千早 零式勧請戦闘姫 2040 ![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/f3/96d3c0f41234d37cb8d9792a1178c8ff.jpg)
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08『アラベスクをキメるウズメノミコト』
ズバッ!
剣を抜くと同時に太陽光パネルを切った。パネルは両断されて農協の車を挟むように飛んでいき反対側の田んぼに突き刺さった。
再び武人埴輪のように変身した千早だが、今度は頭にティアラのような天冠(てんかん)、背中にはマントが付いて魔法少女のようになっている!
――グレードアップ? また戦えってことぉ!?――
一瞬、不満に思う千早だが、体が自然に動く。
まだ解体が進んでいないパネルの間から黒い影たちがむくむくと湧き上がってくる。
――昨日より数が多い!――
思うと同時に突進して中央の二体の核を切る!
ズサズサ!
一体はすぐに霧消したが、一体は核の中心を外してしまって不完全燃焼の煙のように蟠る。
ゴホゴホ……
――少し吸い込んだ――
煙を避ける。
しかし、その数秒の間に四体の影が千早を取り囲み、輪を描き始める。
――囲まれる!――
シュラララーーン☆ シュラッ☆ シュラッ☆ シュララッ☆ シュラン☆
単に囲みの外に出ようとしただけなのだが、花火が爆ぜるように跳ねまわり、跳ねるたびに瞬間の決めポーズになってしまう。
――て、敵をやっつけなきゃ!――
シュラッ☆ シュララッ☆
数体撃破するが、やっぱり、1/100秒ほどの決めポーズ。
追ってきた敵を眼下に捉え、そのままぶちのめせばいいのに、白鳥が羽を広げるようにポーズ! 螺旋を描きながら急降下して影の核を四つに切って霧消させる!
シュラッ☆ シュラッ☆ シュララッ☆ シュラン☆
それから、連続して残りを切り伏せると、目に見える範囲から敵の姿は消えてしまった。
シャラン
剣と盾と勾玉が震えたかと思うと、一つに合体して浦安の舞の剣鈴に変わる。
シャラン!
もう一度震えると、剣鈴の柄を握る手が現われ、その先が膨らんだかと思うと派手な巫女服の女神がバレーのアラベスクを決めて出現した。
え( 〇Д〇)?
『どーもぉ、アメノウズメノミコトでーす(^▽^)』
「アメノウズメ?」
『ノミコト。ま、微妙に長いし、長い付き合いになりそうだし、アメノウズメでもいいわ』
「あの、天岩戸の……」
『そうよぉ、引きこもりのアマテラスを岩戸から引っ張り出した第一の功労者のアメノウズメノミコト、その人よ!』
千早は思い至った。
「あんなに無駄な決めポーズやらフリを付けて戦ったのは、あなたのせい?」
『そーだけど、こんど無駄って言ったら、こうなるからね』
シャラン
ウズメが口をΣにして鈴を鳴らすと、停まっていた時間が動き出し、農協の車はグシャグシャになって、貞治の胴体からは血しぶきを上げながら首が千切れ飛んでしまった。
「ええ!?」
ウズメが口をωにして、再び鈴を鳴らすと、情景は巻き戻って停止した。
『千早は巫女舞もヘタッピだからね、あたしが付いて踊れるようにしてやるから』
「あ、えと……」
『千早は神を宿す器になったけど、主神は、このウズメノミコトだから』
「主神はカミムスビノカミさんじゃあ……」
『カミムスビは神社の主神だ』
「あ、そか……」
『これからは幾柱も神を宿すことになる、管理するものが居ないと困るだろが』
「ああ、はい……ええとぉ」
『なんだ?』
「アメノウズメでも、ちょっと長いからウズメさんでいい?」
『ミコト省略かあ?』
「あ、さん付けはしてるし」
『……まあ、いいか』
「ありがとうございます!」
『うん、じゃあ。これからも励めよ』
シャラン
鈴の音とともにアラベスクを決めたかと思うと星くずになってウズメは消えてしまった。
風を感じたかと思うと、貞治のホログラムが戻り、農協の車は何事もなく先を進んで、学校のある九尾本町の家並の中に混じっていった。
☆・主な登場人物
八乙女千早 浦安八幡神社の侍女
八乙女挿(かざし) 千早の姉
八乙女介麻呂 千早の祖父
神産巣日神 カミムスビノカミ
天宇受賣命 ウズメ 千早に宿る神々のまとめ役
来栖貞治(くるすじょーじ) 千早の幼なじみ 九尾教会牧師の息子
天野明里 日本で最年少の九尾市市長
天野太郎 明里の兄
田中 農協の営業マン