大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:020『みっちゃん飛んで!』

2023-02-25 07:51:38 | 時かける少女

RE・

020『みっちゃん飛んで!』   

 

 

 あ………

 
 中臣先輩は息をのんだ。

 切り揃えた前髪で眉が隠れ表情が読めない。

 中臣先輩は表情の核心が眉、特に眉頭に現れる人なんだ。ピクリとしたかと思うと前髪で隠れてしまった。

 眉を見せてください……とも言えずに志村先輩に目を向ける。キリリとしたポーカーフェイスで、さっきまでの陽気さが無い。

 次の任務は、さらに大変そうだ。

 
 モニターには、どこにでもある一軒家が映っている。

 
 二階建てで、カーポートと十坪ほどの庭が付いている。

 ラノベの主人公が住んでいそうな中産階級の見本のような家。今にもトーストを咥えた女子高生が飛び出してきそうな雰囲気。そして、最初の角を曲がったところで男の子とぶつかって―― 失礼な奴! ――お互いに思う。そして学校に着いたら、そいつが転校生でビックリして、そこからお話が始まるとか……。

「ミッチャンの思ってる通りよ、しばらくしたら誰かが飛び出してきて、角を曲がったところでミッチャンとぶつかるの」

「そんなラブコメみたいな任務なんですか?」

「ラブコメではないと思うぞ。でも、そういうフラグが立っているのは分かる」

「そう、フラグなのよ……」

 志村先輩がマウスを操作すると、カメラが引きになりながら上昇……屋並みの向こうに学校が見えてくる。

「この学校が舞台なんですか?」

「これは小学校……見て、屋上のフラグ……」

「あ」

 それは、前の任務でも見た『白丸』だ。

「この『白丸』を『日の丸』に戻さなきゃクリアにはならないと思う」

「えと……旗を付け替えるとかじゃダメ……なんですよね(^_^;)?」

「この世界全てが当たり前に日の丸を掲げていなければだめだろ、白丸になっているというのは、歴史のどこかが狂ってしまった証拠だからな」

「じょ、冗談です(-_-;)」

 中臣先輩が言うのは、もっとシビアだった。

「でも、それは、このステージの任務ではないと思う」

「そうだな」

「チュートリアルに毛の生えたような任務だと思うわ。白丸に関わるのは、まだ先のような気がする。時美、設定画面を出して」

 カチ

 志村先輩がクリックすると、わたしの全身像が現れた。

「どうする、初期設定はリアルのままだけど」

「これでいいです、キャラクリしてもアビリティーは変わらないでしょうから」

「アビリティーは……HP50 MP50……それだけみたいだな」

「あ、あっさりしてますねえ(;'∀')」

「他に、なにかないの!?」

 気の毒に思った中臣先輩が手を伸ばすと、アバターがすごい速さで切り替わっていく。

 勇者 魔導士 錬金術師 剣士 弓兵 僧兵 妖精 鍛冶職人 スライム クリーチャー

 アバターの下には、HP、MP以外にもいろいろ出てくるんだけど、早すぎて読めない。

「あわわ(;#'∀'#)」

「美空、手を離せ!」

「ご、ごめんなさい!」

「……と、これでよし!」

 志村先輩が、なんとか元に戻すと、設定画面自体が点滅し始めた。

「時間が迫ってる。時実、ダブルクリック!」

「おお!」

 志村先輩がカチカチとクリックすると、ドアからトースト咥えて飛び出してきたショートヘアーの女の子……外股だ……え……え? 女装男子!?

「時間よ、みっちゃん飛んで!」

「は、はい!」

 返事すると同時にホワイトアウト、再び次元の狭間に投げ出されるわたしだった…… 

 

 ☆ 主な登場人物

  •  寺井光子  二年生
  •  二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される
  •  中臣美空  三年生、セミロングの『かの世部』部長
  •  志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長
  •  

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