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大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

あたしのあした09『プール入れませ~ん』

2020-06-01 06:21:33 | ノベル2

09

『プール入れませ~ん』      


 九月も下旬になろうかというのに、まだプールで泳いでいる者がいる。

 水泳の授業をサボリまくっていた者たちだ。
 理由のほとんどは「生理中」だ。ひどいときは半分近くがプールサイドで見学している。
「なんで、こんなに生理中が多いんだ!」
 体育の水野先生が吠えた。水野先生はオッカナイから、みんな俯く。
「いいか、規定の回数泳がなかったら単位認定しないからな!」
 そう言いながら、先生はプールサイドの見学組を睨み据える。
「だって、ほんとなんだもん……なんなら使用済みのナプキン見せましょうか?」
 横田智満子が大胆なことを言う。さすがの水野先生も言う言葉が無い。
 こういう要領を心得ているから、智満子はボスでいられた。
 で、けっきょくは、九月のこんな時期になって補講で泳がされている。浅はかなんだけど、当人たちはトレンドだと思っている。
 
 その智満子は、おとつい完膚なきまでに凹ませてやったので、この三日間学校を休んでいる。

 で、サボリ女子たちは大人しくプールの補講を受けているんだけど。こんな事件が起こった。

 あたしは、授業の後れを取り戻すために図書室で勉強していた。

「ごめんなさい、今日は、これで図書室は閉館です。直ぐに荷物を片付けて退出してください」
 司書の猪瀬さんが済まなさそうに宣言した。
「あのう……なんで閉館なんですか? 五時十五分までは開館じゃないんですか?」
 調子が乗って来たところだったので、思わず質問してしまった。
「ごめんなさいね、子どもが熱を出したので、保育所にお迎えにいかなきゃならないのよ」
 猪瀬さんは、眉をヘタレ八の字にして手を合わせた。
 だったら、他の図書部の先生が部屋番してくれればいいのに、と思ったけど。言ったら、猪瀬さんが困りそうなので、大人しく図書室を出た。

  キャーーーーー!! 

 覗き魔ああああああああ!!!

 下足室を出ると、プールの更衣室の方から悲鳴が聞こえた。
 とっさに更衣室の方へ駆け出すと、プールに隣接している通用門(普段は閉じられている)を乗り越えて逃げていく男の後姿が見えた。

 ブロン ブロロロローーーーー!!

 通用門の外に停めてあったのだろう、バイクが急発進して遠ざかっていく音がした。
 そして、問題は、これだけでは済まなかった。
 覗き魔は数枚の下着を盗んでいたのだ。
「あんちくしょー! 許せない!」
 補講女子たちは、そう息巻く……と思ったら。

「「「「「怖くって、プール入れませ~ん( ノД`)シクシク…」」」」」

 合法的なサボリの口実にしてしまった。

 水野先生は渋い顔をしたが、サボリ女子の後押しをするように、覗き魔は隠し撮りした動画をアップロードしていた。


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