沢庵という漬物がある。
ご飯のおかずに、酒の肴に、まことに好ましい食べ物である。
禅僧の沢庵宗彭が考案したというが、怪しいものである。
沢庵漬けは、沢庵和尚が生きた江戸時代よりもずっと以前からあった。
漱石の『吾輩は猫である』に、登場人物の「理の陶然」が禅寺で修行して沢庵漬け(万年漬け)を食ったから、腹膜炎で死んでしまったという記述が出てくる。
禅院の食事としては、簡素で食うのに手間がかからず保存も効くので、絶好のものだったろう。
オカブも沢庵が大好きである。
沢庵だけで、飯が三杯は食える。
先人の創作の恩恵と、伝統の尊さの恩恵に毎日、浴しているわけである。
友逝きてすみれ揺らせる風のやふ 素閑
菫草この家のあるじの好ましき 素閑
菫咲き六十路の今日を刻みける 素閑
垣に咲くすみれををとめ歌にして 素閑
永遠の無辺の天地菫草 素閑
窓あくも菫の花のなかりけり 素閑
佳き日かな猫もながむる菫草 素閑
みやこに咲けどすみれをおもふ山の里 素閑
いつか来た路振りかえり菫草 素閑
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