すみません。再録です。
2017年4月28日投稿「現実的な話をします14」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます
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桜井浩介&渋谷慶カップルの高校同級生、溝部が、長年の片想いを実らせ鈴木さん(バツイチ子持ち)と結婚することになりました。
そこで、山崎と長谷川委員長も、浩介&慶のマンションに呼び出され……
【山崎視点】
2017年2月23日(木)
溝部が鈴木と結婚すると言う。
そのラインを読んだときには、どうせ溝部が勝手に先走っているのだろうと思ったけれど、どうやら本当にそうらしくて……
それで、新居について相談があるそうで、木曜の仕事帰りに集合をかけられた。場所はいつもの、桜井と渋谷のマンション。
桜井と渋谷は、高校2年の冬からずっと付き合っていて、今は一緒に住んでいる同性カップルだ。同性なので、こちらも気兼ねがなくて、ついつい甘えて二人の家に入り浸ってしまっている。どちらかが女性だったら、こうまでたまり場にはならなかっただろう。
「あれ? 新婚山崎、こんなとこ来てていいのか?」
「委員長!」
着いたなり、長谷川委員長がいて驚いた。委員長まで誘っていたのか。
「あ、うん。彼女、毎週木曜は行くところがあって……。って、昨年は結婚式来てくれてありがとうございました」
会うのは自分の結婚式以来なので、そんな挨拶をしたりしていたら、溝部が「桜井ー、もう食べよーぜー」と騒いでいるのが聞こえてきた。
「溝部、本当に結婚するのかな……」
「らしいぞ?」
委員長は肩をすくめて、少し笑った。
「これで、2年10組内で3カップル目だな」
「…………だね」
長谷川委員長と川本沙織。桜井と渋谷。そして、溝部と鈴木。
同じ教室で過ごしてから、もう25年……。人生を共にする仲間がいるなんて、すごく……すごく不思議な感じだ。
***
「……で、陽太の学校のことを考えたら、I駅付近ってことは決定なわけだよ。でも、Iを終の住処にしたいわけじゃないから、とりあえず陽太が中学卒業するまでは賃貸って思ってて」
「なるほど」
渋谷は遅くなるというので、残りのメンバーで先に食べはじめながら、溝部の相談とやらを聞いている。桜井の作る料理はあいかわらずの美味しさで、箸も進むし話もはずむ。
「で、長谷川委員長にお聞きしたい!」
「おお。なんだ」
溝部が箸を持ったまま、真剣に委員長に問いかけた。
「いつエッチしてんの?」
「…………………」
「…………………」
「……………………は?」
な、なんだっその質問は……っ
オレも桜井もぎょっとしてしまう。でも、長谷川委員長は、
「いつっていうのは、時間帯の話か?」
全然動じてない。真面目に返している。さすがだ……。溝部もいたって真面目に聞いている。
「そうそう。時間帯の話。夜中、子供が寝てからだよな? でもマンションだと、同じ階なわけだし、いつ起き出すかヒヤヒヤして集中できなくね? 幼児ならともかく、小学生じゃ誤魔化せないだろ?」
「まあ、そうだな。できないな」
「じゃあ、どうしてんだ?」
「ちょっと溝部……」
そんなプライベートな話……と、たしなめようとしたけれど、長谷川委員長は躊躇なくあっさりと答えた。
「朝だよ。上の子が8時前には小学校いくし、下の子の幼稚園バスは8時15分にマンションの下までくるからな」
「で……」
「オレはフレックスだから、一番遅くて10時半出社ができる。そうすると、まあ、9時半に出てけばいいから……」
「一時間……」
「ってことだ」
「……………」
「……………」
「なーるーほーどー」
溝部がポンと手を打った。
「いや、マンションが厳しいようなら、山崎のとこみたいなテラスハウス、とも思ってたんだけど、朝とはなあ」
なるほど。すっげー参考になった。サンキュー、と溝部はニコニコしている。
「わ………鈴木とそんな話してんだ……?」
想像できない……って、でも、結婚するんだから当然か……。と思いきや、
「いや? いいって言うまで手出さないって約束だから、全然そんな話してねーぞ?」
「え!?」
な、なにそれ!?
「まだ、ほっぺにチュー止まりでさー」
「えええええ!?」
「うわなにそれっ」
「小学生かよ………」
一斉のツッコミに、「だよな~~」と溝部は肯くと、
「で、次の段階は、やっぱり、普通にキス、だよな? はい、桜井君。君たちどのタイミングで初めてキスした?」
「え!?うち!?」
急な指名に、桜井は、わわわ、と言いつつも、ちょっと嬉しそうに、
「うちはさ~~付き合う前だったんだよねえ~~」
「付き合う前?どういうことだ?」
あのねえ……と、これでもかというくらいデレデレの顔になっている桜井……
「高2の後夜祭の時にさ~~こう、なんていうの? どちらからともなく自然に……」
「雰囲気に流されたってことだな?」
「う………なんかその言い方やだ……」
委員長のツッコミに桜井が文句を言っているそばで、溝部は「げー、後夜祭ってあの時かよー……」と何かぶつくさ言っていたけれども、「はい次」とオレを箸で指してきた。
「次、山崎君と菜美子ちゃん」
「え……」
詰まってしまう。えーと、キス? キスは………
「ご両親に挨拶に行った日の夜だったような……」
「うわなんだそれ!真面目か!」
「今時めずらし過ぎな真面目さだな……」
「紳士的ー」
さすが山崎。さすが役人。と意味の分からないことを言われ、ちょっと気まずい。
いや、確かにキスはそのタイミングだけど、最後までしたのは付き合う前……なんてことは絶対に言わない。
「委員長は?」
「うちは、オレの誕生日だったかな……」
「おお~なんかいいなあ」
確か、委員長と川本沙織は、卒業後にクラスの有志で行ったスキー旅行の時に委員長が告白して付き合うことになった……と聞いている。オレはその旅行に参加していないから詳しくは知らないのだけれども……
「委員長って誕生日いつ?」
「4月20日」
「じゃあ付き合って1ヶ月くらいか……」
なるほどな……と溝部。
「オレ来月誕生日なんだよな~。プレゼントそれお願いしようかなあ……」
「え、それ?」
「42でそれか……」
「うわあ。なんかピュアな感じでいいねえ」
口々に言うと、溝部は「まあさあ……」とふっと遠くを見る目になった。
「ここまでくるのに25年かかったわけだからさ。いいんだよ。ゆっくりで」
今まで見たことないような穏やかな瞳……
「結婚するって、一生一緒にいるってことだろ? 時間たっぷりあるもんな」
「溝部………」
うわ……なんか………
「溝部かっこいい……」
思わず、といった感じに桜井がつぶやくと、
「え、そうか!?」
途端にいつもの溝部に戻ってしまった。
「よし。じゃあ今度口説く時に使ってみよう」
「口説くって……」
「婚約したのに、まだ口説いてるって、面白いよな……」
「ねえ、本当に、結婚オーケーしてくれたの? 溝部の勘違いじゃない? 大丈夫?」
「なんだと桜井!失礼だな!信じろよ!」
わあわあ騒いでいる中、
「ただいまー」
ひょいっと、あいかわらずのキラキライケメン渋谷が部屋に入ってきた。途端に、パアッと桜井の顔が明るくなる。
「お帰りなさい!お疲れ様~~」
「お疲れー」
「お邪魔してます」
「雰囲気に流されて後夜祭の最中にキスしちゃった渋谷君、おかえりー」
溝部……………。
あ、渋谷、固まってる……。
「わあああっ溝部!何でそういうこと言うの! 慶、怒らないでー!」
桜井が叫んだけれど、溝部は全然動じない。
「あー、オレが灰色の高校生活送ってた間、お前らが陰でイチャイチャしてたかと思うとホント腹立つわー」
「そ、そんなこと言われてもっ」
「あの後夜祭でだって、一人寂しく過ごした奴がどれだけいると……」
「……言いたいことは色々あるが」
「え」
ボソっといった渋谷の声に、溝部が押し黙った。美形の真顔はこわいのだ。さすがの溝部もビビり気味に渋谷を見かえしている。
「溝部……」
「な、なんだよ……」
上擦った声の溝部を、渋谷はジッと見つめると……
「婚約おめでとう」
そういって、ふっと笑った。
「…………」
「…………」
「…………」
そういえば、そのセリフ、誰も言ってない……。
「うわー……なんか負けた気しかしねえ……」
ガッカリとした溝部。「なんだそりゃ」と渋谷は苦笑気味に言ってから、あ、そうそう、と言葉を継いだ。
「夫婦で出かけたい、とかあったら、陽太君のこと預かるから言えよ?」
「え、いいのか?」
「もちろん。なあ? 浩介」
「うん」
桜井はコックリと肯くと、ぐっと溝部にガッツポーズをしてみせた。
「だから溝部も頑張って、せめてキスくらいさせてもらえるようになってね」
「う………」
「キスくらいって何の話だ?」
「それがさ……」
桜井が渋谷の食事の用意のために立ち上がり、渋谷もネクタイを緩めながらその後をついていく。
あいかわらず2人一緒にいることが当然、のような桜井と渋谷。オレ達は25年以上前にもこの光景をみていた。
「あー……オレもがんばろ」
「おお。がんばれ」
溝部の言葉に、委員長も笑った。考えてみたら委員長も川本とずっと一緒にいるんだよな……
そんなに長い年月を共に過ごすって、どういう感じなんだろう。
(その答えは25年後にしか分からないわけだけれども……)
きっとこんな風に、自然に一緒にいて、見つめ合って、笑っていられると思う。
溝部と鈴木も。オレと菜美子さんも。
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お読みくださりありがとうございました!
山崎たちが25年経った時には、慶と浩介は50年経ってますね……
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2017年4月28日投稿「現実的な話をします14」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます
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桜井浩介&渋谷慶カップルの高校同級生、溝部が、長年の片想いを実らせ鈴木さん(バツイチ子持ち)と結婚することになりました。
そこで、山崎と長谷川委員長も、浩介&慶のマンションに呼び出され……
【山崎視点】
2017年2月23日(木)
溝部が鈴木と結婚すると言う。
そのラインを読んだときには、どうせ溝部が勝手に先走っているのだろうと思ったけれど、どうやら本当にそうらしくて……
それで、新居について相談があるそうで、木曜の仕事帰りに集合をかけられた。場所はいつもの、桜井と渋谷のマンション。
桜井と渋谷は、高校2年の冬からずっと付き合っていて、今は一緒に住んでいる同性カップルだ。同性なので、こちらも気兼ねがなくて、ついつい甘えて二人の家に入り浸ってしまっている。どちらかが女性だったら、こうまでたまり場にはならなかっただろう。
「あれ? 新婚山崎、こんなとこ来てていいのか?」
「委員長!」
着いたなり、長谷川委員長がいて驚いた。委員長まで誘っていたのか。
「あ、うん。彼女、毎週木曜は行くところがあって……。って、昨年は結婚式来てくれてありがとうございました」
会うのは自分の結婚式以来なので、そんな挨拶をしたりしていたら、溝部が「桜井ー、もう食べよーぜー」と騒いでいるのが聞こえてきた。
「溝部、本当に結婚するのかな……」
「らしいぞ?」
委員長は肩をすくめて、少し笑った。
「これで、2年10組内で3カップル目だな」
「…………だね」
長谷川委員長と川本沙織。桜井と渋谷。そして、溝部と鈴木。
同じ教室で過ごしてから、もう25年……。人生を共にする仲間がいるなんて、すごく……すごく不思議な感じだ。
***
「……で、陽太の学校のことを考えたら、I駅付近ってことは決定なわけだよ。でも、Iを終の住処にしたいわけじゃないから、とりあえず陽太が中学卒業するまでは賃貸って思ってて」
「なるほど」
渋谷は遅くなるというので、残りのメンバーで先に食べはじめながら、溝部の相談とやらを聞いている。桜井の作る料理はあいかわらずの美味しさで、箸も進むし話もはずむ。
「で、長谷川委員長にお聞きしたい!」
「おお。なんだ」
溝部が箸を持ったまま、真剣に委員長に問いかけた。
「いつエッチしてんの?」
「…………………」
「…………………」
「……………………は?」
な、なんだっその質問は……っ
オレも桜井もぎょっとしてしまう。でも、長谷川委員長は、
「いつっていうのは、時間帯の話か?」
全然動じてない。真面目に返している。さすがだ……。溝部もいたって真面目に聞いている。
「そうそう。時間帯の話。夜中、子供が寝てからだよな? でもマンションだと、同じ階なわけだし、いつ起き出すかヒヤヒヤして集中できなくね? 幼児ならともかく、小学生じゃ誤魔化せないだろ?」
「まあ、そうだな。できないな」
「じゃあ、どうしてんだ?」
「ちょっと溝部……」
そんなプライベートな話……と、たしなめようとしたけれど、長谷川委員長は躊躇なくあっさりと答えた。
「朝だよ。上の子が8時前には小学校いくし、下の子の幼稚園バスは8時15分にマンションの下までくるからな」
「で……」
「オレはフレックスだから、一番遅くて10時半出社ができる。そうすると、まあ、9時半に出てけばいいから……」
「一時間……」
「ってことだ」
「……………」
「……………」
「なーるーほーどー」
溝部がポンと手を打った。
「いや、マンションが厳しいようなら、山崎のとこみたいなテラスハウス、とも思ってたんだけど、朝とはなあ」
なるほど。すっげー参考になった。サンキュー、と溝部はニコニコしている。
「わ………鈴木とそんな話してんだ……?」
想像できない……って、でも、結婚するんだから当然か……。と思いきや、
「いや? いいって言うまで手出さないって約束だから、全然そんな話してねーぞ?」
「え!?」
な、なにそれ!?
「まだ、ほっぺにチュー止まりでさー」
「えええええ!?」
「うわなにそれっ」
「小学生かよ………」
一斉のツッコミに、「だよな~~」と溝部は肯くと、
「で、次の段階は、やっぱり、普通にキス、だよな? はい、桜井君。君たちどのタイミングで初めてキスした?」
「え!?うち!?」
急な指名に、桜井は、わわわ、と言いつつも、ちょっと嬉しそうに、
「うちはさ~~付き合う前だったんだよねえ~~」
「付き合う前?どういうことだ?」
あのねえ……と、これでもかというくらいデレデレの顔になっている桜井……
「高2の後夜祭の時にさ~~こう、なんていうの? どちらからともなく自然に……」
「雰囲気に流されたってことだな?」
「う………なんかその言い方やだ……」
委員長のツッコミに桜井が文句を言っているそばで、溝部は「げー、後夜祭ってあの時かよー……」と何かぶつくさ言っていたけれども、「はい次」とオレを箸で指してきた。
「次、山崎君と菜美子ちゃん」
「え……」
詰まってしまう。えーと、キス? キスは………
「ご両親に挨拶に行った日の夜だったような……」
「うわなんだそれ!真面目か!」
「今時めずらし過ぎな真面目さだな……」
「紳士的ー」
さすが山崎。さすが役人。と意味の分からないことを言われ、ちょっと気まずい。
いや、確かにキスはそのタイミングだけど、最後までしたのは付き合う前……なんてことは絶対に言わない。
「委員長は?」
「うちは、オレの誕生日だったかな……」
「おお~なんかいいなあ」
確か、委員長と川本沙織は、卒業後にクラスの有志で行ったスキー旅行の時に委員長が告白して付き合うことになった……と聞いている。オレはその旅行に参加していないから詳しくは知らないのだけれども……
「委員長って誕生日いつ?」
「4月20日」
「じゃあ付き合って1ヶ月くらいか……」
なるほどな……と溝部。
「オレ来月誕生日なんだよな~。プレゼントそれお願いしようかなあ……」
「え、それ?」
「42でそれか……」
「うわあ。なんかピュアな感じでいいねえ」
口々に言うと、溝部は「まあさあ……」とふっと遠くを見る目になった。
「ここまでくるのに25年かかったわけだからさ。いいんだよ。ゆっくりで」
今まで見たことないような穏やかな瞳……
「結婚するって、一生一緒にいるってことだろ? 時間たっぷりあるもんな」
「溝部………」
うわ……なんか………
「溝部かっこいい……」
思わず、といった感じに桜井がつぶやくと、
「え、そうか!?」
途端にいつもの溝部に戻ってしまった。
「よし。じゃあ今度口説く時に使ってみよう」
「口説くって……」
「婚約したのに、まだ口説いてるって、面白いよな……」
「ねえ、本当に、結婚オーケーしてくれたの? 溝部の勘違いじゃない? 大丈夫?」
「なんだと桜井!失礼だな!信じろよ!」
わあわあ騒いでいる中、
「ただいまー」
ひょいっと、あいかわらずのキラキライケメン渋谷が部屋に入ってきた。途端に、パアッと桜井の顔が明るくなる。
「お帰りなさい!お疲れ様~~」
「お疲れー」
「お邪魔してます」
「雰囲気に流されて後夜祭の最中にキスしちゃった渋谷君、おかえりー」
溝部……………。
あ、渋谷、固まってる……。
「わあああっ溝部!何でそういうこと言うの! 慶、怒らないでー!」
桜井が叫んだけれど、溝部は全然動じない。
「あー、オレが灰色の高校生活送ってた間、お前らが陰でイチャイチャしてたかと思うとホント腹立つわー」
「そ、そんなこと言われてもっ」
「あの後夜祭でだって、一人寂しく過ごした奴がどれだけいると……」
「……言いたいことは色々あるが」
「え」
ボソっといった渋谷の声に、溝部が押し黙った。美形の真顔はこわいのだ。さすがの溝部もビビり気味に渋谷を見かえしている。
「溝部……」
「な、なんだよ……」
上擦った声の溝部を、渋谷はジッと見つめると……
「婚約おめでとう」
そういって、ふっと笑った。
「…………」
「…………」
「…………」
そういえば、そのセリフ、誰も言ってない……。
「うわー……なんか負けた気しかしねえ……」
ガッカリとした溝部。「なんだそりゃ」と渋谷は苦笑気味に言ってから、あ、そうそう、と言葉を継いだ。
「夫婦で出かけたい、とかあったら、陽太君のこと預かるから言えよ?」
「え、いいのか?」
「もちろん。なあ? 浩介」
「うん」
桜井はコックリと肯くと、ぐっと溝部にガッツポーズをしてみせた。
「だから溝部も頑張って、せめてキスくらいさせてもらえるようになってね」
「う………」
「キスくらいって何の話だ?」
「それがさ……」
桜井が渋谷の食事の用意のために立ち上がり、渋谷もネクタイを緩めながらその後をついていく。
あいかわらず2人一緒にいることが当然、のような桜井と渋谷。オレ達は25年以上前にもこの光景をみていた。
「あー……オレもがんばろ」
「おお。がんばれ」
溝部の言葉に、委員長も笑った。考えてみたら委員長も川本とずっと一緒にいるんだよな……
そんなに長い年月を共に過ごすって、どういう感じなんだろう。
(その答えは25年後にしか分からないわけだけれども……)
きっとこんな風に、自然に一緒にいて、見つめ合って、笑っていられると思う。
溝部と鈴木も。オレと菜美子さんも。
-------------------------------
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山崎たちが25年経った時には、慶と浩介は50年経ってますね……
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