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再録・(BL小説)風のゆくえには~ずっと一緒に

2017年08月07日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 短編読切
すみません。再録です。
2016年7月26日投稿「たずさえて11」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます



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訳あって、高校の同級生・山崎と一緒に樹理亜とユウキのつとめるバーを訪れた浩介。
その後、山崎は戸田先生の元へ。そして浩介は慶と駅で待ち合わせ^^

浩介と慶は高校時代からの恋人同士。
樹理亜は慶に片思い中。ユウキは樹理亜に片思い中。

2015年12月26日(土)夜のお話です。


【浩介視点】


 山崎と一緒に店を出て、慶との待ち合わせの駅に向かった。山崎にはすぐに戸田先生の元に行ってもらい、おれは改札前で慶を待つ。一緒に住むようになってからは、外で待ち合わせる、という機会が減ったので、新鮮でいい。

「…………あ」

 遠くからでも分かる、慶のオーラ。周りの人が時々振り返るから、それで余計に分かるのかもしれない。

「浩介!」

 おれの姿を見つけた慶がニコニコで手を上げ、人の波と共に改札を抜けて、こちらに向かって歩いてきてくれる。

「慶………」

 ああ………抱きしめたい。
 どうしてこの人はいつまでたってもこんなに可愛いんだろう。どうしてこんなに真っ直ぐおれを見てくれるんだろう。

「慶っ」
 我慢できなくて、近づいてきたその腕を掴み、引き寄せると、

「あほかっ往来で何してんだよっ」
「痛っ」

 速攻で蹴られた………
 人前ではつれないところも、いつまでたっても変わりません……


***


「慶先生ー、今日、浩介先生、他の男とイチャイチャしてたよー」
「ユウキ君っ」

 店に入るなり、ユウキにとんでもないことをいわれて焦ってしまう。
 でも、慶はあっさりと、

「あー、聞いてる。ありゃ高校の同級生だ」
「えーでもさー」

 慶にあっさりあしらわれたのが気に入らないらしく、ユウキは不満げだ。

「すんごい仲良さそうだったよ?」
「そりゃ付き合い長いからな」
「ふーん……」

 いつものカウンター席に座ったところで、ユウキが温かいおしぼりを渡してくれながら言う。

「慶先生さあ、そんな余裕かましてるとそのうち痛い目あうよ?」
「痛い目?」

 きょとん、と二人で見返すと、ユウキは口を尖らせたまま、

「浮気、とか」
「浮気ー?」

 ぷっと吹き出してしまう。

「ないない。あるわけない」
「そう言ってる人があやしいんだよー?」

 ユウキの口は尖ったままだ。

「慶先生、ホント知らないからねー?」
「何が」

 慶も苦笑したまま、ユウキを見返した、が、

「こういう人が、朝起きたら突然いなくなってたりするんだよ?」
「……っ」

 ピキッと固まってしまった。

 まずい。それはNGワードだ……

 でも、ユウキは気が付くことなく、メニューの表を差し出してから行ってしまった。こんな爆弾落としておいて……

「……慶?」

 慶はまだ固まっている。これはこのことについて何かツッコむべきなのか、それともスルーするべきなのか……

 慶は今だに、今から10年以上前、おれが突然、慶を置いて日本を離れたことを根に持っている。いや、根に持っている、という言い方はおかしいか……。
 その時のことを思いだすと、ストーンと穴の中に落ちていくような感覚に陥る、と前に言っていたことがある。もしかして今も、穴の中に落ちてしまっているんだろうか……

「慶?」
「………浩介」
「!」

 カウンターの上に置いていた左手をギュウッと握られた。慶は下を向いたまま、ポツンと言った。

「お前……いなくなる?」
「…………」

 握られた手を両手で包み込み、慶の顔をのぞきこむ。

「いなくならないよ?」
「………」
「ずっとずっと一緒にいるよ?」
「………」

 目をつむってしまった慶の目尻に唇を落とす。頬にも落とす。

「ずっと、一緒にいようね」
「…………ん」

 かわいいかわいい慶……
 「ずっと一緒に」は慶がよく言ってくれる言葉だ。慶は、「好き」とかそういう直接的な愛の言葉はめったに言ってくれないけど、「ずっと一緒に」とか「ずっとそばに」とかは、呪文のように言ってくれる。

 たぶん、慶自身が強く強く願ってくれている言葉……いとおしくてたまらない……

 コクッと小さくうなずいた慶の額に額を合わせ、そして………と思ったところで、

「あー!ラブラブーいいなー!」
「…………あ」

 甲高い声に我に返った。目黒樹理亜が、パタパタと両手を振っている。

「いーなーいーなーいーなー」
「………………」

 その後ろでニターッとしているユウキ。
 彼は樹理亜に片想いしている。わざとけしかけるようなことを言って、おれ達をイチャイチャさせ、それを樹理亜に見せたかったらしい……。

「あたしもラブラブしたーい!」
「だから樹理、ボクと……」
「ユウキはお友達だからダメだってー」

 前からよく見かける光景だけれども、前よりも少し、樹理亜の拒否感が薄くなってきた気が…………

「……浩介。何飲む?」
「あ、うん」

 わざとメニュー表を、慶の手に重ねて持つ。重なった手から温かい気持ちが伝わってくる。

「一緒のがいいな」
「ん」

 うなずいた慶の目尻に再び唇を落とす。

 ずっとずっと、一緒がいい。



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お読みくださりありがとうございました!
2015年12月のお話なので、まだ慶があまり「好き」って言ってくれてない……。

以上を持ちまして、再録終了となります。
次回、サイト開設11周年ということで、8月10日21時35分に、単なる日常短編を1つ更新して、1ヶ月お休みさせていただきます。

クリックしてくださった方、読みに来てくださった方、本当にありがとうございました!
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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