直木賞を受賞した「海の見える理髪店」と「神去なあなあ日常」の続編「神去なあなあ夜話」を読んだ。
理髪店の方は、心にキズを負った老幼男女が、いろいろな出逢いを経て、癒されてゆく6本の短編集だ。
昔、朝日夕刊で愛読した「愛しの座敷わらし」の作者・荻原浩らしい、技巧を凝らした、気持ちのいい6話である。
夜話の方は、お仕事小説が得意な三浦しをんによる、本邦初の林業小説であり、青春小説であり、エンタメ小説である。
前編「日常」では、母と教師の企みで押し付けられた林業にも、物凄い山奥の神去村にも、何かと斜に構えていた平野勇気19歳。
20歳になった「夜話」では、神去村と林業の魅力に目覚め、意気軒高。年上の女教師と、ななんと「キキ・キス」ができた。
そして、村の個性的な住民の人生や、村のしきたり、迷信とは言い切れぬ言い伝えを、共感を以て見つめ、報告してくれる。
2冊ともさらりとして面白く、一気に読み終えた。
ただ、理髪店は、へぇそういうことですか・なるほどね、でお終い。
夜話は、一癖も二癖もある老人が3人も登場し、3人とも現役。誰からも敬われているのが愉快である。
勇気と、滅法気が強いマドンナとのギクシャク・ラブの行方が気になるので、是非、続々編を上梓して欲しい。
出版業界では本屋大賞より直木賞の方が格上なのだろうが、森生には本屋大賞候補だった日常と、続編の夜話の方が面白かった。
だから、買うなら1冊というなら、断然「神去なあなあ夜話」の方ですね。日常の方は既に文庫本もあります。
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海の見える理髪店・神去なあなあ日常・神去なあなあ夜話
160913