大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・タキさんの押しつけ書評『トム・クランシー「米中開戦」①②』

2014-02-21 09:54:21 | エッセー
タキさんの押しつけ書評
『トム・クランシー「米中開戦」①②』



これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が、個人的に身内に流している書評ですが、もったいないので転載したものです。


今や亡きクランシーの遺作、前半2巻です。

 ジャック・ライアン・シニアは前期大統領時代に一度 中共と戦争していますが、大統領職に返り咲いて 再度 中共と戦争になりそうです。

 物語上の中共・総書記は政治的クーデターにあい、絶体絶命の危地を解放軍主席によって助けられる。 解放軍主席は軍事的欲求が強く、総書記は自身の安泰の為 その欲求に荷担する。目指す所は南シナ海の完全制覇・香港/マカオの本土化・台湾統一。香港/台湾を経済特区として一気に財政の立て直しを図ると共に揺るぎないアジアの帝王の席に着くというもの。
 当然、アメリカが黙っている訳はないのだが、主席の元には世界最高のハッカー軍団がいた。元々 人民解放軍のハッカー軍団を作り上げた男がいて、彼は嘘の罪で収監され、後 脱獄、香港マフィアに匿われ マフィアの為に働く事を隠れ蓑に 実は解放軍の為にイリーガル活動を行っている。彼らは巧妙に全世界をハッキング、マフィア組織をも操り 自らは表に出ない。
 
 ペンタゴンもCIAも侵入に気づいてはいるが、証拠を掴めず 名指しで中共を非難できずにいる。

 そして中共は南シナ海の制覇の実力行使を発表、時期を同じくしてアメリカの無人機が複数コンピュータージャックされ使用不能となる。ジャック・ライアン・ジュニアは、全く別の案件を追う内に このハッカー軍団へと迫る。また、ハッカー側もジュニアの所属するヘンリー・アソシエイツ(ザ・キャンバスの隠れ蓑)を探ろうと触手を伸ばしている。アメリカ国内ではFBIにも目を付けられ、ジュニアの恋人が利用される。

 かかる危機状況下、実行部隊のボスだったクラークは前回作戦で負った傷がなおらず、自ら引退を申し出ている、しかも同時期 クラークの宿敵ロシア工作員がハッカー軍団にリクルートされている。  現在、双方共に 相手のすぐ近くに迫っている、どちらが先に相手の正体を掴むのか? 先手が圧倒的に有利なのだが……って所で2巻終了、早く続きが読みたい~!

 本作が優れているのは、中共の描き方です。過去に一度戦っているのですが、それ以降 現在までの中共を良く読み解いて あり得る状況を作り上げた点にあります。
 現実に解放軍ハッカーによってステルス情報が盗まれ、それをコピーして“殲”シリーズの戦闘機を作ったのは間違いなく、これに関して表立った抗議はしませんでしたが、当時 陽動として行われた財務省等へのサイバー攻撃を中共名指しで抗議しています。
 中共サイバーテロ部隊を構築した人物は良く知られた中国人ハッカーで、彼は後に金融詐欺に関わったとして逮捕されています。彼がその後どうなったかは分かりませんが、本作設定にあるように中共の偽装の疑いも拭えません。
 また、新列島線設定/警戒空域拡大と領空的運用/台湾への接近……あからさまになったのはクランシーの死後ですが、彼は見事に予言しています。
 当然、フィクションですが これまでの作品と同じく緻密な積み立ての上にストーリー構成されていますから リアルで読みあきしません。

 後半 出ましたらまた書きます。



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