すみません。再録です。
2017年5月2日投稿「現実的な話をします15」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます
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☆高校の同級生・溝部の実家で行われたすき焼きパーティーの帰り道のお話。
【慶視点】
溝部の実家でのすき焼きパーティーの後、少し酔っぱらった状態で電車に乗り……途中から運よく座れたのは良かったけれど、そのせいで二人でうたた寝してしまって。気が付いたときには、乗換の駅を通り過ぎていたので、結局、そのまま乗り続け、その先のいつもとは違う駅で降りることにした。その駅からも徒歩20分強で帰れるはずなのだ。
「あんまり来たことない町って、ちょっと緊張するね……」
「だな。遠回りかもしれないけど環七まで出るか?」
「ううん。探検探検。住宅街抜けてこ?」
しばらく歩いて住宅街に入ったところで、すっと自然な感じに手を取られた。そのまま手を繋いで歩く。日曜日の夜10時半。住宅街の人通りはたいして多くない。
(まあ、いっか……)
そう思えるのは、まだ酔いがさめていないせいと、高校生に戻ったかのようにみんなでバカ騒ぎしていたテンションが体の中で持続しているせいかもしれない。
「色々なおうちがあるねえ……」
「わ、ここ金持ちっぽい。おーBMー」
なんだか本当に高校生に戻ったみたいだ。こんな風にたわいもない話をしながら歩く夜道……あの頃、こんな日がずっと続けばいいと思ってた。今、おれは、その永遠の中にいる……。
「あ! 慶! 公園公園! ちょっと寄りたい!」
「え?」
突然、浩介が走りだした。わりと遊具のたくさんある大きめの公園だ。
なんなんだ、と思いながらついていくと、浩介はさっそくブランコに座って、ニコニコとこちらを見返してきた。
何なんだ?
「何やって……」
言いかけたところ……
「渋谷も乗るー?」
「!」
その言葉にドキッと心臓が跳ね上がった。し、渋谷って……っ
「………なんだそりゃ」
「渋谷?」
うわ、やめろ。感覚が片思い時代に引き戻される。なんだこれ。いや、でも、好きだと自覚した頃からは「慶」って呼ばれてた……けど、その前は「渋谷」って呼ばれてたわけで……
「しーぶや?」
「……………」
「し……、んにゃっ」
ふざけている鼻をむにゅっと掴んでやると、浩介はふがふが言いながらおれの手を掴んできた。
「やめてー」
「お前がふざけたこと言うからだ。なんの冗談だ」
「えー、ちょっと懐かしくていいかなあーって思ってー。まだ渋谷って呼んでた頃にブランコで遊んだの覚えてない?」
「…………」
そんなことあったっけ……。あいかわらず恐ろしい記憶力だな浩介……。
「どうせ覚えてないんでしょ? 渋谷」
「…………」
渋谷と呼ばれていたころは、まだただの友達で。でもずっとずっと一緒にいたくて。
「浩介……」
「ん」
そっと口づける……。その願い、おれは叶えてやったぞ?
「思い出した?」
「思い出した」
今度は額に口づける。
「おれがどれだけお前のこと好きだったか、思い出した」
「慶……」
「それで」
嬉しそうに微笑んで、こちらに手を伸ばしてきた浩介に、わざと冷たーく言ってやる。
「お前がおれのこと友達としか思ってなくて、美幸さんに片思いして、その相談をおれにしてきて、それで散々苦しんだことも思い出した」
「わわわわわっ」
浩介がアワアワと立ち上がり、おれの頬を両手でぐりぐりと包み込んだ。
「それは忘れてー忘れてー」
「忘れらんねーなー」
「もー慶、しつこいよー」
「悪かったなっ」
むーっと鼻に皺を寄せてやる。
「それだけお前のことが好きってことだよっ」
「……………」
浩介は一瞬詰まり……
「それ言われたら、忘れてって言えない……」
コンッとオデコをくっつけてきた。
「おー忘れねえぞ。お前も覚えとけよ。もし、またあんなことがあったら……」
「あるわけないでしょ」
「………。まあそうだな」
くすりと笑って、また手を繋ぐ。
「帰ろ?」
「おお」
ぎゅっと繋ぐ。離れないように。
「慶、大好き」
頭のてっぺんにキスされる。それも高校の頃と変わらない。
でもあの頃と違うのは、一緒の家に帰れること。共に夜を過ごして、共に朝を迎えられること。
浩介と共に生きている。ずっと願っていた未来がここにある。
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お読みくださりありがとうございました!
浩介の「渋谷」呼び。懐かしい^^
ずっと願っていた未来を生きている二人です。
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2017年5月2日投稿「現実的な話をします15」の「おまけ」のみ。
「おまけ」の話、探すのが面倒なので短編として抜き出してます
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☆高校の同級生・溝部の実家で行われたすき焼きパーティーの帰り道のお話。
【慶視点】
溝部の実家でのすき焼きパーティーの後、少し酔っぱらった状態で電車に乗り……途中から運よく座れたのは良かったけれど、そのせいで二人でうたた寝してしまって。気が付いたときには、乗換の駅を通り過ぎていたので、結局、そのまま乗り続け、その先のいつもとは違う駅で降りることにした。その駅からも徒歩20分強で帰れるはずなのだ。
「あんまり来たことない町って、ちょっと緊張するね……」
「だな。遠回りかもしれないけど環七まで出るか?」
「ううん。探検探検。住宅街抜けてこ?」
しばらく歩いて住宅街に入ったところで、すっと自然な感じに手を取られた。そのまま手を繋いで歩く。日曜日の夜10時半。住宅街の人通りはたいして多くない。
(まあ、いっか……)
そう思えるのは、まだ酔いがさめていないせいと、高校生に戻ったかのようにみんなでバカ騒ぎしていたテンションが体の中で持続しているせいかもしれない。
「色々なおうちがあるねえ……」
「わ、ここ金持ちっぽい。おーBMー」
なんだか本当に高校生に戻ったみたいだ。こんな風にたわいもない話をしながら歩く夜道……あの頃、こんな日がずっと続けばいいと思ってた。今、おれは、その永遠の中にいる……。
「あ! 慶! 公園公園! ちょっと寄りたい!」
「え?」
突然、浩介が走りだした。わりと遊具のたくさんある大きめの公園だ。
なんなんだ、と思いながらついていくと、浩介はさっそくブランコに座って、ニコニコとこちらを見返してきた。
何なんだ?
「何やって……」
言いかけたところ……
「渋谷も乗るー?」
「!」
その言葉にドキッと心臓が跳ね上がった。し、渋谷って……っ
「………なんだそりゃ」
「渋谷?」
うわ、やめろ。感覚が片思い時代に引き戻される。なんだこれ。いや、でも、好きだと自覚した頃からは「慶」って呼ばれてた……けど、その前は「渋谷」って呼ばれてたわけで……
「しーぶや?」
「……………」
「し……、んにゃっ」
ふざけている鼻をむにゅっと掴んでやると、浩介はふがふが言いながらおれの手を掴んできた。
「やめてー」
「お前がふざけたこと言うからだ。なんの冗談だ」
「えー、ちょっと懐かしくていいかなあーって思ってー。まだ渋谷って呼んでた頃にブランコで遊んだの覚えてない?」
「…………」
そんなことあったっけ……。あいかわらず恐ろしい記憶力だな浩介……。
「どうせ覚えてないんでしょ? 渋谷」
「…………」
渋谷と呼ばれていたころは、まだただの友達で。でもずっとずっと一緒にいたくて。
「浩介……」
「ん」
そっと口づける……。その願い、おれは叶えてやったぞ?
「思い出した?」
「思い出した」
今度は額に口づける。
「おれがどれだけお前のこと好きだったか、思い出した」
「慶……」
「それで」
嬉しそうに微笑んで、こちらに手を伸ばしてきた浩介に、わざと冷たーく言ってやる。
「お前がおれのこと友達としか思ってなくて、美幸さんに片思いして、その相談をおれにしてきて、それで散々苦しんだことも思い出した」
「わわわわわっ」
浩介がアワアワと立ち上がり、おれの頬を両手でぐりぐりと包み込んだ。
「それは忘れてー忘れてー」
「忘れらんねーなー」
「もー慶、しつこいよー」
「悪かったなっ」
むーっと鼻に皺を寄せてやる。
「それだけお前のことが好きってことだよっ」
「……………」
浩介は一瞬詰まり……
「それ言われたら、忘れてって言えない……」
コンッとオデコをくっつけてきた。
「おー忘れねえぞ。お前も覚えとけよ。もし、またあんなことがあったら……」
「あるわけないでしょ」
「………。まあそうだな」
くすりと笑って、また手を繋ぐ。
「帰ろ?」
「おお」
ぎゅっと繋ぐ。離れないように。
「慶、大好き」
頭のてっぺんにキスされる。それも高校の頃と変わらない。
でもあの頃と違うのは、一緒の家に帰れること。共に夜を過ごして、共に朝を迎えられること。
浩介と共に生きている。ずっと願っていた未来がここにある。
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