時かける少女 BETA・4
《The implementation test=運用試験・2》
ミナの瞳が鳶色に輝いた……エノラゲイのクルーたちは目がくらんだ。
目が慣れると、とんでもないものが前方に見えた。
「機長、前方に自由の女神です……」
「バカな……」
「右一時方向に見えるのはロングアイランドでしょうか……」
副操縦主のロバートが、小学生が先生に聞くように言った。
「ようこそ、ニューヨークへ。本機は間もなくマンハッタン島を北北東に縦断いたしま~す。真下に見えますのがシンシン刑務所。ニューヨーク湾上空にさしかかりました。しばらく黄昏染まる全米一のパノラマをご堪能くださ~い」
ミナはニューヨーク観光ツアーガイドのように言った。
「機長、管区防空官制局が所属、飛行目的、目標地点を問い合わせてきました」
無線通信士のリチャードが、ヘッドセットを外し、すがるような眼差しで機長のポールに言った。
「どこの防空官制局だ?」
「北米、ニューヨーク管区です……」
「オレの方に回せ!」
「回しました」
「こちら陸軍航空隊509混成部隊第6爆撃隊エノラゲイ。本機はただいま特殊任務のために日本本土に向かいつつあり。目標地点については軍規により答えることができない……いや、だから……チ、切れてしまった」
「切ってあげたの。混乱するだけだから。まもなくマンハッタン上空よ」
「……なんだ、舵が効かないぞ」
「コントロールはあたしが握っているの。あなたたちは、これから起こることをよく記憶して。そして歴史の証言者になって」
眼下に、ヤンキーススタジアム、セントラルパークが通り過ぎて行った。
「もうすぐブロンクス。旋回するわよ」
「高度が低すぎる。ビルに接触するぞ!」
「この機体をよく見てもらうためよ。みんなびっくりしてるでしょ?」
「銃を構えている奴がいる!」
「下の人たちには、こう見えてるの……」
機種方向に映像が映った。一瞬分からなかった……分かった瞬間最大のショックに襲われた。トニー(飛燕)から撮った映像でニューヨークの街を下にしたエノラゲイは濃緑色の塗装に日の丸が付いていた。
「これが、エノラゲイなのか!?」
「捕獲されたんだから、日本の色になるの。当たり前でしょ」
「いつの間に……」
「ハハ、一瞬で四国の上空からニューヨークへ移動したのよ。これくらいのことで驚かないで」
「迎撃機が上がってきた、どうすりゃいいんだ!?」
後尾機銃手のジョージが叫んだ。
「大丈夫。ムスタングじゃ追いつけないわ。急上昇するからシートベルトきつく締めてね」
「な、なんだ、この速度と上昇角は!」
エノラゲイは、60度の上昇角、500ノットで、たちまちのうちに高度10000に達した。
「あなたたちが行こうとしていた広島には13人のアメリカ人の捕虜がいたの。知らないでしょ……上層部は知っていた。でもあなたたちには伝えなかった……リトルボーイを投下するわよ」
「待て、下はニューヨークだぞ! 何十万という人間がいる!」
「広島にもいるわ」
「後生だ、止めてくれ!」
「もう遅いわ。今投下しちゃった……」
「オオ、#”=~|¥&%%&&\\\*=#''"$&!?~~%%!!!!!!」
機長の叫びは言葉にはならなかった。最大の二乗の衝撃であった。
「人は殺さない。起爆は、高度5000に設定したわ。雲もあるし、直接見た人でも目が焼けることはないわ。5000ならワシントンからでも見えるでしょうね」
直後5000メートル下、ニューヨーク湾の5000メートル上空でリトルボーイがさく裂した……。
「ファットマンは、モスクワの上空8000でさく裂させました。コビナタさん、なにか変化はありました?」
「モスクワのは、隕石の爆発って発表されたわ。ただクレムリンは知っているから、アメリカの優位は確定的ね。日本は15日に、ちょっとだけ有利な条件で降伏した。何十万という命が救われた……それが、どう影響するかわは、これからの楽しみね」
コビナタとミナは、世界の木を見上げた。運用試験としては上出来だった……。
《The implementation test=運用試験・2》
ミナの瞳が鳶色に輝いた……エノラゲイのクルーたちは目がくらんだ。
目が慣れると、とんでもないものが前方に見えた。
「機長、前方に自由の女神です……」
「バカな……」
「右一時方向に見えるのはロングアイランドでしょうか……」
副操縦主のロバートが、小学生が先生に聞くように言った。
「ようこそ、ニューヨークへ。本機は間もなくマンハッタン島を北北東に縦断いたしま~す。真下に見えますのがシンシン刑務所。ニューヨーク湾上空にさしかかりました。しばらく黄昏染まる全米一のパノラマをご堪能くださ~い」
ミナはニューヨーク観光ツアーガイドのように言った。
「機長、管区防空官制局が所属、飛行目的、目標地点を問い合わせてきました」
無線通信士のリチャードが、ヘッドセットを外し、すがるような眼差しで機長のポールに言った。
「どこの防空官制局だ?」
「北米、ニューヨーク管区です……」
「オレの方に回せ!」
「回しました」
「こちら陸軍航空隊509混成部隊第6爆撃隊エノラゲイ。本機はただいま特殊任務のために日本本土に向かいつつあり。目標地点については軍規により答えることができない……いや、だから……チ、切れてしまった」
「切ってあげたの。混乱するだけだから。まもなくマンハッタン上空よ」
「……なんだ、舵が効かないぞ」
「コントロールはあたしが握っているの。あなたたちは、これから起こることをよく記憶して。そして歴史の証言者になって」
眼下に、ヤンキーススタジアム、セントラルパークが通り過ぎて行った。
「もうすぐブロンクス。旋回するわよ」
「高度が低すぎる。ビルに接触するぞ!」
「この機体をよく見てもらうためよ。みんなびっくりしてるでしょ?」
「銃を構えている奴がいる!」
「下の人たちには、こう見えてるの……」
機種方向に映像が映った。一瞬分からなかった……分かった瞬間最大のショックに襲われた。トニー(飛燕)から撮った映像でニューヨークの街を下にしたエノラゲイは濃緑色の塗装に日の丸が付いていた。
「これが、エノラゲイなのか!?」
「捕獲されたんだから、日本の色になるの。当たり前でしょ」
「いつの間に……」
「ハハ、一瞬で四国の上空からニューヨークへ移動したのよ。これくらいのことで驚かないで」
「迎撃機が上がってきた、どうすりゃいいんだ!?」
後尾機銃手のジョージが叫んだ。
「大丈夫。ムスタングじゃ追いつけないわ。急上昇するからシートベルトきつく締めてね」
「な、なんだ、この速度と上昇角は!」
エノラゲイは、60度の上昇角、500ノットで、たちまちのうちに高度10000に達した。
「あなたたちが行こうとしていた広島には13人のアメリカ人の捕虜がいたの。知らないでしょ……上層部は知っていた。でもあなたたちには伝えなかった……リトルボーイを投下するわよ」
「待て、下はニューヨークだぞ! 何十万という人間がいる!」
「広島にもいるわ」
「後生だ、止めてくれ!」
「もう遅いわ。今投下しちゃった……」
「オオ、#”=~|¥&%%&&\\\*=#''"$&!?~~%%!!!!!!」
機長の叫びは言葉にはならなかった。最大の二乗の衝撃であった。
「人は殺さない。起爆は、高度5000に設定したわ。雲もあるし、直接見た人でも目が焼けることはないわ。5000ならワシントンからでも見えるでしょうね」
直後5000メートル下、ニューヨーク湾の5000メートル上空でリトルボーイがさく裂した……。
「ファットマンは、モスクワの上空8000でさく裂させました。コビナタさん、なにか変化はありました?」
「モスクワのは、隕石の爆発って発表されたわ。ただクレムリンは知っているから、アメリカの優位は確定的ね。日本は15日に、ちょっとだけ有利な条件で降伏した。何十万という命が救われた……それが、どう影響するかわは、これからの楽しみね」
コビナタとミナは、世界の木を見上げた。運用試験としては上出来だった……。