年齢肌は隠しようもなく、腕や脚は市田柿のように粉を吹いている。やはりアブラが足りないようだ。
お釈迦さまも弟子たちに「たまには肉を食べなさい、そうしないと身が持たないよ」とおっしゃったそうだ。
森生だって、毎日懐石料理と精進料理ばっかり食していては身が持たないのである。
そこで切り株じぃさんと連れ立ち、西武線踏切脇にある全国的に有名なステーキ専門店に乗り込んだ。
この店のいいところは、サラダほかステーキ周りのあれこれがバイキング形式であることだ。つまり取り放題、食い放題というわけ。
だが森生はそういうことには騙されない。目的はあくまでもビーフステーキだった。
待つことしばし。
ジュージューと音を立てながら期待のステーキが運ばれてきた。
姿形は立派なもので、駅上のホテルヘリテジと較べても、多分引けをとらない豪華なステーキだった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/d7/bbef582ee4be3f0249e1cdefa26cbb2b.jpg)
........と、良かったのはここまで。
早速ナイフとフォークで切り分け始めたが、切れないんですねぇ、これが。
フォークには草刈鎌のようなギザギザがあるけど全然切れない。フォークに慣れない所為もあるが切れないものは切れない。
やがて鉄皿の上は修羅場になった。
悪戦苦闘した末、小さく切り分けたステーキを口にした。
モグモグモグ・・・・・・・モグモグ。いくら噛んでも、噛み切れないんですねぇ、これが。靴底より固い。
このまま噛み続ければ、保険外で特注した入歯が折れてしまうので、やむを得ずカタチのまま嚥下した。
時は夜7時。周りは家族連れや若い仲間たちで満席である。
がやがやわいわい、和やかな声で店内は満たされていたが、「肉が固い」という声は全く聞こえなかった。
じじぃ連れは溜息。
後期高齢者にも肉は必要である。
だが同じ肉なら、屑肉を挽いて混ぜ物でまとめたハンバーグステーキの方が安全安心で安価である。
それとも後期高齢者は低カロリー食を常食し、枯れてゆくほかないのであろうか。悲しいね。
161205