この正月で昔風なら私は九十八になる。
まさか、こんなに長生きするとは・・・・。
ただし、肉体は正直なもので、歳月と共に衰え、年中、身じゅうのあちこちが痛い。
家の中では杖もつかず歩いているが、その背は丸くなり、ひどく歩き方が頼りない。
毎日、口癖のように死んだ方がまし~と呟きながら、二度の食事はけろりと
食べているから、まだ当分死にそうもない。
得度して四十六年になるのも、すべて仏さまのおかげと感謝しているものの、
長生きが仏さなのおかげとは思えない。
おかげがあるなら、さっさとあの世へ出発させて下さりそうなものだと思う。
あの世へのキップがまだ頂けないのは、出家したくらいでは許されない悪徳
の数々を、私が積んでいるからであろう。
上は、寂庵庵主瀬戸内寂聴尼による月一連載随筆の一部である。
(11日付朝日新聞朝刊文化文芸欄)
昔風に数えれば森生83歳は、何もかもが寂聴尼の足元にも及ばない。
だけど、あと10年で、少しでも近付きたい中途半端なじじぃです。
181012B