(今回は私が現役時代の勤務先のOB会報に寄稿したエッセイを転載する。)
日本ではサケやブリを醤油に漬けこんで焼く料理を照り焼きと呼ぶが、米国ではチキンがテリヤキのメイン。その始まりは、1964 年にニューヨクで開催された世界博の日本館の店頭で、焼き鳥を Chicken Teriyaki として提供したこと。鶏肉の脂と醤油が焦げる香ばしい匂につられて、長蛇の列ができ、一気にテリヤキが市民権を得た。
そしてベニハナなどの日本食レストランだけでなく、一般レストランのメニューにもチキンテリヤキが登場するようになった。スーパーマケットでもテリヤキソースが売られ、家庭のバーベキューに使われるから、今やテリヤキという単語を知らないアメリカ人はいない。
その後、吉野家がチキンテリヤキをご飯にせた丼を主力商品にしたファーストド(FF)店をカリフォルニア州で多舗展開したことで、その模倣店が全米特にワシント州(主要都市はアル)に激増。Tokyo Teriyaki、Kyoto Teriyaki、Toshi’s Teriyaki, Ichiro Teriyaki(当時イチローがシアトル・マリナーズで大活躍していた)、Seoul Teriyaki(韓国人経営に違いない)、Kinza Teriyaki(韓国人は濁音が苦手なので、Ginza がKinzaになる)、Samurai Sam’s Teriyakiなどが、2005年当時360店あった。
中でもToshi’s Teriyakiは27店あるから、チェーン店だろうと推測できる。そして、Toshiの名前からして日本人経営と思われる。当時、私はロサンゼルスで日本食業界の情報誌を発行していたので、シアトルに出張したとき、その本部を取材しようとToshi’sの一つに電話して、本部の場所と電話番号を尋ねようと試みた。
“Hello!” (ハロー)
“Yoboseyo! This is Toshi’s Teriyaki.”(ヨボセヨ、トシズテリヤキです)
ヨボセヨというから韓国人らしい。
“I am editor of a Japanese food trade newspaper. May I speak to the owner?”
(私は日本食業界紙の編集者です。お店のオーナーをお願いします)
“I’m owner. What can I do for you?”
(私がオーナーだけど、どんなご用ですか?)
韓国人男性がオーナーということは、この店はToshi’sのフランチャイズなのか?
“We are conducting market research of Japanese restaurants…”
(私どもは日本食レストランの市場調査をやっておりまして…)
言い終わらぬ内にさえぎられた。
“This is a Korean restaurant, not Japanese.”
(当店は韓国レストランです。日本食ではないけど)
えっ、チキンテリヤキをメインにしながら韓国料理? 電話帳ではJapanese のカテゴリーに掲載されているのに! ともかく本部の電話番号を聞かなくては。
“OK. I want to interview somebody of your headquarter. Will you tell me phone number of your headquarter?”
(わかりました。では貴店の本部を取材したいので、本部の電話番号を教えていただけませんか)
“I don’t understand what you say. What do you mean by headquarter?”
(貴方の言っていることがわからない。本部ってどういうこと?)
本部の意味がわからない? ではこの男性が27店全部のオーナーなのか。それならまず社員が電話に出るはずだが。質問を変えよう。
“How many restaurants do you have?”
(失礼ですが、貴方は何店舗経営していらっしゃいますか?)
“One. Why do you ask that?”
(1店だ。なぜそんなことを聞くのか?)
“Never mind. Thank you, anyway. Good Bye.”
(失礼しました。とにかく、ありがとうございました)
27店あるToshi’s の1店がこの店なら、ほかの26店が正規のチェーン店で、この店はその模倣店なのか。それとも、27店がそれぞれ勝手にToshi’sを名乗っているのか。まぁ、どうでもいいことだから、Toshi’sの本部取材は断念した。その後に取材に訪れた食品問屋で聞くと、シアトル周辺のテリヤキチキンのFF店はほとんどが韓国人経営ということだった。
全米の日本食レストランの経営者(出資者)を人種別に分類した統計資料はない。しかし、問屋筋からの情報を総合すると、日本食レストラン全体の7割ぐらいは中国人、韓国人、タイ人などのアジア系で、日本人・日系人が1割、白人が1割、残りはラテン系等という構成である。そして、アジア系の半分くらいは韓国人らしい。
本国の不況に押し出されるように米国に移住して、手っ取り早く収入が得られるレストラン業に参入するが、小資本で始めるからどうしても小規模店にならざるをえない。そして、韓国料理では客が集まらず、人気がある日本食レストランを開業するというわけだ。そして、テリヤキは今や日本料理というより、インターナショナル料理に昇格したということなんだろう。
ともあれ、米国の日本食ブームのかなりの部分を韓国人が支えている。そこで気になるのが全米各地にある慰安婦像だ。在米コリアンが本国の支持団体と連携して建立しているのだが、その人たちの中には日本食レストランを営む人も多い。反日運動は商売とは別ということか(笑い)。
【写真説明】
Samurai Sam’sは白人経営の店。韓国人経営の店はこんなに垢抜けしていない(笑い)。
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