すみません。再録です。
2016年7月26日投稿「たずさえて11」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます
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訳あって、高校の同級生・山崎と一緒に樹理亜とユウキのつとめるバーを訪れた浩介。
その後、山崎は戸田先生の元へ。そして浩介は慶と駅で待ち合わせ^^
浩介と慶は高校時代からの恋人同士。
樹理亜は慶に片思い中。ユウキは樹理亜に片思い中。
2015年12月26日(土)夜のお話です。
【浩介視点】
山崎と一緒に店を出て、慶との待ち合わせの駅に向かった。山崎にはすぐに戸田先生の元に行ってもらい、おれは改札前で慶を待つ。一緒に住むようになってからは、外で待ち合わせる、という機会が減ったので、新鮮でいい。
「…………あ」
遠くからでも分かる、慶のオーラ。周りの人が時々振り返るから、それで余計に分かるのかもしれない。
「浩介!」
おれの姿を見つけた慶がニコニコで手を上げ、人の波と共に改札を抜けて、こちらに向かって歩いてきてくれる。
「慶………」
ああ………抱きしめたい。
どうしてこの人はいつまでたってもこんなに可愛いんだろう。どうしてこんなに真っ直ぐおれを見てくれるんだろう。
「慶っ」
我慢できなくて、近づいてきたその腕を掴み、引き寄せると、
「あほかっ往来で何してんだよっ」
「痛っ」
速攻で蹴られた………
人前ではつれないところも、いつまでたっても変わりません……
***
「慶先生ー、今日、浩介先生、他の男とイチャイチャしてたよー」
「ユウキ君っ」
店に入るなり、ユウキにとんでもないことをいわれて焦ってしまう。
でも、慶はあっさりと、
「あー、聞いてる。ありゃ高校の同級生だ」
「えーでもさー」
慶にあっさりあしらわれたのが気に入らないらしく、ユウキは不満げだ。
「すんごい仲良さそうだったよ?」
「そりゃ付き合い長いからな」
「ふーん……」
いつものカウンター席に座ったところで、ユウキが温かいおしぼりを渡してくれながら言う。
「慶先生さあ、そんな余裕かましてるとそのうち痛い目あうよ?」
「痛い目?」
きょとん、と二人で見返すと、ユウキは口を尖らせたまま、
「浮気、とか」
「浮気ー?」
ぷっと吹き出してしまう。
「ないない。あるわけない」
「そう言ってる人があやしいんだよー?」
ユウキの口は尖ったままだ。
「慶先生、ホント知らないからねー?」
「何が」
慶も苦笑したまま、ユウキを見返した、が、
「こういう人が、朝起きたら突然いなくなってたりするんだよ?」
「……っ」
ピキッと固まってしまった。
まずい。それはNGワードだ……
でも、ユウキは気が付くことなく、メニューの表を差し出してから行ってしまった。こんな爆弾落としておいて……
「……慶?」
慶はまだ固まっている。これはこのことについて何かツッコむべきなのか、それともスルーするべきなのか……
慶は今だに、今から10年以上前、おれが突然、慶を置いて日本を離れたことを根に持っている。いや、根に持っている、という言い方はおかしいか……。
その時のことを思いだすと、ストーンと穴の中に落ちていくような感覚に陥る、と前に言っていたことがある。もしかして今も、穴の中に落ちてしまっているんだろうか……
「慶?」
「………浩介」
「!」
カウンターの上に置いていた左手をギュウッと握られた。慶は下を向いたまま、ポツンと言った。
「お前……いなくなる?」
「…………」
握られた手を両手で包み込み、慶の顔をのぞきこむ。
「いなくならないよ?」
「………」
「ずっとずっと一緒にいるよ?」
「………」
目をつむってしまった慶の目尻に唇を落とす。頬にも落とす。
「ずっと、一緒にいようね」
「…………ん」
かわいいかわいい慶……
「ずっと一緒に」は慶がよく言ってくれる言葉だ。慶は、「好き」とかそういう直接的な愛の言葉はめったに言ってくれないけど、「ずっと一緒に」とか「ずっとそばに」とかは、呪文のように言ってくれる。
たぶん、慶自身が強く強く願ってくれている言葉……いとおしくてたまらない……
コクッと小さくうなずいた慶の額に額を合わせ、そして………と思ったところで、
「あー!ラブラブーいいなー!」
「…………あ」
甲高い声に我に返った。目黒樹理亜が、パタパタと両手を振っている。
「いーなーいーなーいーなー」
「………………」
その後ろでニターッとしているユウキ。
彼は樹理亜に片想いしている。わざとけしかけるようなことを言って、おれ達をイチャイチャさせ、それを樹理亜に見せたかったらしい……。
「あたしもラブラブしたーい!」
「だから樹理、ボクと……」
「ユウキはお友達だからダメだってー」
前からよく見かける光景だけれども、前よりも少し、樹理亜の拒否感が薄くなってきた気が…………
「……浩介。何飲む?」
「あ、うん」
わざとメニュー表を、慶の手に重ねて持つ。重なった手から温かい気持ちが伝わってくる。
「一緒のがいいな」
「ん」
うなずいた慶の目尻に再び唇を落とす。
ずっとずっと、一緒がいい。
--------------
お読みくださりありがとうございました!
2015年12月のお話なので、まだ慶があまり「好き」って言ってくれてない……。
以上を持ちまして、再録終了となります。
次回、サイト開設11周年ということで、8月10日21時35分に、単なる日常短編を1つ更新して、1ヶ月お休みさせていただきます。
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2016年7月26日投稿「たずさえて11」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます
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訳あって、高校の同級生・山崎と一緒に樹理亜とユウキのつとめるバーを訪れた浩介。
その後、山崎は戸田先生の元へ。そして浩介は慶と駅で待ち合わせ^^
浩介と慶は高校時代からの恋人同士。
樹理亜は慶に片思い中。ユウキは樹理亜に片思い中。
2015年12月26日(土)夜のお話です。
【浩介視点】
山崎と一緒に店を出て、慶との待ち合わせの駅に向かった。山崎にはすぐに戸田先生の元に行ってもらい、おれは改札前で慶を待つ。一緒に住むようになってからは、外で待ち合わせる、という機会が減ったので、新鮮でいい。
「…………あ」
遠くからでも分かる、慶のオーラ。周りの人が時々振り返るから、それで余計に分かるのかもしれない。
「浩介!」
おれの姿を見つけた慶がニコニコで手を上げ、人の波と共に改札を抜けて、こちらに向かって歩いてきてくれる。
「慶………」
ああ………抱きしめたい。
どうしてこの人はいつまでたってもこんなに可愛いんだろう。どうしてこんなに真っ直ぐおれを見てくれるんだろう。
「慶っ」
我慢できなくて、近づいてきたその腕を掴み、引き寄せると、
「あほかっ往来で何してんだよっ」
「痛っ」
速攻で蹴られた………
人前ではつれないところも、いつまでたっても変わりません……
***
「慶先生ー、今日、浩介先生、他の男とイチャイチャしてたよー」
「ユウキ君っ」
店に入るなり、ユウキにとんでもないことをいわれて焦ってしまう。
でも、慶はあっさりと、
「あー、聞いてる。ありゃ高校の同級生だ」
「えーでもさー」
慶にあっさりあしらわれたのが気に入らないらしく、ユウキは不満げだ。
「すんごい仲良さそうだったよ?」
「そりゃ付き合い長いからな」
「ふーん……」
いつものカウンター席に座ったところで、ユウキが温かいおしぼりを渡してくれながら言う。
「慶先生さあ、そんな余裕かましてるとそのうち痛い目あうよ?」
「痛い目?」
きょとん、と二人で見返すと、ユウキは口を尖らせたまま、
「浮気、とか」
「浮気ー?」
ぷっと吹き出してしまう。
「ないない。あるわけない」
「そう言ってる人があやしいんだよー?」
ユウキの口は尖ったままだ。
「慶先生、ホント知らないからねー?」
「何が」
慶も苦笑したまま、ユウキを見返した、が、
「こういう人が、朝起きたら突然いなくなってたりするんだよ?」
「……っ」
ピキッと固まってしまった。
まずい。それはNGワードだ……
でも、ユウキは気が付くことなく、メニューの表を差し出してから行ってしまった。こんな爆弾落としておいて……
「……慶?」
慶はまだ固まっている。これはこのことについて何かツッコむべきなのか、それともスルーするべきなのか……
慶は今だに、今から10年以上前、おれが突然、慶を置いて日本を離れたことを根に持っている。いや、根に持っている、という言い方はおかしいか……。
その時のことを思いだすと、ストーンと穴の中に落ちていくような感覚に陥る、と前に言っていたことがある。もしかして今も、穴の中に落ちてしまっているんだろうか……
「慶?」
「………浩介」
「!」
カウンターの上に置いていた左手をギュウッと握られた。慶は下を向いたまま、ポツンと言った。
「お前……いなくなる?」
「…………」
握られた手を両手で包み込み、慶の顔をのぞきこむ。
「いなくならないよ?」
「………」
「ずっとずっと一緒にいるよ?」
「………」
目をつむってしまった慶の目尻に唇を落とす。頬にも落とす。
「ずっと、一緒にいようね」
「…………ん」
かわいいかわいい慶……
「ずっと一緒に」は慶がよく言ってくれる言葉だ。慶は、「好き」とかそういう直接的な愛の言葉はめったに言ってくれないけど、「ずっと一緒に」とか「ずっとそばに」とかは、呪文のように言ってくれる。
たぶん、慶自身が強く強く願ってくれている言葉……いとおしくてたまらない……
コクッと小さくうなずいた慶の額に額を合わせ、そして………と思ったところで、
「あー!ラブラブーいいなー!」
「…………あ」
甲高い声に我に返った。目黒樹理亜が、パタパタと両手を振っている。
「いーなーいーなーいーなー」
「………………」
その後ろでニターッとしているユウキ。
彼は樹理亜に片想いしている。わざとけしかけるようなことを言って、おれ達をイチャイチャさせ、それを樹理亜に見せたかったらしい……。
「あたしもラブラブしたーい!」
「だから樹理、ボクと……」
「ユウキはお友達だからダメだってー」
前からよく見かける光景だけれども、前よりも少し、樹理亜の拒否感が薄くなってきた気が…………
「……浩介。何飲む?」
「あ、うん」
わざとメニュー表を、慶の手に重ねて持つ。重なった手から温かい気持ちが伝わってくる。
「一緒のがいいな」
「ん」
うなずいた慶の目尻に再び唇を落とす。
ずっとずっと、一緒がいい。
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お読みくださりありがとうございました!
2015年12月のお話なので、まだ慶があまり「好き」って言ってくれてない……。
以上を持ちまして、再録終了となります。
次回、サイト開設11周年ということで、8月10日21時35分に、単なる日常短編を1つ更新して、1ヶ月お休みさせていただきます。
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