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(BL小説)風のゆくえには~君は僕のもの1/3

2016年05月29日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切


渋谷慶……大学一年。身長164センチ。中性的で美しい容姿。でも性格は男らしい。
桜井浩介……大学二年。身長177センチ。外面明るく、内面病んでる。慶の親友兼恋人。


高校2年生のクリスマス前日から晴れて恋人同士となった慶と浩介。
慶は一年間の浪人生活を終え、無事に医大生になり、部活とバイトと浩介漬けの日々を送っている。
浩介は、慶がアルバイト先でモテモテなことにイライラモヤモヤ……
そんな二人の大学生時代(慶一年、浩介二年の4月末)。浩介視点で。




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『風のゆくえには~君は僕のもの』



 慶は、大学に入学してすぐ水泳部に入部した。なんでも、医大生のほとんどは何かしらの部活に所属しているらしい。そして、水泳部は土日に時々練習や試合が入るけれど、基本は平日の朝練のみなので、平日の放課後、大学近くの喫茶店『アマリリリス』でアルバイトをはじめた。


 最近の慶は、キラキラ度が半端ない。
 ただでさえ美形なのに、最近通いはじめた美容室の担当者の腕が良くて……、くせっ毛を活かしたフワフワした長めの髪型がものすごく似合っていて、余計に芸能人みたいになっているのだ。さっそく『アマリリリス』にも慶目当ての女性客が訪れはじめているとは聞いていたけれど……

(多すぎだ!)

 『アマリリリス』は高校の同級生の安倍の伯母さんがやっている店のため、安倍から「くれぐれも客にお前らの関係を知られるな」と言われている。だから、ずっと行くのを控えていたのだけれども、先日我慢できずに行ってみたら、びっくりするほど慶が女性客に声をかけられていて……。
 カウンターの隅に座って本を読んでいるフリをしつつ、内心は嫉妬がグルグル渦巻いて、おいしいはずのコーヒーの味もまったく分からなかった。

「渋谷君、彼女いるの?」
「デートして!」
「合コンするからきてくれない?」

 なんなんだ?!ってくらいの量のお誘い。大学生、高校生、母親世代のおばさんまでにも声をかけられている。

 でも……

「すみません。彼女はいないけど、好きな人はいるので」

 慶はにっこりと営業スマイルを浮かべながら一刀両断に断ってくれていた。

 そして。

(………慶)

 他からは見えない角度でポンポンっとおれの腿をたたいてくれた。ものすごい優越感。

(おれのもの。慶はおれのもの!)

 叫びだしたくなったけれども、我慢我慢……。

 安倍に釘を刺されているので、その後は店に行っていない。きっとまた女性客に囲まれているんだろうな、と思うとため息しかでてこない……。


***


 日曜日。部活帰りの慶と、渋谷で待ち合わせをした。
 繁華街での待ち合わせでは、慶には絶対に言えない内緒の楽しみがある。


 慶は一人で立っていると、数分に一度は知らない人から声をかけられる。それは、逆ナンパだったり、芸能事務所のスカウトだったり、色々だ。慶はいつもそれを面倒くさそうに断る。誰が話しかけてもぶっきらぼうに対応する。

 でも。

『慶』
 おれが呼びかけて駆け寄ると、途端に、ぱああっと明るい表情になり、

『浩介!』
 嬉しそうに手を振ってくれるのだ。
 その可愛さといったらもう………何度我慢できずにその場で抱きしめたことだろう。(そして、毎回蹴られる……)


「あ、また……」

 待ち合わせ場所に一人で立っている慶をこっそり眺めていたら、慶が男性から名刺みたいなものを強引に渡されはじめた。芸能事務所とかかな……

 でも、慶はやっぱり仏頂面。慶は普段知ってる人には愛想いいけれど、こういうスカウト的な人にはとことん冷たい。騙されてお金を取られる、と本気で思っているからだ。絶対に本物のスカウトだと思うんだけど……。

 ようやく諦めたそのスカウトマンが去っていくと、慶はキョロキョロと左右を見渡しはじめた。その抜群の美貌で周りにいる人の視線を釘付けにしていることに本人は気がついていない。

(おれのこと、探してくれてる……)

 あんなに注目を集めてるのに、探している相手はおれだけ。なんて優越感……。先日の『アマリリリス』での秘密の触れ合いの時に感じた気持ちと似ている。

 根本的に自分に自信がないおれは、どうしても人と比べたくなってしまうのだ。それで安心したくなる。


 そろそろ出ていこうかな。声をかけたら、きっとあの眩しい笑顔を向けてくれるだろう。あの笑顔はおれだけのもの。この人はおれのものだ、と実感できる甘美な瞬間……。

 愛しい思いでうっとりとしていたところ、

「桜井?」
「わっ」

 いきなり横から声をかけられ飛び上がってしまった。振り向くとそこには………

「か、上岡?」
「何ニヤニヤしてんだよ」

 元バスケ部チームメイトの上岡武史が立っていた。



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お読みくださりありがとうございました!続きは明日更新予定です。

読切のつもりだったのですが、ダラダラと長くなってしまい……
なんだかとりとめがなさすぎて、没ろうかとも一瞬思ったのですが、
せっかく書いたしな……武史のこと書いてあげたかったしな……ということで、載せさせていただくことにしました。
でもそのまま載せるにはあまりにもダラダラしすぎているので、少し手直しをして3つに分けることにしました。これでちょっとはダラダラ感が緩和されるといいのですが……
次回もよろしければどうぞよろしくお願いいたします!


更新していないのにも関わらず、見に来てくださった方、クリックしてくださった方、本当にありがとうございます!

なんだかすごーく古いのまで読んでくださっている方もいらっしゃって、嬉しいやら恥ずかしいやら、本当にありがとうございます!
慶と浩介の話を遡ってお読みくださった方も本当にありがとうございます!

読みにきてくださった皆々様に感謝申し上げます。
よろしければ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

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してくださった方、ありがとうございました!

「風のゆくえには」シリーズ目次 → こちら
コメント (2)
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