大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校演劇・クラブはつらいよ 秋編三

2012-11-04 05:39:44 | 高校演劇基礎練習
クラブはつらいよ 秋編三

 秋深し……となりはなにをする……クラブ。

 コンクールもあらかた予選が終わり、あなたのクラブは、なにをしているのだろう?
 この時期、クラブは、大きく四つに分けられる。
一; コンクールの予選を勝ち抜き、本選出場の準備に追われている、ごくかぎられた幸運なクラブ。
二; コンクールの予選で落ちたクラブ。これはさらに二通りに分かれる。地域の発表会など、スケジュールのあるクラブと、なにも目標のないクラブ  
三; もともとコンクールにも参加しなかったクラブ。これも二通りに分かれる。しようと思っていても参加できなかったクラブ(事情はさまざまで、コンクール直前に断念せざるをえなかったクラブ、部員が少なく参加できなかったクラブ、連盟加盟費や、コンクール参加に必要な費用がまかなえなかったクラブ) コンクールなど頭から否定して参加しなかったクラブ。
四; すでに、つぶれてしまったクラブ……

【未来を見据えたクラブ活動】
 一のクラブは、「おめでとう!」である。ただ、主な出演者が三年生である場合、来年度につなげるため、出演者の一部に一二年生を加えておこう。無理矢理に配役を増やしてでも、これはやっておいたほうがいい。役者が無理なら舞監か、その助手にして、芝居作りのノウハウを伝えておければいい。
 二の予選で落ちたクラブ。これが大多数だと思う。地域や校内で発表の機会があるなら、それに専念してもらいたい。そのプロセスで演劇部のノウハウを一二年生に伝授しておかなければならないのは一のクラブと同じである。
 
 わたしが、もっとも心配するのが、コンクールの予選に落ちて、春、どうかすると、来年の文化祭あたりまで、目標のないクラブである。ここで安易に休部などしてしまうと、来春は自然消滅ということになりかねない。年内か年度内には上演の機会を持とう。とにかく「芸術は場数!」である。走っている自転車と同じで、止まれば倒れてしまう。
 では、その場数の機会である。一番簡単なのが校内公演。ただ、生徒の絶対数が少ない学校が多いので、ただボンヤリと「校内公演やります」では、人は集まらない。顧問の先生に交渉してもらって、PTA総会などでほんの二十分ほど時間をもらって、コント(下手なりに、わたしも何本か紹介してきた)を、二本ばかり上演させてもらうという手がある。また、総合学習などのボランティアで、幼稚園、保育園、老人施設などとコネのある先生がいたら、ワタリをつけてもらって、子ども向きや、お年寄り向きのコントを工夫してやらせてもらおう。

 三の、コンクールに参加しなかった(できなかった)クラブ。上記の予選に落ちたクラブと同様、なにか公演の機会を持とう。それから、予選に落ちたクラブも、参加しなかったクラブも本選は観にいこう。「さすが……」にしろ「この程度」と思うにしろなにかしら、得るものはある。念のため「この程度」と思っている場合、自分たちの力量を客観的に見られていないことが多い。

 四の、すでに潰れてしまったクラブ。対策は二通り。もし君が、あなたが二年生以下、もしくは顧問であられる場合で、来春クラブを復興しようと思っているのなら。わたしの「クラブはつらいよ」を、春編一から読み直していただければと思う。いろんなことを書いてきたが、人の芝居を観て、戯曲を読むことである。熊が冬眠前に食いだめするように自分を演劇的に太らせておいておくことが大事である。以前も書いたが戯曲は百本は読んでおいてもらいたい。
 もうクラブには懲りてしまった人。芝居そのものに嫌気がさしているのなら、自分が熱中できるなにかを探そう。「少年老いやすく……」のたとえ通り、ものごとに一番熱中できるのは十代の後半である。オッサン、オバハンになってから後悔しないように、何かを探し、また挫折してもかまわないから、熱中時代でいてほしい。
 クラブはイヤだが芝居は続けたい人。そういう人は学校を飛び出そう!なにも学校を辞めろというのではない。どこか地域の劇団を探し、そこでやってみることを勧める。ただ、劇団といっても様々で、中には高校生には勧められないものも多い。教育委員会の社会教育課や、地域の市民会館や文化ホールに問い合わせてみよう。地味ではあるが健全な劇団を紹介してくれると思う。もし、それで飽き足りないのなら、都市部に限られるが、放送劇団がお勧めである。ただ付属養成所は、入所時期が決まっており、テストもあり、そう多額ではないが学費もかかることを頭に入れておいてほしい。大手プロダクションなどの養成所は、学費も高く、卒業しても皆がプロになれるわけではない。経済的に余裕があり、勉強のためと割り切っているのなら、それも道である。
 演劇科を持った大学への進学という道もある。ネットで検索したり、進路の先生と相談することを勧める。
いろんな道があるが、真剣に演劇への道を考えているのなら、若い時代に専門教育を受けておく必要がある。まあ、それは、君やあなたの中で、演劇がどれくらいの比重を持っているかによる。もの思う秋の夜長、少し自分にとってのクラブや演劇について考えてみるのもいいのではないだろうか。つれづれなるままに……

今月のコント『一寸法師の忘れもの』

サスに照らされた地面の上に、お椀と箸が一本おかれている。かすかに水の流れる音。 

好子; あ、これこれ、これだよ。まだ、まんま置いてある。
まり子; え、何これ?
好子; 見りゃわかるでしょ。お椀と箸よ。
まり子; そりゃ分かってるわよ。わたしが聞いてんのは、このシチュエーシ ョンよ。
好子; シチュエーション?
まり子; 状況とか様子って意味よ。
好子; さすが、国語クラス一番!
まり子; 失礼ね。学年で二番よ。
好子; 一番って言った方がかっこいいかなって思ったのよ。
まり子; あの福井里香には勝てないもんね。関東大推薦確実。
好子; 学年一の秀才でイケメンの後藤君ともウワサだしぃ。だから気ぃつか って……
まり子; まあ、そんなことはいいけど。
好子; 後藤君っていいよね。秀才ってとこ鼻にかけてないもんね。こないだも数学の補習課題でうなってたら、さりげに教えてくれてさ。
まり子; 答え教えんのって、イヤミじゃない?
好子; 答えじゃないよ。ヒントよヒント。あくまでも答えはわたしが出せるようにレクチャーしてくれんの。 
まり子; 後藤君はいいの。それより、ここ普段はだれも通らない学校の裏の小川のほとりじゃん……
好子; そこに一個のお椀と、お箸が一本……
まり子; 好子、どうやって見つけたの?
好子; 体育の時間にテニスボールがとんでっちゃって。探しにフェンスの隙間から出てきて見っけたの。
まり子; ふーん……たいてい、防球ネットに当たってグランドに落ちるのにね。
好子; たまたま防球ネットの破れ目から抜けちゃったのよ(お椀にさわろうとする)
里香; さわらないで!(飛びだしてくる)
二人; わ!
好子; 里香。
まり子; どうして、あなたが……
里香; ごめん驚かして。
まり子; これ、あなたが置いたの?
里香; ……うん。
好子; なにかのおまじない?
里香; ……
好子; あ、飼ってたペットが死んじゃったとか……でも、お箸一本てのは変よね。
まり子; ……これって、なんだか一寸法師だ。
里香; あ……
好子; イッスンボウシ?
まり子; お椀の舟に、箸の櫂~♪ だったよね?
里香; 知ってたんだ。
好子; さすが、国語一番と二番だ。で、そのイッスンボウシって?
まり子; 昔話よ。一寸。三・三センチの男の子が、お椀の舟に乗って、都にやってきて、お姫さまと仲良くなって、鬼退治して、打ち出の小槌で立派なイケメンになるってお話。
好子; ふーん……
まり子; でも、まさか……
里香; うん……そのまさか……
まり子; うそ!?
里香; こないだここで校外清掃やったときに見つけたの。岩にひっかかって舟が動かなくなってるとこ。
好子; マジで!?
里香; 疲れてるみたいだったから、お椀ごと家につれてかえったの……信じら れないでしょ。
二人; ……
里香; でね、家に帰ってお話したら、とってもおもしろいの。今昔物語や、徒然草とか、やたらに詳しくって。わたしは、パソコンでいろんなこと教えてあげた。あの子も飲み込みがとても早くて。もう一人でいろいろ検索とかしてたの……本気にしてないでしょ。
まり子; それは……
好子; ね……
里香; わたしね、関東大の推薦やめることにしたの。まり子もあそこの推薦ねらってたでしょ。よかったらどうぞ。
まり子; どうぞって、里香……
好子; じゃ、どこの推薦ねらうの?
里香; 帝都大。
好子; あ、そう。
まり子; あ、そうって、あそこ推薦枠ないわよ。一般入試でうけられるの後藤君くらいのもんだわよ。
里香; わたしも一般入試。
二人; ええ!?
里香; 一寸法師がそうしろって。自分に一番正直で、まっすぐな道が一番だって。
まり子; それって……
里香; あとは言わぬが花。
好子; それもイッスンボウシが……?
里香; さあ……
まり子; で、その一寸法師は?
里香; 出て行っちゃった。パソコンに「お別れします。一寸」って、書き置き残して……この、お椀とお箸もね。
好子; それで……
まり子; これがなきゃ困るでしょうしね、一寸法師も。
里香; ……わたし、賭けてんの。
まり子; 賭ける?
好子; 何に?
里香; パソコンには、一寸としか書き込まれてなかった。
好子; それって名前でしょ、あの子の。
里香; だったら、一寸法師て書くじゃない……
まり子; あ、それって……?
里香; そう、だから賭けてみたの。
好子; え、なに、なに?
まり子; 一寸と書いて「ちょっと」て読むのよ。
里香; パソコンで世界が広がっちゃって、ちょっとの間だけのお別れなんじゃないかなって。
まり子; それで……
好子; じゃ、ここで待ってりゃ……
里香; ここにいちゃ、あの子も現れにくいわ。お椀とお箸を忘れていくくらいだもん。何かとっても大事なことか、おもしろいこと……
好子; 聞き出すんだね、それを!?
里香; ううん、そっと見守るだけ。
好子; なんだ、つまんない。
まり子; それが礼儀……なんだよね。
里香; うん。
まり子; じゃ、わたしたちも隠れていようよ。
里香; ごめん。ありがとうね。
好子; ううん、会いたいなあ……
まり子; いくよ。
里香; じゃね、一寸法師……

 その場を名残惜しそうに離れる三人。お椀とお箸にサス残り、一寸法師の歌フェードアップするうちに幕

 コントというには、少し長く、地味かなと思った。しかし作品には色というかスタイルというかがあるものなので、あえて、こういう作品にしてみた。わたしの場合ファンタジーの色が濃いので、そのひな形みたいなものにしてみた。というか、こういう情景が広がり、ふくらんで、一本の戯曲になっていく。このコントから、君やあなたなりにふくらませていただければ幸いである。わたしは……すでにふくらませてある。その手の内は……ナイショ、ナイショ。
 


『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』    

 10月25日に、青雲書房より発売。

青雲書房直接お申し込みは、定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。

お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。

青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp  ℡:03-6677-4351

また、アマゾンなどのネット通販でも扱っていただいておりますので、『まどか、乃木坂学院高校演劇部物語』で、ご検索ください。

 このも物語は、顧問の退職により、大所帯の大規模伝統演劇部が、小規模演劇部として再生していくまでの半年を、ライトノベルの形式で書いたものです。演劇部のマネジメントの基本はなにかと言うことを中心に、書いてあります。姉妹作の『はるか 真田山学院高校演劇部物語』と合わせて読んでいただければ、高校演劇の基礎連など技術的な問題から、マネジメントの様々な状況における在り方がわかります。むろん学園青春のラノベとして、演劇部に関心のないかたでもおもしろく読めるようになっています。
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