いつでも呼んで下さいね、だとさ。
ああいいですよ、桐箱は森生が壊して小さくし、可燃ごみにして、ごみ収集日に出すことにする。
壊すのはちょっと惜しいし面倒臭いけれど、暇が潰せ部屋が広くなり、1万円節約できる、と納得することにした。
人生の店仕舞、後始末は、大変だよ。
130113