大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!1112『拓美とカラオケ』

2025-01-13 17:29:41 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  小悪魔だけどな(≧▢≦)!

112『拓美とカラオケ』   




「で、本当なのかい、このAKRが……」

 トランプが仁和のポーチに収まると光会長が顔を上げたぞ。

「ええ、もう一人いる」

「それを足して四つ葉のクローバーに?」

「いずれはね……」

 紅茶の香りを楽しみながら続ける仁和。黒羽と光会長は、お香と紅茶の香りが混ざって半分夢を見ているような気持ちになってやがる。

「仁和さんは、どこで気づかれたんですか?」

「神楽坂のプロモを撮っているときにね、体と魂が合ってない子がいて……錯覚かとも思ったんだけど、ここに来て確信になったの」

 仁和は、壁にかけてあるメンバーの写真の一つを見つめる。その視線の先には出昼マユの笑顔の写真。

 ウウ、なんだか写真を通してマユの実体を見られてるみてえで、思わずクシャミが出ちまった。


 ヘクチ(>△<)!


「ごめん、待たせちゃった」

「ううん、わたしも今来たところだから」

 千代田線A駅前で、久々に拓美と待ち合わせ。

 拓美はAKRの出昼マユ、マユはアバターの仁科香奈の姿。ややこしいから、ここからは中味の魂の名前でいくぞ。

 二人は、駅近のカラオケの個室に収まった。ここなら、二人だけで話ができるからな。

「わたし、なんだか変なの……」

 ブルゾンも脱がずに拓美がポツンとこぼす。

「どんなふうに?」

「……潤を助けながら、感じたの……わたしってば、何がしたいのかって」

「それはさ……」

「うん?」

「ええと……アイドルになって自分を表現すること……的な?」

「うん、だから……マユの体を借りてここまでこられたんだけどね」

「……わたしも、行きがかり上、アイドルになっちゃったけど……ま、ドリンクでも飲みながら話そうか」

「え、あ、そうね。熱いのがいいわね」

 拓美もやっとブルゾンを脱いで、二人でドリンクを取りに行く。

 ホットチョコかカフェオレか、それともミルクティーかと迷って、やっと調子が戻りかけ、トレーに載せたドリンクを「おっと」とか「ちょ、ヤバ」とか言いながら個室に戻ると少しは普通に喋れるようになったぞ。

「わたし、本当は幽霊でしょ。それをマユに無理言ってアバター借りちゃってさ……最初は、レッスンの時や本番のとき、AKRとして活動するときだけ貸してもらうって約束だったじゃない」

「そんなことなら気にしないでよ。わたしも仁科香奈ってアバターが気に入ってるし。なにより魔界の補習受けなくてすんでるし(´>ω∂`)」

「ありがとう……でも、時々だけど、とても不自然な気になることがある。わたしは、とっくにあの世に逝って、もし、あるんだとしたら、そこで次に生まれ変わる準備をしなくちゃならないんじゃないかって……アツ!」

 飲みかけのホットチョコ、薄皮の下が熱くて目を✕にする拓美。

 目と目が合ってマユは続けたぞ。

「気にしすぎ。もし、わたしたちの入れ違いが間違っていたら、サタンやミカエルとかの悪魔やら天使のエライさんが黙ってない。わたしが補習サボるためだけに、こんな状況が許されたりしないわよ」

「う、うん……」

「悪魔はウソはつかないわ。さあさあ、そんな不景気な顔してないで。景気よく歌いまくろうよ、せっかくカラオケにきたんだからさ」

 ここは、言葉じゃなくて勢いだと思ったぞ。

「う、うん。そうだね」

「そう、なるようになるって!」

 で、二人は、アイドルにあるまじく、十曲あまりを熱唱して、喉をつぶしちまった……(^_^;)。


「ほう……良くできている!」


 光会長が、歓声を上げた。

「まるで、実在してるみたいだ……」

 黒羽も感心して、写メってみやがる。

「あ……写メると、体が透けて見える」

「そう、そこが最後の改善点です」

 司準教授が腕を組んだ。

「ルックスも少し手を加えて欲しいかなあ」

 仁和が注文をつける。

 ここは、T大学情報工学部の研究室。三人は、司準教授が作った3Dのバーチャルアイドルのプロトタイプを見に来たところだったぞ。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  


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銀河太平記・267『マーマレードを預かって西之島を目指す』

2025-01-09 14:22:05 | 小説4
・267

『マーマレードを預かって西之島を目指す』 東鈴 




「ねえ、これを預けられた意味って分かってる?」


 西之島に向かう筋斗雲のコクピット。

 あたしと悟兵の間には大時代な袱紗に包まれたガラス瓶が収まっている。

「お手間だけど、これを西之島のお岩さんに渡して欲しいの」

 官邸のサンルームで預けられたときは――籠められた意味は何だ?――と勘ぐってしまった。

「フフ、東鈴は深読みしすぎ。作り過ぎたからお知り合いにお裾分けしたいだけなのよ(^▽^)」

「あ、はあ……」

「劉宏大統領に、果醤(コージャン)作る趣味あったアルか?」

「いいえ、作ったのはあの二人ですよ」

 サンルームの外、中庭にはこないだのモンゴル事変で見かけた女性中尉、ええと胡盛媛だったっけ。その中尉が、ホッソリした男の人といっしょに花の世話をしているのが見えた。

「おお、フーちゃんアル!」

「あ、声かけちゃダメよ」

「あ、ああ……」

「男の人は事故で記憶を失っていてね、うちで預かっていて、フーちゃんにお世話を頼んでるの。よろしくお願いするわね、孫大人」

 二人はとても穏やかで、なんだか、生物部の先輩と後輩が学校菜園の世話をしてるみたい。男性の目……が見える距離じゃないんだけど、受ける印象は春の日向のように暖かい。アーカイブから情報を拾えば高い確率で正体を知ることができるんだけど、そんなことは承知の上で「声かけちゃダメ⇒ここでは詮索しないで」と言っている。だからやらない。

 そして、中庭の二人には直接に会うことはしないで筋斗雲で北京を離れた。

 離れるにあたって、大統領は「握手しよう」と手を差し出してきた――ああ、やっぱり――そんな感じがした。

 おそらく、素体としてのあたしと大統領は姉妹の関係。たぶんJR西。

 あたしはJシリーズのロボット、いろんな事情や経緯があってカルチェタランの倉庫に収まっていた。姉妹は他にも数体あったはず……でも詮索はしない。検索禁止のプログラムがされているわけじゃない。なんだろ……ロボットに『言い伝え』というのはおかしいんだけど、そんな感じ。

 一昨日、鈴麗の体の一部を移植した時の記憶があいまい。老婆婆の他にもう一人、孫悟でもない人間が居て、移植のいっさいをやったような気がするんだけど、夢のようにボンヤリしている。

「あそこに居たのは、成治天皇五世孫の森ノ宮親王殿下アルな」

「あ、詮索しちゃダメだって!」

「大っぴらには言わないアルよ。ほんとうにダメアルなら、見せてないアルよ。劉宏も迷ってるみたいアル。ちょい出ししながら様子見てるアル」

「ん~~そうかもだけど、ちょっと下品」

「ええ、東鈴、ワシに下品言うあるかぁ!?」

「うん、で、そのアルアル語やめてくれない。緊急事態でもないんだからさ」

「そうか……それでは、普通に喋ろう(-_-)」

「え、なに、そのオスマシダンディーは!?」

「久しぶりの西之島でもあるからな、島には馴染みも多い、ドンパチも収まった。ゆっくりリゾート気分で羽根を伸ばすとするか……ん? どうして目をつぶるんだい?」

「あ、声だけなら、けっこうイケてるかもだから」

「え、そう……って、目を開けたら台無しってことぉ!?」

「うん」

「ああ、傷つくなア、傷つくアルよお!」

「ああ、もう、だからアルアル語わぁ! あ、目開けちゃったじゃない! もう、着くまでそっち向いててよ!」

「ああ、もう東鈴わあ!」

「もう、わあわあウルさい!」

「うるさいくらい辛抱するアル!」

 ガクンガクン

「キャ!」「うわ!」

『操縦が不安定なので、オートに切り替えますよ』

 しびれを切らした筋斗雲がオートに切り替えて、直近のコースで西之島を目指した。

 でも、オートの声は老婆婆ソックリ。

 島に着いたら、人工音声を切り替えようと、これだけは意見が一致した。



 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!111『エキストラジョーカー』

2025-01-09 09:41:56 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
111『エキストラジョーカー』 




「本当なのかい、このAKR47が本当は48だって」


「ええ、たしかよ。おそらくオーディションの段階まではね、48人いた……」

 仁和は、あとの言葉を、たゆとう香の芳しさに滲ませやがった。

「ちょっと、トランプをやってみましょう。簡単に勝負のつくババ抜きよ」

 慣れた手つきで、カードをシャッフルし、手早く仁和はカードを配った。

「トランプは、ダイヤ、ハート、クラブ、スペードの四種類で、それぞれ春夏秋冬を現してるの、で、それぞれ1~13まで。足すと91。で、4をかけると……」

「364……ですね」

 黒羽が暗算して、光会長に札をひかせた。ジョ-カーを引いたみてえで、渋い顔になりやがる。

「ホホ、ミツルくんは分かり易いわね。今のジョーカーでしょ」

「知らん(>o<)!」

「364は一年を表すわ」

「一年は365だろ」

「ジョ-カーを加えると」

「365ですね」

「ジョーカーは二枚あるのよ」

「ああ、エキストラジョーカーだろ」

「あ、なるほど。普通のゲームじゃ使いませんね」

「そう、ジョーカー二枚で閏年。考えた人って、偉いわね」

 光会長は、仁和にジョーカーを掴ませそこなった。

「で、ダイヤは春、ハートは夏、クラブは秋、スペードが冬と四季まで表現して……」

 と、仁和がウンチクをたれているうちにババ抜きは終わった。

「ちょっと変だぞ。ジョーカーとスペードの4が残っちまった」

 光会長が不足を言った。

「そう、最初から、クロ-バーの4が抜いてあるから」

 仁和が、手品のようにクラブの4を出した。

「ずるいよ、これは」

「……これが、仁和さんの謎かけですね」

「そう、最後に気づくの、一枚足りないって」

「ぼくは、途中で気づきました、捨てられた札にも、回ってくる札にもクラブの4が見あたらなかった」

「さすがは黒羽くん。わたしもいっしょ。途中で一人足りないことに気づいた……最初は神楽坂24のプロモの撮影だった。ひとり人間じゃない子が混じっていた……けしてワルサをするような者じゃなかったけど。で、オモクロに念を飛ばしてみたら、そこにも一人。これもワルサはしないわ。そしてAKRを調べたら、すぐに分かった。人の魂は持っているけど、人の体じゃない子がいることが」

「で、それは、いったい誰なんだ?」

「それは言えないわ。とてもデリケートで、切ないことだから」

「じゃ、なぜ分かったんだ。それぐらいは教えてくれよ」

「光クンって、偶数が好きでしょ。芸名だって、奇数から偶数にしたし、フォークやってたころも四人グループだったでしょ」

「そうか、47の奇数、ちょっと変ですよね」

「……そう言えば」

 光会長がアゴを撫でた。

「で、とりあえずクロ-バーの4をめざすの」

「あの、クラブじゃないんですか?」

「クローバーと言っても間違いじゃない。まあ、動き出したから、上手くいくわよ」

 仁和が、クラブの4をクルリと回すと、3に変わった。しかしクラブの三つ葉は有りえねえ四つ葉に変わっていたぜ。


 マユのアバターに入った拓美は、みるみるうちに歌も振りも上手くなってよ、ついてこられねえ奴らの指導をするまでになったぞ。そんで、だれ言うともなく、AKRはリーダーが二人になった。大石クララと出昼マユ。

 むろん、マユの中身は浅野拓美だけどな。

 拓美の毎日は充実していた。でもよ、もどかしさとも違和感とも言えねえ気持ちが膨らんできやがる。なんだかジョーカー二枚のトランプみてえでよ。

 拓美は、本物のマユである仁科香奈に無性に会ってみたくなってきやがった……。




☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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滅鬼の刃・エッセーラノベ 36『眼病始末記・1』  

2025-01-08 16:35:22 | エッセー
 エッセーラノベ    
36『眼病始末記・1』  




 昨年の秋のことです。パソコンで文章を書いていました。

『大』と打つと「ナ」に、『橋』と打つと「喬」になってしまいます。テレビのニュースを見ると、アナウンサーの口が消えてしまいます。ロングになると首ごと消えてしまいます。

 これはマズイ!

 すぐに駅前の眼科に駆け込むと、ドクターが、こう言いました。

「両眼ドライアイです」

 ああ、パソコンの画面などを長時間見ているとなるアレだ、要は目が乾いている。

「そして白内障です」

 あ、ああ、歳を食ったら水晶体が濁るアレだ。

「さらに、左の目が網膜レッコウです」

 え? これは直には意味が分かりません。

「この映像で説明します」

 診察の前に検査技師の女性が撮ってくださった映像がモニターに映ります。

 湾曲した網膜の断面図、その湾曲の真ん中が途切れています。

 こういうものには疎いわたしでも分かりました。網膜の真ん中が欠けているのです。

「この穴の開いたところが像を結びませんので、欠けて見えるわけです」

「はあ……」

 間の抜けた返事をしましたが、ことの重大さはよく分かっています。

「放っておくと穴が広がるというか亀裂が大きくなって……」

「はい、見えんようになってしまうんですね」

「はい、そのとおりです」

 ドクターは、すぐに紹介状を書いて下さり、家から二キロ余りのT病院の予約まで取り付けてくださいました。


 さあ、青天の霹靂、目の手術をすることになってしまいました!


「往きはともかく、帰りは一人ではきびしいので、どなたか付き添った方がいいですよ」

 そうアドバイスしてくださって、困りました。

 その春から孫の栞は家を出て一人暮らしをしています。

 連絡は時どきラインでやっていましたが、そのほとんどが既読スルーです。

 今度ばかりは既読スルーでは済みません。

 やむなく、初めて電話しました。きっと『お掛けになった電話番号は圏外、あるいは電源を切っておられ……』の人工音声だと覚悟していましたが、予想に反して二回のコール音で繋がりました。

『はい、もしもし、栞です』

 めちゃくちゃしおらしい声なので――ああ、案じるより産むがやすし(;'∀')――と思いました。

「ああ、久しぶりだな栞ぃ、実はな、お祖父ちゃん……」

 そこまで言うと『ゲ、なんで電話してくんのよ! 店長と間違えたじゃん!』と、ニベもない返事。

 しかし、このつれなさに臆してしまうわけにはいきません。ことは緊急を要するのです。

「実は、網膜裂孔というのになっちまって、緊急に手術することになったんだ」

『もーろくれっこう?』

「耄碌じゃなくて、網膜。網膜に穴が開いて、放っておくと見えなくなっちまう病気なんで、手術なんだ。いや、日帰りできる手術なんだけどな、帰りは一人じゃ厳しいって先生もおっしゃるんでな。悪いけど、栞に付き添ってもらおうと思ってなぁ……」

『従弟のおじさんとかじゃダメなの?』

「え、Yか?」

『あ、うん、バイトのシフトとかきつくって、急には……』

「Yは坊主だぞ、病院に坊主はまずいだろ」

『いや、私服に着替えてもらって……』

「檀家周りの途中で着替えてくれなんて言えないぞ、いちいち寺に帰らなきゃならないんだから」

『…………』

「しおり?」

『ハア(ノД`) ……分かったわよ、時間と場所教えて』

「あ、すまんな……」

 と、かくして孫に付き添われて初めて病院に行くことになりました。


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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・169『二回目の三学期が始まった』

2025-01-08 11:01:20 | 小説
(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記

169『二回目の三学期が始まった』  




 ああ……雪だぁ…………


 戻り橋を渡ったわたしは盛大にため息をつく。

 吐いた溜息は即自動車の排気みたく白く目の前にわだかまる。

 今年は寒さひとしおの令和だけども、昭和の一月は、その上を行く。

 地球温暖化なんてウソだと思ってるけど、今朝の温度差を実感すると、感覚的に「そうなんだ」と思ってしまう。

 橋の向こうの令和は例年よりは寒いというだけだけど、昭和の方は夕べ降った雪が氷になって、うっかりしているとグリップの無いローファーでは簡単に滑ってしまう。

 ウワッ!  ムシシシ(((*`艸´)))

 言ってる尻から滑って、集団登校の小学生が遠慮なく笑いやがる。

 ウオ! キャ! ウワ!

 ププ( ´艸`)

 言った尻からガキどもも滑って笑ってしまう。

 やつらもわたしも今日から三学期。

 心を引き締めて学校に向かう。


「教室でのホームルームの前に生徒全員で大掃除をします。暮れの掃除が行き届いていないところもけっこうあります。気を引き締めて掃除に掛かるように。出席番号の奇数は教室、偶数は特別清掃区域。時間は20分。終了は放送で伝えます。かかれ!」

 保健部長の長瀬先生が朝礼台で号令かけて開始。

 ほとんどの先生たちは、そのまま職員室や教官室に戻ってしまう。

 この寒空、屋外で始業式というのも常識外れだけど、そのまま大掃除をさせるのもどうかと思う。

 先生はヌクヌクとストーブにあたってお茶とか飲んでるし、ろくに付き添いもしないし。

 10円男たちがやってた学園紛争はアホかと思うけど、今朝みたいに生徒を使ってると、奴らの言い分にも理はあると思うよ。

「雑巾がけどうする((((;゚Д゚))))?」

 体を揺すりながらたみ子が聞く。両方のポケットに手を突っ込んで言うから――やりたくない――という気分が漏れまくり。大晦日に麗しく巫女舞やってた人とは思えない。

「男子、サボってるしねぇ」

 そうそう、男子で真面目に掃除してるのは、ほんの二三人。

「お湯を確保してくるよ」

 ほんの二三人の中には10円男も居て、それだけでビックリなのに、雑巾がけの為にお湯を確保すると、どこかに行ってしまった。

「お湯無くても、雑巾ぐらいかけるけど……」

 日ごろ部活でやってる佳奈子は気軽なもんで、すでに人数分の雑巾を確保している。雑巾は、四月の配給から八カ月を経過して、定数分揃ってるクラスは多くない。10円男の気の周りようは、やっぱり伊勢半でバイトしたことが実ってるんだろうね。

「あ、戻ってきました」

 ロコが窓の外を指さす。10円男は技能員室でお湯を確保したみたいだ。

 なんだかバイトの延長みたいな感じで掃除を終えて五分余った。

「先生呼んできて、さっさとホームルーム終わらせよう」

 真知子が提案して二人で花園先生を呼びに行く。


 ワハハハハ ヒャヒャヒャヒャ クスクスクス


 職員室では三つのストーブに群がって先生たちが盛り上がっている。聞くつもりも無いんだけど、話題は株と土地の話し。まあ、冷静に見れば、自分の机で黙々と仕事の先生もいるんだけどね。

「先生……」

 小さく声をかけただけで花園先生は小さく頷いて、ホームルームのあれこれを持って立ち上がる。

 まあ、宮之森の標準よりはよくできた担任、よくできた生徒たち。

 
 二回目の三学期が始まった。




☆彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川                志忠屋のマスター
ペコさん              志忠屋のバイト
猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
辻本 たみ子            2年3組 副委員長  伯父:武藤頼政
高峰 秀夫             2年3組 委員長
吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲              2年学年主任
先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  長瀬(保健部長)  藤野先生(大浜高校)
須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
妖・魔物              アキラ      
その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん              伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!110『ミツル会長の発表』

2025-01-08 08:17:07 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
110『ミツル会長の発表』 




 一時危篤に陥った潤だったけどよ、懸命な治療と仲間の祈りが通じて一命をとりとめた……ということになってる。

 だけどよ、実際は拓美と話したことで頭上に迫っていたあの世を免れたってのは知っての通りだぜ。

 それからは回復も早くてよ、四日目には、ベッドに身を起こしてみんなと話ができるようになったぞ。


――AKR、仲間を救う命の連携!――


 特に拓美の処置が絶賛されてよ、潤の両親からも涙々の感謝、マスコミからも賞賛を受けた。ネットでも『AKRの奇跡』がトレンド入りしたぞ。

 ただし、アバターの出昼マユとしてな(^_^;)。

「はい、みんな、こっち向いて!」

「「「「「「はーい!」」」」」」

 ベッドの潤を真ん中に、入れるだけのメンバーが入って写真が撮られ、カメラが回ったぞ。

 十分という時間制限で取材を許されたんだ。

「時間がないので、自分が決定を言います」

 会長の光ミツルがメンバーの後ろから手を上げた。

「実際の活動は、退院後の復帰からになりますが、潤を加えた新ユニットを結成します」

 ウワァーーー(((((((( ゚Д゚))))))))!

 病室のみんなから、歓声があがったぞ。

「ユニットの名前は『三つ葉のクローバー』です」

 え?

 黒羽ディレクターが続けると、ょっとズッコケたぜ。

 ちょっと平凡というかインパクトがねえ……。


「平凡すぎやしませんか?」


 面会時間はあっという間に過ぎちまって、事務所に場所を移した記者会見。

 ベテランの芸能レポーターが声を上げたぞ。

「平凡だからです」

「え?」

「ちなみに、他のメンバーは、桜井知井子、矢頭萌。合計三人のユニットです。AKRの中でも、平均的な力の三人です。三つ葉のクロ-バーのように平凡だが、可憐で可能性を秘めています」

「将来、力がついたら、四つ葉のクローバーと改名することを宣言しておきます」

 ミツル会長と黒羽Dが説明すると「なるほどぉ~」って声が上がったぜ。

「なお、デビュー曲の作詞は、仁和明宏さんにお願いして、快諾を得ております」

「え、二和さん?」

「現在、申し上げられるのは、ここまでです」

「もっと詳しくお願いしますよ!」

 レポーターどもが食い下がる。

「できたら説明しますがね。わたし達も、まだここまでしか決めてないんです」

「あとは、そこでびっくりしている、知井子と萌に聞いてやってくれ」

 そう二人に振って、会長と黒羽Dは会長室に向かったぞ。


――間もなく列車が通過しますので、白線の後ろにお下がり下さい――


 会長室の白線は特別製で、駅の構内アナウンス、そして列車の通過音やホームの振動まで再現できるようになっている。窓ぎわのスリットからは、列車の通過に見合った風が「バン!」と吹き出した。

「あいかわらず、こんなので遊んでるのね」

 仁和が風に髪をなぶらせながら背中で言ったぞ。

「あんたから電話をもらってタマゲタよ。かれこれ二十年ぶりだもんな」

「そうね、黒羽クンが、まだ駆け出しのADだったもんね」

「とりあえず、仁和さんの言うとおりにやったけど、これでいいんだな?」

「ええ、取り越し苦労かもしれないけど、みんなの役に立てればって、そう思って」

「しかし、いいんですか。仁和さんはオモクロとも専属の契約なさってたんじゃ……」

 黒羽がADのころみてえに、お茶を淹れながら聞きやがる。いろいろ自分たちのことを考えてくれてる大人たちに、感謝の気持ちが湧いてくるマユ(拓美)だ。思わず――ありがとうございます――と手を合わせやがったぜ。

 自分が新ユニットに入ぇってるわけでもねえのにな(^_^;)。

「ハハ、ミツルクンも、敵に塩を送ってるじゃない。オモクロとか、神楽坂とかに」

「ハハ、敵も適当に強くなってもらわなきゃ、面白くないからな」

「あいかわらずねぇ。でも、わたしのは、もっと真面目。人の魂に関わることだから……おや、茶柱が立ってる」

「あ、俺も」「僕もです」

「ふふ……なにか伝わったのかもね」

 そう言って、仁和さんは、おもむろに香をたき始めたぞ。

「で、本当なのかい、このAKRが……」

 拓美には、そこまでしか聞き取れなかった。仁和の香が結界になって、感じ取ることができなくなっちまったんだ。

 しかし、会長室の三人からは悪意めいたものは感じなかった。それどころか、暖かいいたわりの気持ちさえ感じられた。そして、そのいたわりは、入院中の潤に向けてのものだけじゃねえことも気づいたぞ……。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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銀河太平記・266『孫鎮の空を飛ぶ』

2025-01-07 14:50:32 | 小説4
・266

『孫鎮の空を飛ぶ』 東鈴 




 鈴麗のお骨をお墓に収めて、悟兵とあたしを乗せた筋斗雲は孫鎮の空を旋回している。

「このくらいの集落が悟兵には合っているのかもねぇ……」

 百個余りの戸数は、愛着さえ持っていれば村全員の顔と名前が覚えられそう、そういう規模が悟兵には合っている。正直な感想だし、珍しくシンミリしている悟兵に掛ける言葉として適当だと思った。

「この孫鎮でも手に余る気がするアルよ」

「あら、弱気ねえ」

「鈴麗とは二言三言しか話したことないアル」

「仕方ないでしょ、モンゴルであんなドンパチが始まっちゃうんだもん」

「そうアルけどな……」

「何事も自分の目で見て、自分でやれることは自分でやっておこうという姿勢は悪くないと思うわよ」

「そうアルなあ……」

「そうよ、モンゴルへの足場も補強できたし、劉宏大統領との絆も確かめられたし、なにも間違っていないわよ」

「しかしなあ……連れて行ってやってたら、凛麗はあんな目には遭わせなかったアル」

「鈴麗は可哀そうだけど、まだ小間使い同然の鈴麗を連れていくのは無理だったでしょ。悟兵もそう思ったんじゃない」

「そうアルなあ……」

「それにさぁ、そういう言い方されると、わたしが付いて行ったのがひどく間違いだったように聞こえるんですけど」

「そうアルなあ……」

「もう、 数を言えるようになったばかりの子どもみたいに『そうアル』ばっかし。 いいかげんにしないと『そうアル・三・四大魔王』って呼ぶぞ。あたしだって、悟兵の秘書、相棒なんだからね」

「鈴麗を連れて行かなかったのは、老婆婆が強く勧めたせいもあるかもアル」

「ん、なにそれ?」

「老婆婆に言われると、取りあえず『否』の字が頭に浮かぶアル」

「老婆婆コンプレックス? ちょっとキショク悪いんですけど」

「よし、もう一度墓の上を飛んで北京に向かうぞ!」

「そうよ、劉宏大統領にも呼び出されてるんだから……って、ちょっと小回りし過ぎじゃない? 目が回りそうなんですけどぉ……ウプ(>・<)」

「え、こういう時って口を押えるアルないか?」

 え、思わずお腹を押さえていた。

 鈴麗が頬を染めてクスっと笑ったような気がした。

 

☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー 
  • テムジン              モンゴル草原の英雄、孫大人の古い友人      
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン(メアリ・アン・アルルカン)   銀河系一の賞金首のパイレーツクィーン
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 栗 尊宅(りつそんたく)        輸送船の船長  大統領府参与
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 重要事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!109『さまよえる潤と拓美のレクチャー』

2025-01-07 08:25:17 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
109『さまよえる潤と拓美のレクチャー』 





 潤が、困ったような、すがりつくような目を向けてきやがる……拓美は、一呼吸すると決心して語り始めやがったぞ。

「わたし……マユじゃないの」

「え……?」

「だから……」
 
 あとの言葉が続かねえ。

 これを言ったら拓美は、もうマユのアバターの中には居られないような気がしてんだ。

 通風口のスリットを通して、病院の微かな日常音が聞こえてきやがる。患者や病院関係者の足音、密やかな話し声、ストレッチャーや車椅子の音、それは現実の時間が確実に流れていることを拓美につきつけてきやがる。

「わたしは浅野拓美っていうの、幽霊よ……」

「え……?」

「わたし、AKRの最終オーディションの前に交通事故で死んだの。でも、死んだことに気づかなくて、最終選考のオーディションまで来てしまって……そこで、マユに見破られてしまって、やっと自分が死んでいることに気づいたの……まだ、驚かないでね、話は、まだまだ半分なんだから」

 どう受け止めていいか分からずに、潤は動揺した目で、拓美を見てやがる。

「マユって子は……特殊な能力があって、それに気づいて見破ったの。で……一度は諦めたんだけど……諦めるって、あの世に逝くってことだけどね。わたし、どうしてもアイドルになりたかった。自分の力と運を試したかった。そうしたらマユは、自分の……この体を貸してくれたの」

「し、信じられません。マユさんは、クララさんなんかと同じ一期生で、わたしたちの憧れでした。急に別人だなんて……」

「わたしの本当の姿を見せてあげる」

 拓美が、部屋の姿見を指差した……そこには、マユのアバターではなく、拓美本来の姿が映っていた。

「こ、これが拓美さん……」

「そう、AKRは、本当は48人。わたしに関する記憶は、マユが全て消し去って、わたしに、この体を貸してくれた。だからAKRは47なのよ」

 潤は姿見の拓美本来の姿と、マユのアバターに入った拓美の姿を見比べやがった。

「拓美さん、本来の姿の方が可愛い……」

 ヘクチ(><)

 遠く離れた神楽坂のスタジオで、仁科香奈のマユはクシャミをしちまった。

「アハハハ(^_^;)」

「……でも、マユ……拓美さん、どうして、こんな話してくれたんですか?」

「なにか刺激的な話をして引き留めておかないと、潤は、向こうへ逝ってしまいそうだから」
 
 潤は初めて気がつきやがった。

 自分の頭の上に、かすかな光の渦が来ていて、そこに引き込まれつつあることによ……放っておけば光を慕って屋上に出て、その渦の中にまきこまれちまったであろうことをな。

「わたし、死ぬところだったんですね(;'∀')」

「そう……あの光の渦に飲み込まれてね。そうじゃなきゃ、わたしみたいに、死んだことも自覚しないで、この世をさまよっていたわ」

「あ、ありがとうございます(-_-;)」

「いいのいいの(^_^;)、これで潤は死なずにすむ。念のため、このアバターの力を少し分けてあげるわね……」
 
 拓美は、自分の胸に手をやると、ピンポン玉ほどの光の玉を潤の胸に押し当てやがる。潤はホワっと体が温まるのを感じたぞ。

 頭の上の光の渦は、小さく遠くなっていってしまったぞ。

「もうこれで潤は生き返る。さあ、自分の体に戻りなさい」

「はい」

「それと……わたしが拓美だってことは、しばらく黙っていてね。人に知られてしまったら、わたし、もう、このアバターに憑いていることができなくなるから」

「絶対言いません! だって、拓美さんが、命がけで助けてくれたんですから(><)!」

「ほらほら、わたしは拓美じゃなくてマユよ。AKR創立以来の選抜メンバー出昼マユなのよ」

「は、はい!」

 ピューーン

 元気よく返事をすると、潤はゴムひもで引っ張られたみてえに、自分の体に戻っていきやがった。

――人に話してしまった。もう、このマユのアバターにも長くは居られないだろうね――

 拓美は思ったが、「これでいいんだ」と言う自分が芽生え始めていることに、初めて気づきやがった……。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!108『緊急手術』

2025-01-06 06:57:50 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
108『緊急手術』 




「わたし、付いていきます(`•︵•´) !」

 有無を言わせぬ力で拓美は宣言しやがった。

 潤の魂と体はまだ完全には重ならねえで二重にぼけて見えてやがる。予断を許さない状況だぞ……。
 
「心臓の僧帽弁に異常があるので、緊急手術をおこないます」

 医者は冷静に、しかし真剣な表情で告げやがる!

「こないだの健康診断では、問題無かったんですが……」

 駆けつけた黒羽Dは、呆然として呟いたぞ。

「これは、並の検査では分かりません。負荷心電図をとらなきゃ分からないしろものなんです。おそらく今まで自覚症状がないんで、本人も気が付かなかったんでしょう。いま心臓外科の先生にきてもらっている最中です。到着次第オペにかかります」

 そして、三十分後に緊急手術が始まったぞ!

 黒羽Dの他に、会長の光ミツル、潤の両親も駆けつけて、手術室の前で固唾を呑んで待ったぞ……。

 オペが始まって一時間ほどしたころに、なんと潤自身が、ボンヤリと手術室から現れやがった。

 みんなが沈鬱な顔でうな垂れたり頭を抱えたりしてるんで、潤は声もかけられずにオタオタしてやがる。

 潤……

 拓美には分かった。手術室の前でおたついてる潤は自分と同類になりかけてる魂であることがよ。

 潤は、しきりに両親に話しかけてやがるけど、むろん反応は返ってこねえ。潤は困っちまって、黒羽や会長にも声をかけるけど、誰に話しかけても結果は同じだ。

――潤――

 拓美は、心で呼びかけやがったぞ。

――あ、マユ先輩!――

 潤はマユのアバターに入った拓美をマユだと思ってやがる。

――ここじゃ話せない、わたしに付いてきて――

――はい――

「ちょっと、外の空気にあたってきます。なにかあったら、すぐに呼んでください」

「ああ、ここまで、がんばってくれたんだからな、マユ、少し休んでこい」

 黒羽Dが組んだ腕を解いて応える。黒羽Dは、もともと気の付くディレクターだったけどよ、美優に死なれてからは、仕事の上の優しさじゃなくてよ、人間として、本当の意味で優しくなりやがったみてえだ。

『マユ』は、潤を空いている倉庫みてえな部屋に連れていきやがる。

――え、外に出るんじゃないんですか?――

「驚かないで聞いてね……潤、あなたは死にかけてるの」

――そんな、冗談言わないでくださいよ。こんなに元気にお話してんのに――

「スタジオで倒れてからのこと、覚えてる?」

――あ……気が付いたら、ここに居ました。廊下にお父さんやみんながいるのが分かって……でも、みんな真剣な顔しちゃって、気づいてくれなくて……で、マユ先輩が声をかけてくださったんです――

「落ち着いて聞いてね」

――……はい――

「潤、あなたは死にかけてるの。ここにいる潤は魂。体の方は手術室にいるのよ。あっちの方を見てみ」

――手術室……?――

「そうよ。でも、壁を何枚も通して見えるのはなぜ?」

――え、あ……ほんとだ――

「魂や幽霊になってしまうと、見たいものや意識したものしか見えなくなるの」

――あの手術台の上に寝てるのは……わたし!?――

「そうよ、残酷だけど、これが現実。今の潤は生と死の間をさまよっているの。潤は自覚も無かったんだけど心臓に欠陥があったの、それがレッスンの最中に出ちゃったの。で、今は救急車で運ばれて緊急手術の最中」

――そんなぁ、わたし死んじゃうんですか……(;'∀')――

「言ったでしょ、今は、その境目だって。放っておけば、潤の魂は体から離れすぎて戻れなくなって死んでしまう。だから、わたしが呼び止めたの」

――あ、ありがとうございます……でも、マユ先輩は、どうして分かるんですか。そんなことや、わたしのこと?――


「ウ……それは、わたし(-_-;)」


 マユの拓美は、言い淀んでしまいやがった……。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!107『Full Metal GACHI!』

2025-01-05 09:05:51 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
107『Full Metal GACHI!』 




 AKRの『コスモストルネード』は、8週連続ヒットチャートのトップを維持してやがる。それまでは上半期、アリス&テレスの『ポジティブシンキング』が7週連続を記録した後に失速してるんでよ、年間トップ、レコード大賞間違いなしって評判だ!

 曲そのものの魅力もあるけどよ、大石クララをリーダーとするAKRはグル-プとして頂点に達して、Jポップの人工衛星! いや月面着陸も夢じゃねえとか言われてっぞ!

 ウフフフ( ´艸`) ウフ(* ´艸`) ウフフフフ(* ´艸`)( ´艸`)(〃艸〃)

 スマホを見ながら――今週もトップ!――を予感してニヤついてる研究生たちの後ろを足早にエレベーターに向かう黒羽D。通り過ぎてから気づいたメンバーは気まずそうにリハーサル室に戻っていきやがる。


『あんたたち、緊張感が足りない!』


 春まゆみコーチの声が廊下まで響き、ヒヨッコ研究生たちはケツの穴まで引き締めやがる。

 メンバーたちは構っちゃいねえ、カバー曲を含めレパートリーが10曲を超えたんで、ブラッシュアップに余念がねえんだ。それに、そろそろ新曲も……提示されてるわけじゃねえけど――そろそろ来る!――そう予感してグレードを維持することに懸命だ。

 とにかく選抜メンバーは、雑な言葉だけどメチャクチャ頑張ってやがるぜ! 

 メンバー全員のがんばりは、美優の死から憑き物がついたようなものになってきてやがる。実際、選抜メンバーの前列、マユのアバターには浅野拓美っちゅう幽霊が憑いてやがんだけどよ。

 拓美は、自分が死んだことも知らねえでオーディションを受けやがってよ。マユに指摘されて、やっと自分が幽霊だっちゅうことを自覚しやがって、一時は成仏を覚悟しやがった。

 でもよ才能と情熱はすごくってよ、幽霊だって分かって、メチャクチャ悲しそうな顔しやがってよ。マユは、自分のアバターを貸してやったぜ。

 自分は間に合わせの仁科香奈っちゅうアバターでオモクロの研究生になって、そんで、今は神楽坂24のメンバーとして活躍してんのは知っての通りだ。

 黒羽は、『コスモストルネード』とかレパートリーに磨きをかけるだけじゃなくてなく、新しい曲にチャレンジすべきだと思ってやがる。


「会長、そろそろ新曲を……」

「新曲ぅ?」

「はい、オモクロも神楽坂も年末にかけて新曲をリリースしてきます。コストルもいつまでも一位じゃおれません。それに……」

 黒羽が、全部言い切る前に、会長の光ミツルは、新曲のスコアを机の上に広げやがった。


 《 Full Metal GACHI!》

 キミはいつでもGACHI オレのことなど頭の隅にもねえけどよ
 やるだけやったそのあとで キミの瞳の残像になれればいい

 分かっていても 分からなくても
 キミに気づかれなくても by the way

 まっすぐ まっすぐ進んでいけ
 想いを溢れさせろよ Go a head!
 顔を風上に向けろ 倒れるぐらいに前のめり!

 戦いの力と愛 自分一人が進むんじゃないけどよ
 戦いの力をわかっているのか? とにかく自分が前に進め!

 Go a head! Gachi… Gachi…Gachi! Full Metal Gachi!


 今度の曲は、コストルがそよ風に思えるほど、歌も振りもきつかったぜ。

 針が降り切れるほどのレッスンが続いて、研究生からメンバーになったばかりの小野寺潤が、過呼吸で倒れちまった!

「しばらく寝かせておきなさい」

 春まゆみのオバハンは、スタッフに指示すると、レッスンを続けやがる! ベテラン最年長の服部八重も汗みずくになってよ。知井子も矢頭萌も気力だけで持っていやがるぜ。

 マユのアバターに入っている拓美だけが、春まゆみの動きに完全について行けてやがる。

「呼吸が止まりました!」

 潤の世話をしていたスタッフが叫んだ。

「CPR(心肺蘇生法)だ! 救急車を呼んで!」

 黒羽Dが叫んだ。

「わたしがやります!」

 マユの姿をした拓美が駆け寄った。

 拓美は、潤の気道を確保すると人工呼吸と心臓マッサージを始めやがる。

 そして、拓美には見えちまった。潤の魂が体から離れ始めてやがるのが……。

「ダメ、AEDはないんですか!?」
「たしか、一階の警備員室に……」

 そう口にすると、黒羽Dはスタジオを飛び出し、階段を三段飛ばしで降りていった。黒羽の目には、潤が美優の姿と重なって、居ても立っても居られなかったんだ。

――もう、美優のように死なせはしないから!――
 
 もう、潤の魂は体から三十センチほど浮き上がってやがる。

「潤、あんたは始まったばかりじゃない。わたしみたいに死んじゃだめ、死なせやしないから!」

 AEDの力で、やっと潤の心拍が戻ってきた。そして救急車も到着した。

「わたし、付いていきます!」

 有無を言わせぬ力で、拓美は宣言しやがった。潤の魂と体は、まだ完全には重ならねえで、二重にぼけてやがる。

 予断を許さねえ状況だぜ……。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!106『神楽坂24』

2025-01-05 08:13:06 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
106『神楽坂24』 




《東京タワー》

 キミと登った東京タワー スカイツリーもいいけれど キミとボクには程よい高さだよ~♪
 二人そろって 高所恐怖症でさ 二人に程よい距離だしねぇ~♫
 神保町駅徒歩7分 見上げた姿は333メーター 赤白姿のストライプでさ♫ ボクの心もストライプ 告白しようか止めようか~♪

 ああ ああ~東京タワ~~~♫


 新曲『東京タワー』の肝はよ、恋のハードルの高さと東京タワーの高さを重ね合わせたところにあるんだぜぃ( ¯﹀¯ ) 。

 スカイツリーじゃねえところがミソだ。634メーターの高さじゃ手に余る。どこか――東京タワーぐらいなら手が届く――とお互い思ってるとこな。    

 でも、その東京タワーも間近で見ると、とんでもねえ高さでビビっちまう。そのビビる気持ちを高所恐怖症と掛け合わせてるとこもな。

 それによ、どこか昭和の匂いを感じさせるレトロ感。赤白のストライプが揺れる気持ちをうまく表してるしよ。母屋のオモクロと比べて、E残り組は二番目の離れ的なポジションだってことも込めてやがる。

 東京タワーをざっと見て回っただけで、これだけの歌詞を思いつくんだから、別所Dのプロディューサーとしての才能もなかなかのもんだと思うぜ。


 ところがだ!


 加奈子の親父、高峯純一は娘の活躍にイッチョカミ! 昭和ジジイの意地と嫉妬心で歌詞に文句というか提案(加奈子にすれば言いがかり)をしやがった。

「東京タワーには、もっと近い駅がある!」

 二番は御成門駅から6分に、三番は赤羽橋駅から5分と、だんだん近くなる駅に恋心を絡めろってよ。

 困った別所Dは「じゃあ、東京タワーに住んじゃおう(>▢<)!」と叫びやがって、加奈子が言ってたオモクロのコミカルさが十二分に出る歌詞になっちまったぜ(^_^;)。

 で、けっきょく、もたついてアレコレてんこ盛りにしたのが面白くって、ヒットチャートのベスト3を、AKRやオモクロ本体と競うことになっちまったぞ。

 そんで二曲リリースして、オモクロ本体も大きくなっちまって、事務所とスタジオを別に構えることになったぜ。

――本音のとこでは、上杉さんはE残りグミが邪魔なんだ――という思いもあっての引っ越しなんだけどよ。いや、男の嫉妬は女より恐ぇって言うからな。

 別所D、いや別所Pは思った。

 自分も、いつまでもオモクロの二軍と言われる「オモクロ・E残りグミ」で居るつもりはない。男の嫉妬心は加奈子の親父で思い知ってるしな。

 お互い、目障りにならないところに越した方がいい。

 そういう気持ちは、本人が言わなくても業界には知れ渡るもんでよ。AKRの光会長が――おもしれえ(^▽^)――と、神楽坂の三階建てのビルを紹介しやがったんだ。まあ、実務は人あたりのいい黒羽Dがやったんだけどな。


 今やアイドルグル-プは三つ巴!


 時あたかも衆議院選挙の真っ最中。「オモクロ・E残りグミ」は、名前も改め「神楽坂24」として完全に独立することになったぜ。

「どうせなら、神楽坂の広告塔になりましょうよ!」

 加奈子の提案で、神楽坂周辺の名所を歌いこんだ『神楽坂チャート・24』という新曲も作られたぞ。


《神楽坂チャート・24》

 都の西北 早稲田の森のちょいと東 神楽坂は ボクらの街さ
 東京メトロ東西線 なぜか一駅手前の神楽坂 降りる早稲田のオネエサン
 スッピン ひっつめ飾らずにニッコリ笑顔のコンビニバイト
 知恵あるタカは爪隠す 賢いクセして とぼける三枚目
 バイトのシフトを牛耳って ボクとキミとの時間を作ってくれる
 だけど 金曜ナイトはちゃっかり空けて 迎えのク-ペのドアを閉める
 ミラーに映る オチャメな笑顔に ボクはちょっぴり憧れる 未来のキミが重なるよ
 わたしの志望は早稲女 早稲女 小悪魔女子大生 笑って言うな
 ボクの偏差値、知ってて言うか!(中略)ああ ああ ああ 神楽坂24!


 むろん作詞は加奈子。でも加奈子は一番を作詞しただけで、あとはみんなで、アイデアを出して、次から次に広がって。24というのは、もちろんメンバーの人数からきてるんだけどな、すぐにできたのは2番までだ。

 そこで、ファンに神楽坂近辺のことで歌いこんで欲しいところをリクエストしてもらい、順次24番まで作ろう! と、いうことになった。

 メトロ東西線 兵庫横丁 「和可菜旅館」の黒板塀 芸者小道 かくれんぼ横丁 善国寺の毘沙門天 縁結びの東京大神宮 早稲田大学 本女(ぽんじょ) 市ヶ谷駐屯地

 中略のところにアレコレ地元の名所やトレンドが盛り込まれてよ、ひと月の間に東西に広がって四谷からアキバ辺りまでの名所案内みたいになっちまったぜ!

 マユは香奈というアバターの中に居ながら、このへんの感覚は人間には、かなわねえと思ったぞ。



☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!105『ああ 東京タワー』

2025-01-04 15:58:43 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
105『ああ 東京タワー』 




「このクソ親父!!」

 加奈子が切れやがったぜ(^_^;)

 E残りグミの最近の名物になっちまった、加奈子とオヤジの親子ゲンカだぞ。

『E残りグミ』は、プロモの出来もよくって動画のアクセスも発表の一週間で百万件。オリコンチャートも、AKRの『コスモストルネード』、本家オモクロの『秋色ララバイ』に続いてベストスリーにまで入ってきやがった。

 別所Dは一気に攻勢をかけることにしたぞ!

『居残りグミ』は成功したとは言ってもよ、やっぱりオモクロの二軍というイメージを払拭できねえ。

 持ち歌も『居残りグミ』だけじゃ、一段目しかねえロケットみてえなもんで、とても人工衛星を飛ばす高さには昇れねえ。このままじゃ、一段目だけのロケットは盛大な一発花火で終わっちまう。

 そこで、短期で追撃を計るため、新曲をあいついでリリースすることにしやがった。

 とりあえず想いをストレートに表現しようっちゅうことで、みんなで知恵を絞った。でもよ、歌ってナンボ、踊ってイクラってメンバーに興行的なアイデアが早々思いつくもんじゃねえ。

 キーー キー― キーー ガチャ キーー ガチャ……

 そこへ加奈子の親父が、ポンコツ車いす軋ませてちょくちょく顔を出すもんだから、娘の加奈子はイライラしやがる。

「大事な会議してるから……」「うん」 「あとで散歩付き合うから……」「ああ」 「気が散るから……」「そうか」 「いや、だから……」「うん」 「せめて送った電動のに……」「これがいい」 「いったいなんなのよ……」「考えてる」 「いや、考えなくていいから……」「そう言うな」 「グヌヌ……」「プゥ~~」 「会議中なのよ、オナラしないでくれる……」「俺じゃない」 「じゃあ、誰がオナラしたって言うのよ……」「加奈子だ」

 で、加奈子が「このクソ親父!!」とキレっちまったわけさ。

「ウワ!」

 あまりの剣幕に親父はのけ反っちまって、ポンコツ車いすごとひっくり返りそうになって、別所Dと近くのメンバーが危うく止めやがった。

 すると斜め45度になった親父の目線の先、窓の外の東京名物が目に入ってきたぞ!

「東京タワーで、どうですか?」

 加奈子はギクっとしやがった。

 オモクロのセンターを外されてから、なにかと自分と東京タワーを引き比べるようになってきた加奈子。美紀のケガで選抜復帰することになったらよ、新人の真央にあっさり入れ替えられ、病院のロビーで腐っていたときによ、目に入っていたのがスカイツリーと東京タワーだったろ。

「なに考えてんのよ!」

 病院のロビーのガラス張りから見える東京タワーは、周りの高層ビルに囲まれ威勢がねえ。そんな東京タワーにネガティブなシンパシーを感じていたことが思い出されちまって、加奈子は父の提案に真っ先に反対しやがった。

「それ、いけるかも……」

 別所Dがプロデューサーの感覚で反応しやがった。そしてネットで検索した。そして、実際メンバーで、東京タワーにも行ってみることにした。

 電動車椅子のバッテリーが切れていたので、修理した車椅子を加奈子が押した。メンバー12人、スタッフ4人、そして加奈子の親父を加えた17人は目立ったぞ。

「バッテリーの残量、どうして確かめなかったのよ!」

「それだけ、加奈子のことを心配してやってたんだよ」

「もう、それが余計なことだって言うの!」

 こういう遣り取りも、遠目には仲の良い親子に見える。その姿をスマホで撮っていた年輩の夫婦が気づきやがった。

「あ……あれ、高峯純一さんだわよ!」

 若いやつには知られてねえけど、ババアたちには大スターだ。前世紀のバブルのころの高峯の活躍ぶりはよ、自分たちの良き時代の記憶とも美しく重なっちまってよ、雄々しくも素敵な『タカジュンさま♡』なんだわ。

「ウワー、高峯純一さんだ!!」「タカジュンだあ!」「タカジュ~ン!!」

 シルバーツアーの御一行さんが周りに集まってきやがった。

 シルバーツアーの御一行さんは、オモクロ・E残グミはおろか、オモクロにもAKRにもウトイ。往年の大スター高峯純一の世話をするスク-ルメイツかなんかのように思っていやがる。

 あっと言う間に、高峯純一のサイン会、握手会になっちまった。

「あんたたち偉いわね、ちゃんと大先輩のお世話なんかしちゃって。あなたなんか、大先輩とはいえ、他人とは思えない甲斐甲斐しさよ!」

「いやあ、これは、わたしの娘ですから」


 親父がクチバシッテしまった。


 さすがに、ガイドのオネエサンはオモクロもオモクロ・E残グミのことも知っていやがった。

「あ、あなた、オモクロの桃畑加奈子ちゃんじゃないの!?」

「そういや、大正製菓のグミのCMやってたわよね」

 と、シルバーの方々の思考回路がつながったぞ。

 で、大騒ぎになっちまった。

 シルバーツアーの御一行さんたちと、修学旅行と敬老会の団体さんの合同見学のようになっちまってよ。そのうちに、だれがたれ込んだのか、芸能レポーターや放送局までやってきやがった。

 別所Dは、目覚めたプロデューサーの感覚で、この偶然の機会を逃さなかったぞ。

「今度、東京タワーをテーマにして新曲を発表します」と、ぶちかましやがった。

 で、ゆっくりと東京タワーを見学しているうちに、新曲のイメージが膨らんできた。


 《東京タワー》

 キミと登った東京タワー スカイツリーもいいけれど キミとボクには程よい高さだよ
 二人そろって高所恐怖症 それに二人には程よい距離だった
 神保町駅徒歩7分 見上げた姿は333メーター 赤白姿のストライプ
 ボクの心もストライプ 告白しようか止めようか

 太陽背にした東京タワー 焦らせるんだよボクの心を 神保町から7分に高まるテンションさ
 キミはスキップ一歩先 それがとても遠くて愛おしくて
 やっと踏んだキミの影 はじけた笑顔眩しくて 赤白姿のストライプ
 ボクをせかせてストライプ やっと追いつき照れ笑い

 ああ 東京タワー ああ 東京タワー ああ ああ 東京タワァァァァ~


 展望台を一周する間に一番の歌詞ができちまいやがった。

 事務所に帰って、みんなにご披露しやがる。すぐに二番も三番も出来たが、父の高峯が、こう口を挟みやがった。

「東京タワーなら、御成門から徒歩6分だろうが!」

 これが、親子ゲンカの始まりであり、芸能人高峯純一の再生でもあった。

 そして、オモクロ・E残りグミの飛躍へと繋がっていったぞ……。




☆彡 主な登場人物

マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
里依紗      マユの同級生
沙耶       マユの同級生
知井子      マユの同級生
指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
デーモン     マユの先生
ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
レミ       エルフの王女
ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
白雪姫
赤ずきん
ドロシー
西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
由美子      英二の妹
真田       由美子の元カレ
美優       ローザンヌの娘 英二の妻
光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
浅野 拓美    オーディションの受験生
大石 クララ   オーディションの受験生
服部 八重    オーディションの受験生
矢藤 絵萌    オーディションの受験生
上杉       オモクロのプロディューサー
桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  

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滅鬼の刃・35『ご無沙汰しておりました』

2025-01-04 15:35:04 | エッセー
 エッセーラノベ    
35『ご無沙汰しておりました』  




 どうも、あれから一年半ぶりになります。

 武者と朝顔を愛でながらスイカを食って、あくる日にもう一度話すつもりでおりました。

 ですから副題も34『朝顔と西瓜・1』として、当然35『朝顔と西瓜・2』になるはずでしたが果たせませんでした。根気よく読んでくださっている読者のみなさんには申し訳ない限りです。

 じつは、武者のやつ『朝顔と西瓜・1』の夜に頭の線が切れて救急車で運ばれましたが間に合いませんでした。

 息子さんが家族葬で見送られたのですが、付き合いの古いわたしには声をかけてくれました。

 おそらくは死んだという自覚も無いまま逝ってしまったのでしょう、昼寝をしているような穏やかな顔で棺に収まっておりました。

 もう一年以上たつのですが、総括できずにおります。書けるようなら号を改めて触れられたらと思います。

 ただ、息子さんは武者の遺言……というほどではないのですが、日ごろ『蛍の光』で送って欲しいということを、わりと真剣な顔で言っていたので、アカペラではありますが、全員で『蛍の光』を歌って霊柩車に乗せてやりました。

 卒業式でもめったに歌われなくなった『蛍の光』でしたが、まだ日本人の血脈にはしみ込んでいるようで、会葬者全員が神妙になりました。

 パァーーーーーーーーーーーーーーーン

 歌い終わると同時に霊柩車のクラクションが長鳴きします。まるで武者が「さよならぁ、世話になったぁ」と最後の挨拶をしたようでした。


 それから、明くる年、栞が家を出ていきました。


 これは、大学進学なので仕方ありません。通学できない距離ではないのですが、かみさんも栞の学費用にと相応のものを残してくれていましたので無事に追い出せました。

 最初は週に一度は戻って来ていたのですが、それがきっかけだったのか夏休みのバイトで、丸々ひと月空いて、それからは月一になりました。

 この正月には帰って来ると言っていたのですが――松が明けたら帰る――とラインを寄こして『うん、楽しみにしてるよ』の返事には既読スルーのままです。

 松が明けたらとは、わたしが教えてやった言葉です。

 松の内というのは、昔は15日まで、この三十年くらいは7日までを指す言葉です。

 はてさて、栞の松の内はどちらでしょうか。

 まあ、こけつまろびつしながらも、自分の道を歩き始めている様子。了としておきます。

 わたしは錆びの周った滅鬼の刃を、ゆっくり研ぎ直すところから始めることにします。


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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・168『スセリヒメの生姜湯』

2025-01-04 15:20:07 | 小説
(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記

168『スセリヒメの生姜湯』  





「ここの神さまは古い友だちなのよ」


 チマチマとミカンの皮をむきながらスセリヒメ。

「え、友だちだったんですか? って、ここの神さまは……」

 やばい、巫女の助勤しながら神さまの名前も憶えてなかった(^_^;)

「いやだぁ、御祭神の名前も知らずに巫女やってたのぉ(¬д¬)!?」

「ド、度忘れよ(>〇<)」

「『なにごとの おわしますとは知らねども かたじけなさに なみだこぼるる~』かなあ」

「なにそれ?」

「西行法師がね、とある神社に立ち寄ったんだけど、なんの神さまか分からないけど、ありがたさに涙が出てきたって詠んだ和歌よ」

「え、あ、ああ、それですよ、それ!」

 よう知らんけど西行と言えばえらい歌詠みの坊主。西行も同じなら、わたしもノープロブレム!

「ここの神さまはね秩父谷戸姫(チチブヤトヒメ)って言うの」

「あ、女神さまなんだ」

「え、女神さまってことも忘れてたぁ?」

「え、ああ……」

 思い返すと、頼政さんの車を降りて拝殿の前で一礼して、巫女の練習で玉ぐしを捧げたりとかの練習はしたけど、御祭神については教えてもらってない?

 シューージジジーーー

 火鉢に掛けたヤカンが湯気を噴く。怒っているようにも笑っているようにも思えた。

「わたしの亭主知ってるでしょ……」

 コポコポコポ……

 ヤカンのお湯を湯呑に注ぐスセリヒメ。

「あ、オオクニヌシさん」

「うん。いちおう大国主の奥さんはわたしなんだけどね、大国主は、あちこち出かけては女に手を出してねぇ……まあ、あれでも出雲の大神だから、多少のことはね」

「ああ、福井とか新潟あたりまで出かけたんですよね」

「うん、でも、まさか埼玉まで足を延ばしていたとは……」

「え、知らなかったんですか?」

「いや、まあ、最後には分かったんだけどね。大国主はウソ下手だから……」

「そうなんだ」

「で、まあ、一度はヤマタノオロチの息子どもを連れて出張ったんだけど」

 ボ!

 かき回した火鉢の炭が小さな爆炎を上げた。

「でもね……じっさい会ってみたら、けっこういい娘でねえ。ヤマタの息子どもも『こんなに美しい谷川は見たことも無い』って言うしね。それで、気が付いたら友だちになっちゃった」

「え、そうなんだ」

「それに、グッチが写真館のバイトで来るようになってから調子も良くってさ」

「あ、文化祭じゃお世話になりましたぁ(^_^;)」

「そうよ、あの後、特に調子よくてさ。やっぱり神さまって言うのは、みんなが喜んでくれると力が出るわけですよ。ウエディングパラダイス、またやろうね!」

「え、ああ……」

 ウエディングパラダイスは大成功だったけど、佐伯さんが自殺未遂をやっちゃって、このスセリヒメが大汗かいて黄泉平坂から連れ戻してくれたんだ。

「一時は植物人間とか言われてたんだけど、なんとか元に戻りそうなんだ」

「え、そうなんだ!」

「まあ、あれだけ噂になったから復学はしないだろうけど、新しい学校で頑張ってくれたらと思う」

「よかったあ」

「それでね、グッチたちがこっちに来るのを知って、ヤトヒメとも久しぶりだったし、ちょっとテンション上がっちゃったわけよ……ハイ、生姜湯。これ飲んで三が日がんばってね」

「わあ、ありがとう」

「他の子の分は置いておくから、お湯に溶かして飲ませてあげて」

「はい」

 一口すすると、生姜の少し刺激のある甘さが口に広がり、スイッチが入ったみたいに体が温まる。

 ウワァ~~~~~

 その心地よさに思わず目をつぶってしまう。

 再び目を開けるとスセリヒメの姿は消えていた。




☆彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川                志忠屋のマスター
ペコさん              志忠屋のバイト
猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
辻本 たみ子            2年3組 副委員長  伯父:武藤頼政
高峰 秀夫             2年3組 委員長
吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲              2年学年主任
先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
妖・魔物              アキラ      
その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん              伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・167『昭和の巫女はきつい』

2025-01-04 15:10:44 | 小説
(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記

167『昭和の巫女はきつい』  





 ジョキンと聞いて、あの忌まわしいコロナを思い出すのは令和のJKだ。

 中学の時は学校がまるまる半年も休みだったし、除菌、殺菌、消毒とかうるさく言われたよ。


 でもね、昭和47年のジョキンは助勤のことなんだ。

 巫女バイトが決まった時にお祖母ちゃんに言ったら、こんな話をした。

「ああ、助勤と言えば新選組だねえ」

 想像の斜め上を行く感想なんで、こっちがビックリしてしまう。

「なに、ナントカ太郎とかがやってる政党?」

「ちがうちがう、近藤勇の新選組。局長の次に偉いのが助勤て言って、沖田総司が一番隊の助勤をやってたんだよ。新選組じゃ一番若いのにさ、永倉新八とかのオッサンと並んで立派にやっていたんだよぉ」

「え、お祖母ちゃん、新選組の時代から魔法少女やってたの(ㅎ.ㅎ)?」

「ん、んなわけないだろ(''◇'')!」

「だよね、今度巫女のバイトやるんだけど、正確には助勤て言うんだよ」

「え、そうなの? 昔は巫女は巫女だったんだけどねえ」

 ウプ!

 そんな数日前のスカタンを思い出して、お茶を噴き出しそうになる。

「だいじょうぶですかぁ?」

 同じ休憩組のロコがコタツに潜ったままおざなりな返事。ロコの隣で横になってる真知子は返事もしない。

「ううん、ちょっとむせかえっただけ」

 慣れない助勤の仕事と寒さでグロッキー、そっとしといてあげよう。この律義者は話しかけられたら必ず返事を返してくる。休憩時間はそっとしておいてやるに限る。真知子はほんとに寝てるみたいだし。

 ロコほどじゃないけど、たしかに、この助勤の仕事はきつい。

 とにかく寒い。

 巫女服、いや巫女装束ってのは白衣に緋袴。むろん下にはババシャツに厚手のタイツ、足袋は重ね履き。ほんとは使い捨てカイロを背中とかに貼りまくりたかったけど、使い捨てカイロは、もう5年しないと発明されない。

 授与所には電気カーペット、後ろにはストーブ焚いてもらってるんだけど、なんせ初詣。

 授与所の窓は開けっ放し。宮司の頼政さんが工夫してくれて、工事用のライトを四つ吊るしてくれてる。ケンタとかマックとか、商品が冷めないようにライトあててるでしょ。授与所のためだけに発電機も回してもらってるんだけど、それでも寒い。

 それにね、授与所と言えばお御籤なんだけど、令和みたく自動販売機じゃない。

 お客さん、いや参拝客の人が「お御籤お願いします」と言ったら、巫女がお御籤をひくんだよ。ほら、でっかい木製のシェーカみたいなの。あれをガシャガシャやって「○○番です」と参拝客に示してから、100の小引き出しからお御籤を出して渡す仕掛け。

 自分で引けよって思うんだけど、これがA町のしきたり。自分で引いたらありがたみがないんだとか。

 JC巫女たちは、ほとんど、このお御籤要員と言っても過言じゃない。参拝客も巫女の正体が、近所のA子ちゃんとかY子ちゃんだとか分かってるんだけど、巫女の姿をしていたら神さまのお使いになるわけですよ。

 とにかく元気だしね。

 令和じゃ、映画や芝居の子役だって午後9時以降は働かせちゃいけないことになってる。

 21世紀になったらどうするんだろうね、と余計な心配をしてしまう。

 わたしも、まあ、なんとか務まってる。たぶん、直美さんとこのバイトと、年末のバイトで慣れてるんだ。

 たみ子は、拝殿で高峰君といっしょに頼政さんのお手伝い。ガラス窓の外では、そういう新年早々の神社の営みが静かに進行している……夕べ扉が開いて神さまみたいなのが光になって現れて、あの時のどよめきが嘘みたいに静か……静かすぎる……と思ったら、二重のガラス窓だった。

 ガラスに、コタツにも入らずの巫女姿が映っている。

 え?

「やぁ、わたしも昨日から来てるの」

 場所がら、全然違和感はないんだけど、この場に居るはずのない、御神楽采女さん。

 巫女服姿だけども、この人は宮之森と大浜限定の巫女さん。

「アハハ、いちおうは神さまなんだよ(^_^;)」

 そうだ、この人の本性はスセリヒメ。

 だけど、なんで埼玉に?


 
☆彡 主な登場人物

時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
滝川                志忠屋のマスター
ペコさん              志忠屋のバイト
猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
辻本 たみ子            2年3組 副委員長  伯父:武藤頼政
高峰 秀夫             2年3組 委員長
吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
藤田 勲              2年学年主任
先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
妖・魔物              アキラ      
その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
安藤さん              伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 

コメント
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