先日、風呂が沸くまでの時間潰しのつもりで、テレビ朝日の「ニッポン視察団」という番組にチャネルを合わせたら、意外に面白くて風呂はそっちのけで最後まで見てしまった。何がそんなに面白かったかというと、外国人旅行者に人気がある商品の紹介である。
外国人旅行者が爆買いする商品は、医薬品・化粧品・衣類ぐらいだと思っていたら、意外な商品がぞろぞろ紹介された。焼き海苔(スナックとして食べるらしい)、七色とうがらし、菓子類(特に、煮た梅の実を漉して板状にしたスナック)、あぶらとり紙(顔の脂を取る紙)、箸(中国や韓国の箸は先端が尖っていない)、古着、ソックス(カラフルなもの、五本指のもの)、版画など。人気順に16位までが紹介されたが、一番人気はニッカウィスキーの余市*。これは意外だった*。
ここで日本におけるウィスキーの歴史を簡単に振り返ってみよう。1960年~1970年代は、外国から帰国した時の土産品はスコッチウィスキーだった。盆暮れの贈答品にもスコッチが使われた。輸入が制限されていたために価格がバカ高く、価値があったのである。
1960年代に私が日常飲むウィスキーはサントリーのトリスだった。“トリスを飲んでハワイに行こう”というキャッチコピーが評判になった。トリスのボトルを買うとハワイ旅行が当たったのである。
1970~1980年代は、日常飲んだウィスキーはサントリーの通称ダルマだった。ずんぐりむっくりした黒いボトルが一世風靡した。このダルマをバーでボトルキープするのが呑み助のお約束だった。
その後、ウィスキーの国内消費量は1983年(昭和58年)をピークに減少の一途を辿り、2008年(平成20年)には最盛期の3分の1にまで減少した。衰退の理由は、消費者の好みが多様化し、需要がワインと焼酎にシフトしたことにある。
輸入ウィスキーも需要が大幅に減退した。平成元年の酒税改正により、小売価格が大幅に安くなったことが原因である。価格低下が需要減退を招くとは逆説的だが、価格が安くなったために、贈答品としての価値を失ったのである。
その後、ハイボール人気でやや持ち直したとはいえ、長期的視野で見れば、まだまだウィスキーの消費量は低迷したままである。だから私は、日本酒とともに、ウィスキーは典型的衰退商品だという観念を持っていた。
それがなんと国産高級ウィスキーが外国人旅行者の人気商品になったとは!! 日本酒業界も輸出に活路を求めているが、ウィスキー業界も外国人に救われるのだろうか。まずはご同慶である。
(注)どうやって順位を決めたのか? まったく異質の商品の人気度をどうやって比べるのか、という突っ込みを入れたいところだが、たかがTVの娯楽番組だから、無粋なことはやめておく。また、ニッカの余市だけが人気があるというのも解せない。国産高級ウィスキー全般に人気がでている、と理解しておく。