昭和を代表する人がまた一人、亡くなった。
今度は小説家の野坂昭如さんである。
週刊誌で度々読んだ野坂の文章は、悲観的過ぎ、くどくどと長たらしく、好きではなかった。
だが中年御三家の生き残り永六輔さんに送った最後の手紙に、
日本は瀬戸際にさしかかっている(12月11日付朝日新聞朝刊35頁文化・文芸欄)
という、現在の日本を危惧するご意見には、森生も賛成します。
未だに愛蔵している野坂昭如本の一つは「エロトピア1・2」である。
これ、最高ですね。サイテイという堅物がいるかもしれませんが、そういうお方とは付き合いたくありません。
電車の中では読み難い内容だけど、野坂の本文と山藤章二の挿絵との掛け合い効果が、純真無垢な森生青年を密かに、しかし大いに楽しませてくれた。
なおこの画期的な「競作」の成功で山藤は大いに認められ、森生は長い間、山藤を追っかけている。
妹を餓死させた過酷な実体験を小説化し、直木賞を受賞した「蛍の墓」は哀切極まりなく、余りにも酷く、再読する気にはなれない。
この本はじじぃが死蔵しているのは勿体ない。安倍晋三をなんとなく支持している若者に進呈したい。
野坂は無頼派の作家だった。
大島渚監督にアッパーカットを食らわせたのは痛快だった。
もっとも、傷害事件化や訴訟など七面倒臭い手続きを割愛し、数発殴り返した大島渚監督も立派だった。
田中角栄と選挙で争ったこともある。
原稿が間に合わず、雑誌「面白半分」は数頁を白紙のまま発売する羽目に。
編集長は急性胃潰瘍を発症し、この事件は業界からはヤンヤの喝采と共に歓迎された。
一時、歌手として売り出していた。
そのほか「男と女の間には深くて暗い溝がある」という「黒の舟歌」を作詞している。
この歌は長谷川きよしと加藤登紀子の歌が知られているが、本人の声でお聴き下さい(動画はアニメ作品のようで、少し不気味ですが)。
童謡「おもちゃのチャチャチャ」が野坂の作詞とは知らなかった。
脳梗塞で長い間療養中だった野坂昭如さんは、この歌で賑やかに送り出しましょうね。
エロトピア1・2をじじぃがもう一度読んだら、果たしてどんな反応がありますかね。
もう効かないだろうな
挿絵は全て「エロトピア1・2(1971年文藝春秋刊)」から。山藤章二さんが描きました。
151211