清掃婦が男性用トイレを清掃して、個室の紙を取り替えるのは、デパートなどの商業施設や駅の構内で見かける日常的光景である。彼女たちは、個室が塞がっていれば、人が出てくるまで待っていなくてはならない。人が嫌がる仕事に黙々と従事している彼女たちの気持ちを思いやると心が痛む。
私は米国に30年生活したが、清掃のためとはいえ、男性用トイレに女性が入ってくるのを見たことがない。外国人旅行者も増えたが、彼らは男性用トイレに女性がいるのを見て、ビックリ仰天していることだろう。これは先進国ではありえない野蛮な光景なのである。女性人権運動家からクレームがつくのではないかと懸念するが、彼女たちは男性用トイレに入ることがないから、現状に気づいていないだろう(笑い)。
そもそも、欧米ではトイレの清掃は早朝または夜間とかその施設全体が閉館している時か、または一定時間トイレをクローズして行うものであって、人が出入りしている最中に行うことはない。人がいれば邪魔になって時間がかかり、効率が悪いということもある。だから、入口にバリケードを置いて、「清掃中」の札を置いて清掃する。日本でも以前はそうだったと記憶する。
日本では利用者の利便性を重視して、トイレを常にオープンにしておこうと、人が出入りしている最中に清掃するのだろうが、清掃する女性の屈辱感や外国人が感じる違和感、清掃作業の非効率など、デメリットが大きすぎる。
クローズされていたら、利用者はほかの場所にあるトイレを探せばいいこととだ。日本では消費者優先が行き過ぎている。
そこで、本稿の趣旨を200字ほどにまとめて、読売新聞の投書欄にメールしたが、採用されなかった。多分、投書欄担当者は現状維持主義者なんだろう。残念である。